★Ophiocordyceps sp. (イトヒキミジンアリタケ)

■ 2016年02月21日 撮影

新機材での動画撮影テストでオイラセクチキムシタケを見に行った時の事。 実況撮影中にふと隣の木の幹を見た時、妙な物が目に飛び込んで来ました。 和名「糸引微塵蟻茸」。各種アリを宿主とする気生型の冬虫夏草です。 ずっと出会いたかったので実況を忘れて大絶叫したのは良い思い出ですね。 本種は主に木の幹に付く事で知られますが、葉裏や石にも付くそうです。

酷似した種にタイワンアリタケが有り、実際過去に混同されていました。 ですがタイワンは主に沢筋の葉裏に見られ、宿主もチクシトゲアリが大半。 イトヒキの宿主は多岐に渡り、子実体の形状も微妙に違いが有ります。


■ 2016年02月21日 撮影

宿主はあのヒアリ警察氏からもミカドオオアリとの回答を頂きました。 ここで気になったのは宿主が乾燥でしぼんでいる事。凄い違和感でした。 と言うのもタイワンアリタケは多湿環境を好み宿主も萎まない事のです。 この環境は沢も湿地も無くごく普通の里山。湿度はかなり低いはずです。 この点からタイワンアリタケと比べて本種は乾燥に強いと思われます。

言うまでもなく食不適です。そもそも木に付いてて剥がすのも大変です。

■ 2016年02月21日 撮影

本種は気生型の冬虫夏草の中では時間経過による劣化に強いようですね。 コケが生えたような古い子実体も朽ちずに残っているので驚きました。 その中でも特に新鮮な子実体を発見!結実部に新しさが感じられますね。


■ 2016年02月21日 撮影

結実部を拡大。このように3つも形成される事は本種では稀ですからね? 結実部は黒色で子嚢殻は埋生。子嚢殻の先端は少し突出しています。 一応子実体は首折れ型なのですが、結実部が小さくてそう見えませんね。

■ 2016年02月21日 撮影

発生状況はこんな感じ。1本の幹に複数のアリが貼り付いて死んでいます。 この周囲一帯が発生坪のようで、ざっと見ただけで50株は居ました。

■ 2016年02月21日 撮影

幹の隙間から無数のストローマが伸びていたので指で剥がしてみたらこの通り! 2匹のアリが場所を取り合うかのように並んで事切れていました。壮絶な光景です。 基本幹に貼り付いているので、こう言う状態だと持ち帰りやすくて助かります。


■ 2016年02月21日 撮影

マクロレンズを使って結実部を拡大してみました。ストローマは黒褐色ですね。 結実部は真っ黒でタイワンアリタケと比べると暗色で扁平なのが分かります。 ストローマは長いのに結実部が小さいのでタイワンとはかなり雰囲気が違います。

■ 2016年02月21日 撮影

向かい合うように死んでいる2匹を発見。何を思って最期を迎えたのでしょう。 結実部にツヤが有るのでどうやら未熟で子嚢殻が形成途中みたいですね。 コイツらは持ち帰って追培養すれば胞子の観察ができるかも知れませんね。 にしてもホントに空中湿度が低い場所なのに良く生育できるモノだと関心。

■ 2016年02月27日 撮影

虫草屋お三方をお招きしてのプチ虫草祭り開催!1ヶ所目の目玉となりました。 こうして見ると大半が木の幹のオーバーハングした部分に付いていますね。

■ 2016年02月27日 撮影

やたらアクロバティックな付き方してる宿主を発見。褐色の菌糸が目立ちます。 やはり宿主はミカドオオアリで間違い無さそうですね。大きくてカッコイイ!

■ 2016年02月27日 撮影

驚いたのがこの子実体。なんと頭だけになったアリから発生していました。 樹皮の端にガッチリ噛み付いているため胴体が落ちても頭が残ったようです。 と言うかこれで本種の菌本体は頭側に有るってのが確信できたって感じです。 アゴの周囲に菌糸が集中している事、胴体が萎んでいる事にも合点がいきます。

■ 2016年02月27日 撮影

いんたーさんが調査終了間際に不思議な宿主を発見。皆見慣れない姿です。 幹に付いたかなり古い宿主から何やら白い物体が出ていますね・・・。


■ 2016年02月27日 撮影

カビ・・・ではない・・・?これはもしかしてイトヒキのアナモルフなのでは? 過去に発見されてはいるので可能性アリ。標本用に採取して持ち帰ります。 ただ本種の不完全世代はハナサナギのようにはならないとの説も有ります。

■ 2016年02月27日 撮影

大抵噛み付く場所の有るような幹に付いてますが、タケにも付いてました。 現地では先端部が白くなっているのは別の菌の重複寄生と思ってました。 ただもしかするとコッチがアナモルフかもとの事。果たして真実は?

■ 2016年03月20日 撮影

一ヶ月振りに坪を訪れてみると、以前確認していた範囲より遠くでも多数確認。 もうこの里山一帯が発生範囲と考えて良さそうです。凄い規模ですわコレ。 この範囲でこの密度ならば100単位どろか1000行ってそうな気がします。

■ 2016年07月23日 撮影

朽木生を探して小さな倒木をひっくり返していたら意外なヤツと出会いました。 今まではミカドオオアリばかりでしたが初のムネアカオオアリが宿主です。 やはり大型だからでしょうか?ストローマが複数伸びていてカッコイイです。

■ 2016年08月20日 撮影

・・・と思ったら何とミカドオオアリから7本のストローマが出てるのを発見! あまりにも立派だったので撮影を忘れてルーペでまじまじ見ちゃいました。 クビオレアリタケみたいですが成長点が綺麗な紫色なのでイトヒキです。


■ 2016年12月23日 撮影

同一個体を完熟するであろう冬場までずっと定点観察してみた結果がコチラ。


■ 2016年12月23日 撮影

夏の終わり頃にストローマに紫色の膨らみが生じ、そこが結実部に変化。 鮮やかな紫色だったストローマも見慣れた褐色に変化して重厚感アップ。 そしてやたら立派だった理由も判明。これ実は女王アリだったんですよね。 複数のストローマを出す宿主を観察ててワーカーじゃないと気付きました。 どうもトビムシの住処になっているようで、払っても払ってもわらわらと・・・。


■ 2016年12月23日 撮影

標本用に採取してみました。この後撮影中に落として壊しましたけどね!


■ 2016年12月23日 撮影

結実部を拡大。手前のボケている紫色の塊ができ始めの未熟な結実部です。 本種はやはり近縁なタイワンアリタケと比べて結実部が貧弱な印象ですね。 ストローマの長さだけを見ればイトヒキの方が長い事が多いんですけど。

■ 2017年01月28日 撮影

地元のフィールドが「手入れ」と称して大規模破壊されて愕然としました。 枯れ行くナラ枯れを残して広葉樹の低木が根こそぎ伐採されたのです。 そのため林内湿度が下がり、イトヒキが付ける程良い木も消え去りました。 ショックを受けて遠く離れた以前から訪れていたフィールドへ行きました。 は?普通に居るし!何年も通っていたのに今まで気付かなかったとは! どうやらウチの近所では本種はかなり普通種みたいですね。少し安心です。

■ 2017年10月07日 撮影

あるびのさんをお招きしての地元オフの目標の一つ、無事見付かりました。 かなり環境が破壊されて心配しましたが、何だかんだで元気で安心です。 この木はミカドの墓場となっており、一本の幹に無数の死骸が・・・。


■ 2017年10月07日 撮影

面白かったのはコチラ。ニイニイゼミの抜け殻が覆い被さっています。 恐らく宿主は年を越していると思われるので、セミは後付のようです。


■ 2017年10月07日 撮影

構図に凝って撮影した1枚。良い感じの子実体だったので気合い入れました。 撮影している時は気付きませんでしたが、ストローマにトビムシが居ました。

■ 2018年05月20日 撮影

今まで一度も観察したことが無かった本種の子嚢胞子が観察したくて標本を採取してきました。 まずは結実部を薄くスライスして子嚢殻の断面を観察。 みっちり詰まっていた子嚢と側糸が大量に漏れ出してきました。 埋生なので分かりにくいですがちゃんと子嚢殻なんだなと感じたり。


■ 2018年05月20日 撮影

子嚢殻の内部の子嚢を拡大。子嚢先端の肥厚部がハッキリ見えます。


■ 2018年05月20日 撮影

子嚢と子嚢胞子が同時に見れましたので撮影。 この先端部の厚みは実に冬虫夏草の子嚢だなって感じですね。 タイワンアリタケに比べるとあまり子嚢の先端が尖っていないような。


■ 2018年05月20日 撮影

子嚢胞子は細長い紡錘形で長さはかなり差はあれど100μm以下。 近縁なタイワンアリタケよりも少し短いのかな? この辺は過去の文献とも食い違う部分も有るようで、今度タイワンも観察しようと思います。 本当は隔壁が有るのですが、未熟なことと私自身の観察技術の低さから確認できませんでした。

■ 2018年05月22日 撮影

メルツァー試薬で染めると観察しやすくなると聞き、2日後にゴミ箱を漁って小さな小さな結実部をサルベージ。 染色してから観察すると肥厚部がハッキリ見えて感動しました。 胞子が吹き出すための頂孔も染色によって見えやすくなっています。試薬ってホント大切ですね。


■ 2018年05月22日 撮影

メルツァー試薬で染色した子嚢胞子です。確かにところどころ隔壁が見えています。 過去の文献によるとこの隔壁部から二次胞子に分裂するそうですが、不思議とその後確認されていないみたいです。 確かにこの隔壁の感じは分裂するようなタイプには見えないかも。 この胞子はやや未熟の可能性が高く、次は成熟した胞子で隔壁を数えたいと思います。

■ 2018年07月01日 撮影

実は5月の顕微鏡観察を見たK.Y氏より「子嚢殻の感じからして未熟」とのご指摘を頂きました。 やはり子嚢殻を潰して観察するのは当たり外れが有るようで、胞子の自然噴出を待つのがベストのようです。 まぁ潰したおかげで子嚢なんかも観察できたのでそれはそれでヨシとし、今回はしっかりと胞子を噴いてもらいました。 空気の流れが生じない容器内に逆さ釣りにして落ちるのを待ちました。


■ 2018年07月01日 撮影

前回はメルツァー試薬で見ても隔壁が見えなかったので最初からメルツァってから観察しました。 もうこの段階で明らかに前回とは違う結果が出ているのが分かりますね。


■ 2018年07月01日 撮影

見えました、これぞイトヒキの子嚢胞子!外見的にはタイワンアリタケとほぼ同じです。 長さは110μmくらいのものが多く、自分の目で観察したタイワンアリタケよりも少し長い感じです。 何よりも今回は前回全くと言ってよいほど見れなかった隔壁がハッキリ見えています。


■ 2018年07月01日 撮影

絞りと光源を調節したらもっと見やすくなりました。 隔壁の数にはバラつきが有りますが、数えてみると5個であることが圧倒的に多いようです。 となると6つの細胞から成るワケですが、順当に分裂すれば8個になるので少し足りない感じです。


■ 2018年07月01日 撮影

撮影に時間かけすぎて発芽しちゃいました。胞子も痩せてます。


■ 2018年07月01日 撮影

文献で気になっていたタイワンアリタケとの相違点「本種は二次胞子に分裂する」ですが、確かにそれっぽいのは見れました。 しかし子嚢胞子観察段階ではあの隔壁が分裂するものには見えませんでした。 実際に分裂したと思しきものを観察しても、分裂した部分がどうも切れただけにも見えます。 もしかすると外的要因で切れやすいだけで自然には分裂しないのではないか?と思われました。
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