■Ophiocordyceps sp. (クチキカノツノタケ)

■ 2020年09月20日 撮影

どろんこ氏とのキノコ狩りオフにてまさかの遭遇! この日は別に冬虫夏草がメインではなかったんですが、意外と収穫が少なくてBプランに移行。 その結果立ち寄ったブナ林帯にて広葉樹の朽木内の甲虫の幼虫から発生していました。 冬虫夏草のスペシャリストである氏ですら初見で2人して大興奮だった、和名「朽木鹿角茸」です。 和名はその名の通り、子実体がシカの角状であることに由来します。

故清水大典氏のカラー絵に登場するくらいには以前から普通に見付かっている種ですが、いまだに種小名がありません。 朽木内の甲虫から発生する種は多いですが、本種は子実体先端と子嚢殻の形態が特徴的で同定は比較的容易です。 どちらかと言うと「クチキ○○タケ」と言う和名が多いので、たまに混乱するのが困りもの。


■ 2020年09月20日 撮影

子実体は太針型で全体的に淡褐色。 中程に子嚢殻を形成しますが、本来は埋生型ながら密度が低いと裸生型っぽくなります。 注目すべきは先端が黒くなると言う他種には見られない特異的な配色です。 幼菌時は分かりづらいですが、成菌であればコレを見るだけでほぼほぼ勝ちです。


■ 2020年09月20日 撮影

どろんこ氏は初見だったのもあって超興奮! 断面作成はお任せし、見事な断面が出来上がりました。 そこで意外な事実が判明!


■ 2020年09月20日 撮影

てっきり同一宿主から出ていると思われていた子実体、何と別宿主からそれぞれ出ていました。 左は子実体は成熟しているものの、宿主は朽ち果てて頭部だけが残っています。 逆に右は子実体は未熟かつやや生育不良ですが、宿主もしっかりと残っています。 本種は宿主表面を菌糸が覆うのが分かります。


■ 2020年09月21日 撮影

2人で別々に持ち帰ることにしましたが、追培養が得意などろ氏が宿主付きの子実体を、 確実に胞子が見たい私は宿主はボロボロですが子実体が成熟したものを選びました。 帰宅後翌日に黒バック撮影。いつかは完品に出会いたいものですね。


■ 2020年09月21日 撮影

子実体はかなりしっかりした太針型。肉質も強靭です。 本種の最大の特徴とも言える先端の黒さも良く分かる子実体ですね。 撮影中に胞子が噴出し始めたので、急いで顕微鏡観察も済ませましたよ。


■ 2020年09月21日 撮影

本種は図鑑でも子嚢殻は「埋生型」とされています。 確かに埋生なのですが、子嚢殻と子嚢殻の間の結実部の菌糸がセパレート気味なのです。 そのため子嚢殻同士が分離し、その結果まるで裸生型であるかのように見えます。 これはヤクシマセミタケなんかと同じ感じです。総じて子嚢殻がキモいです。


■ 2020年09月21日 撮影

懸念点だった二次胞子に分裂する前の子嚢胞子もちゃんと観察できました。 子嚢胞子は糸状16個の二次胞子に分裂する性質があります。 左の二次胞子は2細胞ほど未分裂なので14個ですけど。 あと隔壁部分でカクカクと折れ曲がる傾向があります。長さは110μm前後かな?


■ 2020年09月21日 撮影

二次胞子には分裂しやすく、少し衝撃を加えるとこんな感じでバラバラになります。 二次胞子は両端付近に大小の油球を内包しているものが多く、両端の2細胞は鋭く尖ります。 ここまで確認できれば本種と言い切って良いでしょう。

極めて小型の種であり、確実に食用価値無しです。

■ 2019年09月21日 撮影

2020年の発見時、私も初見だと思って大騒ぎしていたのですが、1年前の北海道で出会ってました。 発見者がガガンボ氏で自分ではなかったことと、時間が迫って焦ってエニワセミタケを掘っていたので、 写真も急いで撮ったこれ1枚で「見付けた」と言う感覚が皆無で忘れていました。
■図鑑TOPへ戻る