■Ophiocordyceps stylophora (クチキツトノミタケ)

■ 2016年11月19日 撮影

種小名は「花柱を有する」。不思議と一番惹かれる冬虫夏草かも知れません。 コメツキムシ科やゴミムシダマシ科の幼虫を宿主とする一般的な種です。 いわゆる「突き抜き型」と呼ばれる子実体を作る種の代表種でしょうか? 「ツト」がどう言う漢字で書くのかが分かりませんでした。「苞」かな? 普通種ではありますが発生環境や色、形状から発見難易度は高め。

発生環境の特徴としてブナの腐朽材からの発生が大半のようです。 宿主が暗色になるまで朽ちて脆くなった材を好む事に起因すると思われます。


■ 2016年11月19日 撮影

子実体は暗灰褐色で目立ちません。細長く枝や根と良く間違えます。 途中に太い部分がありますが、これが子嚢殻を内部に無数に持つ結実部。 このようなタイプを突き抜き型と呼びます。ユニークな形状ですね。 完熟して子嚢殻が突出していますが、若い内は平滑で確認できません。


■ 2016年11月19日 撮影

本種のもう一つの特徴、それはギロチンしやすいと言う事ですかね? これは子実体が基部で木材と混ざり合い、一体化している事が多いため。 よって無理矢理樹皮を剥がすとそのまま子実体が付いて来てしまうのです。 事実同行していたガガンボさんも1つ目は失敗、2つ目で成功していました。 下に見えるのが幼虫。訪れた時期が遅かったためかなり朽ちていました。

薬用にならない時点で冬虫夏草に観賞用以外の価値は無く食不適扱いです。

■ 2015年09月22日 撮影

どろんこさんガガンボさんと訪れた富士山のブナ林にて発見した良個体。 今まで見付けていたのはどれも未熟だったので嬉しい出会いとなりました。


■ 2015年09月22日 撮影

突き抜きの先端がかなり長いですが、これはかなり個体差があるようです。 本種は完熟時期が晩秋のため真夏ですがまだ未熟で子嚢殻は見えません。 また不稔個体が多いのも特徴で、綺麗な成熟個体には中々出会えません。


■ 2015年09月22日 撮影

掘ってみました。相変わらず樹皮付近の菌糸が完全に材と一体化なう。 この特徴ホント厄介で、油断して引っ張るといとも簡単にギロります。


■ 2015年09月22日 撮影

テレオモルフなのに子嚢殻が見えないとお思いの貴方!・・・居ませんか。 ちゃんとあります。取り出してしばらくすると子嚢殻の先端がホラこの通り。 水分を失ったことで結実部が萎み、頑丈な子嚢殻が浮き出てきました。 この状態を見れば植物屋さんは本種の種小名の意味が腑に落ちるのでは?

■ 2015年09月22日 撮影

掘り出してビックリ!宿主がかなり立派で発生ヶ所も複数存在しています。 柄も褐色で表面に毛状組織が存在するので毛羽立っているように見えます。


■ 2015年09月22日 撮影

掘り出してビックリ!宿主がかなり立派で発生ヶ所も複数存在しています。 柄も褐色で表面に毛状組織が存在するので毛羽立っているように見えます。


■ 2015年09月22日 撮影

帰宅後に綺麗にクリーニングした様子がコチラ。左は最初に載せた子実体です。 こうして見ると子実体は必ず軟らかい体節部分から出ているのが分かります。

■ 2015年08月08日 撮影

本種が面白い点がもう一つ。それは不稔個体が多いと言う特徴です。 最初に発見したのがコレだったので本種だと思わず質問してしまいました。 本種は通年発見でき、完熟するのに数年かかるとも言われています。 なので正確には「熟していない子実体に多く出会う」って事になりますかね?

■ 2015年08月08日 撮影

上のヤツを見た時は分かりませんでしたが、コイツを見て本種を疑いました。 そう、柄の途中に奇妙な2つの節があるんです。これ図鑑で見たぞ・・・? この2つの節の間が結実部になるんですね。途中経過を見れたのは貴重でした。

■ 2015年09月05日 撮影

別の場所で見付けたさらに熟した子実体。推移が分かるのはありがたいです。 それにしてもブナ材を好むこの宿主はほぼ共通ですね。何とか同定したいなぁ。 本種に関してはかなり宿主特異性が高い部類の虫草みたいですからね・・・。

■ 2019年05月03日 撮影

黄金週間のキノコ狩りオフで見付かったのはまさかのコイツ。 当然新鮮な子実体ではなく、ストローマの先端の干乾び具合から昨年発生した子実体でしょう。 結実部もしぼんで子嚢殻が飛び出しています。

■ 2019年05月03日 撮影

良い感じにコケに囲まれて絵になるクチキツトノミタケを発見したのでパシャリ。 これは先程のものより綺麗ですが当然役目を終えた残骸です。 本種は晩秋くらいに成熟するため気温が低くて傷む前に冬を迎えてしまうのでしょうね。 いわば自然の凍結乾燥。他の菌に冒されることも無いのでしょう。

■ 2020年10月27日 撮影

実は夏頃から定点観察していました。訪れるたびに様子を見てたんですよね。 でもやっぱり夏の間は全く結実部を形成せず、晩秋で成熟しました。 いまだ諸事情により胞子観察が叶っていません。

■ 2021年10月02日 撮影

コケで何となくお分かりかと思われますが、同じ場所です。 本種は採取可能な場所で見付けたことが少ないわ、見付けても老成した個体だわで胞子が未だ見れてません。 今なら十分な設備も技術もあると思うんですが・・・保護区はどうしようも無いですね。

■ 2022年09月25日 撮影

今年は非常に多くの子実体に出会うことができました。 面白いことに手前の子実体は古い子実体から再発生しているようです。 本種は1年で宿主が朽ち果てる印象だったので驚きです。

■ 2022年09月25日 撮影

今年はせっかく採取可能な場所での発見だったのですが、ちょっと残念なことが。 この発見以降再度訪れる機会が無かったので、やむなくこのタイミングで採取しました。 ですが本種は追培養は不可能と言われるほど追培養が難しい種。 少し子嚢殻が突出するまで行ったんですが・・・その後成長がストップしました。 褐色菌糸の成長は順調に行ってたんですけどね。


■ 2022年09月25日 撮影

手前の子実体を拡大してみましたが、結実部は出来ているものの子嚢殻は発達していません。 もう少し成熟した採取できていれば胞子観察できたかも知れません。


■ 2022年09月25日 撮影

奥に見える子実体は断面作成してみました。 やはり宿主はいつもと同じゴミムシダマシ科っぽいです。 自然界でも不稔で終わることが多く、事実この子実体も先端部がすでに萎れています。 ひょっとすると自然界で放置しても成熟しなかったかも知れません。

■ 2023年09月24日 撮影

昨年大発生していた沢筋が鉄砲水で崩壊し、せっかくの大発生地が・・・。 ずっと見たがっていたしんや氏が辛うじて発見した子実体がコチラ。 ただ氏はキマワリアラゲツトノミタケとの違いを確認したかったようで、 かなりの雰囲気の違いに驚いておられましたね。
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