■Ophiocordyceps sobolifera (セミタケ)

■ 2016年07月09日 撮影

実はキノコ趣味を開始して最初に発見した冬虫夏草でした。 和名は「蝉茸」。セミ生冬虫夏草の代表格のような名前ですが、オオセミタケと比べると圧倒的レアです。 しかし当時は良く分からずその後何度も出会っていましたが掘らず仕舞い。 冬虫夏草に興味を持つ頃には見付からなくなり、念願の更新となりました。 ニイニイゼミを主な宿主とし、公園や神社の境内などに発生します。

白色変異のシロセミタケや、子実体の形状が異るアシブトセミタケやトサノセミタケが存在します。 ただこれは単なる個体差の可能性もあり、現状は同一視するしかなさそうに感じます。 ちなみにキアシオオセミタケは明確に別種のようですね。


■ 2016年07月09日 撮影

子実体は太めの棍棒形で淡褐色。結実部は柄の情報に形成されます。 あまり綺麗な円筒にはならず、縦方向の不規則な凹みが良く出来ます。 また柄にはだんだら模様が現れ、これが本種の特徴の一つでもあります。


■ 2016年07月09日 撮影

本種最大の特徴は何と言ってもコレ。基部に変なこぶが無数に見られます。 このソボールと言うこぶ状の突起は本種特有なので有用な判断材料。 学名にもちゃんとこの名前が入っているので、学名も覚えやすいですね。 ちなみにこれ無意味ではなく、ちゃんと内部には厚膜胞子が入ってます。

良く似たキアシオオセミタケにはソボールが無いので、覚えておくと吉?


■ 2016年07月09日 撮影

掘ってみると地面の下にはお亡くなりになったニイニイゼミの幼虫が。 菌糸はほとんど宿主を覆っていないので幼虫がハッキリ見えてカッコイイ!


■ 2016年07月09日 撮影

クリーニング後に白バックで撮影。これだと形状が分かりやすいですね。 子実体は幼虫頭部から発生、地面付近で一旦ソボールを形成します。 その後子実体を伸ばし結実部を形成と言う感じ。刀みたいな雰囲気です。


■ 2016年07月09日 撮影

オマケで地上部黒バック撮影。・・・あまり子嚢殻が目立たないですね。


■ 2016年07月09日 撮影

それもそのハズ、本種の子嚢殻は見事な埋生型!全然目立ちません。 老熟すると多少突出して見えるのですが、新鮮な状態ではこんな感じ。 やや赤みがかって見える細かな点が埋生した子嚢殻の先端部分です。


■ 2016年07月09日 撮影

黒バック撮影中に子嚢胞子が噴出し始めたため慌てて顕微鏡観察しました。 子嚢胞子は長い糸状で32個の二次胞子に分裂するため隔壁が存在します。 両端に近いほど長く、中心部ほど短くなるのはセミ生では顕著ですね。

実は本種はシネンシストウチュウカソウと同じく薬用とされています。 栽培も可能ですが、ガ生虫草と比べると難しく実用化はされていません。 また地域によっては絶滅危惧種に指定されてしまっており、要注意です。 宿主のニイニイゼミの減少に伴って本種も発生が危ぶまれている模様。

■ 2006年07月19日 撮影

実はキノコ撮影を初めて三日目に見付けていました。まさかのまさかですわ。 ビギナーズラックと言うか、冬虫夏草は先入観が無い頃が見付けやすいです。 この下にニイニイゼミの幼虫が居たのですが・・・この時は知る由も無し。

■ 2011年07月21日 撮影

以前見付けていた理想的な子実体。なぜ俺は掘らなかったんだと小一時間。 ソボールも見えている理想的な子実体だったのに・・・無知とは恐ろしい。 この時は冬虫夏草だと認識していたのに写真で満足してしまった俺のバカ!

■ 2016年07月09日 撮影

実は2015年にも見付けていますが、その時はもう老菌になってたんですよね。 色合いが違いすぎて最初はキアシオオセミタケだと思ってしまった子実体。 でも良く見ると根本にちゃんとソボールが確認できたので本種で良い模様。 上半分が赤いと言うか結実部が形成されてないみたいです。何でだろう?

■ 2016年07月09日 撮影

セミタケは本来宿主頭部からズドンと一本子実体が出るのが典型例です。 ですがまれに2〜5本に途中で分岐する子実体が出る事が有ります。 ただ分岐すると栄養が分散するのか結実部がやや小さい印象を受けます。

■ 2017年07月29日 撮影

どろんこ氏とgajin氏をお招きしての地元セミタケオフ!無事大成功でした。 珍しくほぼ垂直の斜面から顔を出していました。こんな場所にも生えるんですね。

■ 2017年07月29日 撮影

違う方の目で探した成果として、かなり発生範囲が広いことも判明しました。 自分が把握していたよりもずっと広かったようで、少し安心しましたね。 写真はどろんこさん発見の二又のモノ。向きを予測し断面作成していました。


■ 2017年07月29日 撮影

完成した断面を撮影させて頂きました。流石の熟練掘り師、美しい断面です。 本人も仰ってましたがソボールが有ればパーフェクトだったんですけどね。 このように多数分岐する子実体だとソボッってないことが多い気がします。

■ 2017年07月29日 撮影

残念がっているとすぐ近くにソボールが見えている子実体発見。掘ってみると・・・。


■ 2017年07月29日 撮影

なんと今まで見たことの無いソボールの量!こんなに形成されるんだ! 上から見るとまるで花のように放射状に広がっていて美しかったです。 あとこうして見るとソボールが赤みを帯びているのも良く分かりますね。

■ 2017年08月11日 撮影

大成功の地元オフから2週間後。再び同じ場所を訪れたら凄いモノを発見! 図鑑でしか見たことが無かった珍しい三つ首セミタケ!凄い迫力です。 残念ながらその内の1本は成長不良なのかひん曲がってしまっていました。 正直TOPに持って行きたかった1枚でしたが、典型的ではありませんからね。


■ 2017年08月11日 撮影

真っすぐ立っている子実体2つを拡大。栄養が分散しているのか少し小振り?


■ 2017年08月11日 撮影

結実部を拡大。落枝に当たったのか所々傷付いて表皮が禿げています。 子実体一つ一つが小さ目なせいで相対的に子嚢殻がハッキリ見えています。 今回は先端が突出していますが、本来はかなりの埋生で目立ちません。


■ 2017年08月11日 撮影

掘ってみると予想通り幼虫1匹から3本出ていました。ソボールもバッチリ。 理想的な標本となりそうですが、勿体無くて放置して来てしまいました。 何かもう神々しくて、子孫を残すことに専念して欲しくなっちゃいまして。

■ 2017年08月11日 撮影

面白かったのがほぼソボールのみの子実体。右端が少し成長してるかな? 何かヤクシマセミタケのアナモルフみたいな感じですね。性質は違いますが。

■ 2017年08月11日 撮影

地味ですが本来のセミタケの姿はコレ。柄のだんだら模様もッぽいですね。

■ 2019年07月07日 撮影

昨年は発見に至らなかったセミタケ。今年は無事成熟個体を発見することができました。 今年意地でも見付けたかった理由は顕微鏡観察がしたかったからです。 人生で初めて発見した冬虫夏草なのに諸事情でまだ胞子観察できてないんですよ! gajin氏に譲って頂いた顕微鏡の出番です!


■ 2019年07月07日 撮影

最初から子実体が傷んでいたので綺麗な断面を作る気はありませんでした。 しかし途中で折れると追培養が必要になった際に困るので一応ギロチンは回避です。 宿主の頭部付近、子実体が発生している基部が菌糸でふんわりしています。


■ 2019年07月07日 撮影

クリーニングしたものを黒バック撮影してみました。 ソボールが形成されていないのが少し残念かな? それにしても質量保存の法則無視しすぎだろって毎度思います。


■ 2019年07月07日 撮影

成熟度合いはちょうど良い具合のようですね。子嚢殻は淡橙褐色埋生です。 先端がほんの少し突出しているだけなので、パッと見は細かな点に見えます。 これだけ大きな子実体で子嚢殻が埋生だと、遠目だと表面がのっぺりして見えますね。


■ 2019年07月07日 撮影

子実体の頭部から菌糸が吹き出し、そこから子実体が発生しています。 この部分は軟質でクリーニング中も少しグラグラしていました。 ・・・これアフロヘアーに見えますね。


■ 2019年07月07日 撮影

遂に・・・遂に見えました!これがセミタケの子嚢胞子です! 見れなかった理由は簡単で、採取したのが後にも先にも2016年の1個体だけだったからです。 毎度毎度見付けても勿体無くて取らずにスルーしていました。 また高性能の顕微鏡もこの頃はまだ持っていなかったので残っている写真はヘボヘボ。 でもこれでしっかり観察できるぞ!


■ 2019年07月07日 撮影

子嚢胞子は糸状長さは300μm強が多い印象です。 32個の二次胞子に分裂する性質があり、隔壁を見ながら数えてみたら確かに32個でした。 また二次胞子の形状の特徴として、一方の端の二次胞子が長いと言う性質があります。 写真では左の子嚢胞子が見やすいですね。 上の端の二次胞子は長いですが、下に行くほど二次胞子が短くなっているのが分かります。


■ 2019年07月07日 撮影

油浸対物レンズを用いて分裂後の二次胞子を撮影してみました。 円筒形で長いもので20μm、短いもので10μmと言った感じです。 ようやくしっかりと胞子を観察することができました。

■ 2020年07月12日 撮影

久し振りのガガンボ氏とのオフにて遭遇。実は全然狙っていませんでした。 目的地に行く前に近いからと立ち寄ったいつもの公園でガガさんがサラッと発見。 普段見ない場所なので意外に分布は広いのかも知れません。 その後追培養にも成功した模様。やったぜ!

■ 2020年07月18日 撮影

その翌週、先週探せなかった場所を重点的に探してみると、居るわ居るわ。 状態の良い子実体を短時間で複数発見できました。多分もっと居るでしょうね。


■ 2020年07月18日 撮影

特に大きかったのがこの子実体。子嚢殻の密度を見れば相対的にサイズが分かるかと。 意外と白っぽく見えるので、遠くからでもこれだけ大きければ気付けますね。 ただこの場所、恐ろしく蚊が多いんですよね。ぶっくぶくになりました。

■ 2020年07月18日 撮影

リュックを置いたら真横にあって焦った子実体です。ちょっとひねくれてますね。 1週間前に見た子実体はまだ未熟で子嚢殻が見えていませんでした。 しかしたった1週間でこの状態。結構動き出したら早いんですね。

■ 2020年07月18日 撮影

とても綺麗な2本立ちのセミタケです。ちょっと華奢ですが逆にそれが美しいですね。 少し気になったんですが、今年は不思議とソボール持ちが少ないんですよね。 先週ガガさんが見付けたものもソボッてませんでしたし。 厚膜胞子ってことはアナモルフですし、有性世代の生育条件に適している気候だと要らないとか?

■ 2022年07月17日 撮影

2021年は観察しに行かなかったので2年振りの再会となります。 この日は元々は独りでフィールドへ行く予定でしたが、急遽お声がけしたすず姉氏と予定が合いプチオフに。 少し前に下見に行って全然見付からなかったので心配でしたが、やっぱり時期が早かっただけでしたか。


■ 2022年07月17日 撮影

拡大してみると中に虫が侵入したようで穴が開いてますね。 実はすず姉氏は数日前に地元でセミタケを見ていました。そんな氏が驚いていたのが大きさ。 地元で見たものより大きいとビックリしていました。自分はコレが普通サイズなので意外な発見です。

■ 2022年07月17日 撮影

先に見付けた子実体はひねくれていたので断面作成に向いているセミタケが居ないか探索。 すると斜面の上に良い感じのがいたので撮影開始です。 見ての通り奥は車道で普通に人通りが多い場所です。 近くに湿度を供給できるような水源も無く、冬虫夏草が出る環境とは到底思えませんね。


■ 2022年07月17日 撮影

結実部をマクロ撮影してみました。良い感じに成熟していて子嚢殻がビッシリ! 本種の子嚢殻は形成間隔もサイズもバラバラで、結実部に均一感が無いんですよね。


■ 2022年07月17日 撮影

断面作成はするつもりでしたが、採取する気は無かったのでクリーニングは適当に。 こうして見ると本当に冬虫夏草らしい冬虫夏草だなぁと思います。ソボールも出来ていて理想的! すず姉氏の観察が終わった段階で埋め戻しました。宿主を全滅させない程度に増えておくれ〜。

■ 2022年07月17日 撮影

現地で「勝ち組と負け組」と言っていた光景です。奥に見えるのはニイニイゼミの抜け殻。 これだけの距離で感染と非感染を分けた要因は一体何だったのでしょう? でも羽化して子孫を残してもらわないとセミタケも生き残れないワケで、上手く出来てるんでしょうね。

■ 2022年07月17日 撮影

ちょっとピンクハートなセミタケです。何だかんだでそこそこの個体数が見られました。 まぁハートと言っても下にセミの死骸が埋まってるんですけどね。

■ 2023年07月15日 撮影

晴れ続きでクモタケも見なくなってしまった地元の自然公園。 地面が乾きまくりでちょっと不安でしたが、いつもの場所を探すと居てくれました。 しかし地面がカリカリでも安定して出るのはホント異質。


■ 2023年07月15日 撮影

子実体を拡大してみました。良い感じに成熟して胞子が飛んでいますね。


■ 2023年07月15日 撮影

採取する予定は無かったので、埋戻し前提でギロチンしないように断面作成してみました。 相変わらずの暑さと蚊の猛攻なので集中することができないため、ぶっちゃけ適当にやりました。 理想的な発生状況ですがソボールがありませんでした。あったら部位のみ持ち帰りたかったんですが・・・。

■ 2023年07月15日 撮影

相当乾燥していましたが個体数的には十分みたいです。まだこの場所は安泰かな? 年々減っている気もしますが、セミ生種は周期性があるとも聞きますし、翌年に期待ですね。
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