■Ophiocordyceps osuzumontana (ヒメハリタケ)

■ 2019年07月07日 撮影

冬虫夏草の中でもトップレベルの小ささを誇る冬虫夏草ではないでしょうか? 小型のハチ(?)の幼虫を宿主とする極小の冬虫夏草「姫針茸」です。 非常に足が早い冬虫夏草であり、気候によっては1週間で消失してしまうほど短命です。 ちなみに赤い半透明のものは萎れた変形菌の子実体の柄です。

実は「ヒメハリタケ」と言う和名を持つキノコが別に存在します。 傘と針状の子実層面を持つカノシタ属菌ですが、和名に命名規則がないため何とも言えない状態です。


■ 2019年06月21日 撮影

ちなみに2週間前から定点観察していました。この年は当たり年でしたね。 右下のほうに見えるのがTOP写真になっている子実体です。


■ 2019年06月21日 撮影

記載によると本種の宿主は小型のハチの幼虫だと言われています。 ただ自分はどうもこれがハエ目の幼虫に見えて仕方がないのです。 ハエに詳しい方にも見て頂いたのですが、その方もハエ目ではないかとのこと。 本種はその形状的にサビイロクビオレタケやホソエノアカクビオレタケに近縁と思われます。 この2種もハエ目に感染する冬虫夏草なので、その仮説からは外れない気がします。


■ 2019年07月07日 撮影

日付が戻って詳細です。子実体は首折れ型で全体的に。 幼菌時は先端部白色で、結実部より先は毛羽立ったような質感になります。 子嚢殻は赤橙色で裸生、基部はオレンジ色の菌糸で覆われます。


■ 2019年07月07日 撮影

帰宅後に黒バック撮影してみました。 右の2つはどろんこ氏へ提供、左の1株のみクリーニングして保存しました。 子嚢殻の数は多くても5個、普通は1〜3個と最低限の構造しか持っていません。 やはり宿主がハエ目に見えるんですよね。この体節と言いツヤと言い。


■ 2019年07月31日 撮影

ちなみに標本は凍結乾燥して保存することにしました。 これアクリル円柱の直径が1cmなのでご参考までに。 白い○の中のアクリル円柱の直径が1cmくらいならちょうど原寸大です。 本種が如何に小さい冬虫夏草かお分かり頂けるかと思います。

極めて小型の冬虫夏草であり、食毒不明以前に食用価値無しです。

■ 2018年08月11日 撮影

初発見はひょんなことから。 地元の冬虫夏草の坪が水害によって大打撃を受け、傷心で挑んだ悪あがき探索。 普段行かない沢に降りて行った時に倒木に不自然なものを発見。 非常に小型でしたが、その質感ですぐに冬虫夏草だと気付きました。


■ 2018年08月11日 撮影

発生状況はこんな感じ。中々の密度ですね。


■ 2018年08月11日 撮影

この日はルーペが破損してしまい注文している最中だったため拡大する術がありませんでした。 そのため適当に掘るしか無かったためこれで勘弁。 材の中に透けて見える赤いものが宿主です。現場ではこれが限界でした。

■ 2018年08月11日 撮影

コチラは別個体。オレンジ色のストローマが伸び、その途中に少数の子嚢殻を形成します。 子嚢殻は赤褐色でストローマの基部にプチッと付いています。 ただ子嚢殻の付く位置や数にはかなり個体差があるようです。

■ 2018年08月11日 撮影

この日一番立派だった子実体。それでも子嚢殻は5つしかないと言う小ささです。 しかも図鑑の先入観があったのですが、これ子嚢殻はストローマの基部じゃなくて先端にできています。 これはどうも図鑑の記述と一致していませんので、かなり子実体の形状に差がある種なのかも知れません。


■ 2018年08月11日 撮影

一つ前の別子実体と一緒に採取したものをクリーニングして黒バック撮影してみました。 左のものは材中を菌糸が進んでおり、発生状態を維持するために材ごと残すことしました。 右はギロチンしているように見えますが、宿主の一部までは掘れています。 宿主があまりにも細いので途中でちぎれてしまいました。


■ 2018年08月11日 撮影

拡大してみました。左奥にぼやけて写っているのが宿主です。 これは一応タンポ型なのかな?ンなワケないか。 基部にしか子嚢殻ができないってワケではないんですね。 子嚢殻の赤褐色さが意外と強烈で驚きました。


■ 2018年08月11日 撮影

図鑑の記載によると宿主は「小型のハチの幼虫」なんだそうが、ちょっと違和感が。 この質感はどう見てもハエ目の幼虫にしか見えません。


■ 2018年08月11日 撮影

メルツァー試薬で染めた子嚢です。子嚢胞子がみっちり詰まっているのが分かります。 途中でねじれてしまっていて分かりませんが、見える範囲で数えてみると、16個でちょうど子嚢の中程になります。 となると二次胞子の数は32個かな?


■ 2018年08月11日 撮影

すでに黒バック撮影の段階で子嚢殻先端から子嚢胞子が飛び出しているのが見えていたのでコレは見える確信が有りました。 スライドグラスに押し付けると無数の子嚢胞子と二次胞子が確認できました。


■ 2018年08月11日 撮影

とここで困ったことが。どうも本種は非常に二次胞子に分裂しやすいようで、自然噴出をさせても子嚢胞子が原型を維持してくれません。 何度か挑戦しましたが簡単な刺激で二次胞子に分裂してしまうようです。これでは長さが分かりませんね。 生体図鑑にも二次胞子のサイズしか載っていないのはそのためか?


■ 2018年08月11日 撮影

二次胞子は円筒形で長さ約5μm。両端に油球状内包物を有します。 外見がホソエノアカクビオレタケに似ているのでもしかしたらと思いましたが、それだと8.5μm以上有るハズなので却下です。


■ 2018年08月11日 撮影

どうしても子嚢胞子のサイズが知りたくて子嚢1つを抽出し、自然乾燥によって押しつぶしました。 完全に数えきることはできませんでしたが、二次胞子への分裂は16よりも大きく64よりも小さいため32個と推測できました。 また4つ連なった未分裂の胞子の長さが平均して20μmなので×8で160。5μmを32倍しても160なので、子嚢胞子の長さは160μm前後の可能性が高いようです。

■ 2018年08月11日 撮影

材が崩れて宿主が露出している部分がありました。 しかしそれよりも凄いのが左下の幼菌です。すでに基部に子嚢殻らしきものが形成され始めています。 小型の冬虫夏草は確かにありますが、明確なストローマを形成するものの中では間違いなく最小クラスではないでしょうか。 余計なものは必要ないと言う気概を感じます。

■ 2018年08月11日 撮影

古いストローマの隣に新しいストローマが出てきていました。 本種は表面に短毛を密生させることが有るらしく、言われてみれば確かに毛羽立ったような表面です。 アナモルフかな?とも思ったんですが、別にそんなこともないみたいですね。

■ 2023年09月16日 撮影

実は以前見ていたフィールドが材の流失により消滅してしまいました。 肩を落としていたのですが、2023年になってなんと地元で発見! 残念ながらアナモルフのみでしたが、発生が確認できただけでも御の字。


■ 2023年09月16日 撮影

発生状況はこんな感じで数も十分ですね。 ただやや乾燥気味の場所なので、テレオモルフが見られるかは若干怪しいです。 周囲にはキマワリアラゲツトノミタケやツクツクボウシタケが多数見られるので、 オマケで確認にも来やすいです。定点観察必須ですね。