■Ophiocordyceps sphecocephala (ハチタケ)

■ 2016年06月25日 撮影

近所の山を歩いている時に何とも不思議な出会いを果たしました。 林床に落ちた各種ハチの成虫から発生する大型種「蜂茸」です。 何度もオフ会で出る場所を案内して頂くも出会えなかった憧れの種。 まさか地元でいつも普通のキノコを探している山で出会えるとは思いませんでした。 数ある冬虫夏草の中でもビジュアル的な格好良さはトップレベルではないでしょうか?

良く似た種にトガリスズメバチタケがありますが、同種ではないかと疑われています。 同じアリ生種に出るマルミアリタケ(アリタケ?)も外見が似ていますが、 アワフキムシタケとも良く似ていることがあり、これらは近縁である可能性が高いです。


■ 2016年06月25日 撮影

子実体はミミカキイ型と呼ばれるやや長い結実部を作るタイプ。 色は鮮やかな黄色で比較的背が高くなるため、発見難易度は比較的低めです。 子嚢殻の出来方に特徴があるのですが、これは後述しますね。


■ 2016年06月25日 撮影

宿主はやや小さめのスズメバチ。コガタスズメバチあたりでしょうか。 脚や触覚、翅は崩れていますが、本体は今にも動き出しそうです。 また複眼が白いのが、もう内部は菌糸に置き換わっているのだと思わせて来ます。


■ 2016年04月23日 撮影

実は初発見は2ヶ月前・・・近場だったのでずっと定点観察していたのです。 しかも何とこれアスファルトの上にコロンと転がっていたのですよ。 最初は普通のハチの死骸だと思って通り過ぎようとしましたが、 複眼が真っ白になっていることに気付きフィールドに放置していました。 持ってみると妙に重量感があり、何本も子実体が出始めていました。


■ 2016年06月04日 撮影

雨で流されない場所に放置して様子見。大きな動きがあったのは6月頃でした。 それまでほとんど動きが無かったストローマが急激に伸びて来ました。 先端部が太くなり結実部を形成しようとしているのが確認できます。


■ 2016年06月25日 撮影

胞子の飛散を確認してから標本用に採取しました。拾うだけですけど。 クリーニングも必要無く、難易度的にはカメムシタケに匹敵しますね。 ただし地中に営巣する種から出る場合は地下がとんでもない長さに・・・。


■ 2016年06月25日 撮影

子実体を拡大してみました。全体的に黄色で鮮やかな色合いです。 同じハチ目生のマルミアリタケや、セミ目生のアワフキムシタケ似かな? 実際これら3種は胞子の形状も含めかなり性質に共通点が多いようです。


■ 2016年06月25日 撮影

結実部はこのようなミミカキ型〜円筒型、他にはギボウシ型が一般的。 また本種の子嚢殻は斜埋生型で外側へ向かって斜め上に形成されるため、 やや突出した子嚢殻先端の下側に子嚢殻が浮き出て見えます。 ただこの当時は高性能の顕微鏡を持っておらず、 折角胞子の噴出を見れたのに胞子の写真が撮れませんでした。 今度状態の良い状態のサンプルが見付かったら胞子観察したいトコロですね。

薬用成分があるワケでもないので利用価値無し。もっぱら観賞用でしょうね。 と言うか本種は観賞価値が極めて高く、コレクションされている印象がありますね。 やはりハチ目を宿主に持つ冬虫夏草は見た目がズルいです。

■ 2016年06月04日 撮影

同じフィールドで発見した小型の黒いハチから発生したハチタケです。 こちらは小型ですが典型的なギボウシ型の結実部の持ち主ですね。 アシナガバチやジガバチなどから発生すると結構小型になります。

■ 2023年07月08日 撮影

しんや氏を地元にお招きしての冬虫夏草オフ。 この場所の目標はハヤカワセミタケでしたが、残念ながら発見はならず。 そんな中でしんや氏がハチタケを発見。地味にこのフィールドでは初発見でした。


■ 2023年07月08日 撮影

子実体はやや小さ目ですが、形状は凄くトガリスズメバチタケ風ですね。「風」ですけど。 本種は宿主の栄養状態や成長時の気候条件などによって結実部の形状がかなり変化する印象があります。


■ 2023年07月08日 撮影

宿主はアシナガバチの成虫のようです。沢筋のヒノキ林地上にコロンと転がっていました。 ただ他の冬虫夏草探しに夢中でサンプル採取を失念していました。 胞子観察を済ませていないことを完全に忘れてたんですよね、俺の馬鹿!

■ 2023年09月09日 撮影

もろぞー氏主催のキノコオフにて、このフィールドでは地味に初発見でした。 冬虫夏草がメインの探索会ではなかったのですが、複数個体を発見できたので発生量は多いようですね。 しかも非常に小型のハチから発生しており、しかもしかもコケの上に乗ってるー! これヤラセ無しで発見状態でコレだったんですよ。


■ 2023年09月09日 撮影

現地でマクロ撮影したものです。宿主は非常に小型のハチ。流石に同定はできませんでした。 一応乾燥標本にはしてあるので、機会があれば詳しい方に見ていただけたら・・・と思っています。 宿主が1cmほどとかなり小型なので子実体も比例するように小型で、子嚢殻が10個くらいしかありません。


■ 2023年09月10日 撮影

帰宅後に珍しくクリーニング無しで黒バック撮影。 ハチタケは落ちている場所によって綺麗さが全然違いますね。 乗っているコケは大型の蘚類で苔テラリウムなどで人気のあるコウヤノマンネングサのようです。


■ 2023年09月10日 撮影

やっと胞子観察できたー!今までずーっと胞子観察できてなかったんですよね。 初発見のスズメバチ生種で一応見てはいるのですが、高性能の顕微鏡を持ってなかったんです。 子嚢胞子は糸状64個の二次胞子からなり、長いものだと脅威の900μm超えです。 あまりにも長くて画像連結が超大変でした。


■ 2023年09月10日 撮影

二次胞子はやや弓なりに反った紡錘形で、両端はやや長いですが基本的に25μm弱です。 繋がった状態で見ると良く分かるのですが、分裂前は交互に反るように繋がっています。 これは近縁なマルミアリタケなどでも同じ現象が確認できますね。 あと両端付近に泡状の油球が少し内包されています。


■ 2023年09月10日 撮影

と言うことで超小型ではありましたが旺盛に胞子を噴出してくれたので胞子観察できました。 ミニチュアみたいで素晴らしいサンプルだったとは思うのですが、 ページ的に下に行くほど小型化が進んでいるのは気のせいでしょうか・・・?
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