■Ophiocordyceps tricentri (アワフキムシタケ)

■ 2015年08月02日 撮影

初参加の2015虫草祭にてメチャクチャ苦労して発見することができた冬虫夏草。 和名の通りアワフキムシの成虫から発生する、その名も「泡吹虫茸」です。 冬虫夏草の界隈ではかなりポピュラーな種で、発見は比較的容易だそうですが、 どうも地域性があると言うか冷涼な地域の種のような気がしています。 ちなみに種小名はTricentrus属と言う意味みたいなのですが、 これコツノゼミ属じゃ・・・?確かに似てますけど。

冬虫夏草としてはかなり一般的な種であり、発生する時は大発生することが多いです。 ただアワフキムシ自体は日本中で見られるワリに、本種の発生はそこまで多くありません。 私の地元でもアワフキムシの痕跡だらけなのに1度も見たことが無いんですよね。 なおアワフキムシからは針タケ型のツブアワフキムシタケが稀に発生します。


■ 2015年08月02日 撮影

子実体は全体的に黄色で、小型でもこの色のせいで良く目に付きます。 子実体の形状としてはカメムシタケなどと同じミミカキ型と言うタイプに分類されます。 先端部は楕円形やギボウシ形、円筒形などかなり個体差がありますね。


■ 2015年08月02日 撮影

結実部を拡大してみました。子嚢殻は斜埋生型で斜め上を向いています。 この斜めってる感じはマルミアリタケやハチタケに雰囲気が似ていますね。 実際に子嚢胞子や二次胞子の特徴もこれらは全て良く似ています。 トゲトゲの先端から出ている白い糸状の物が分裂前の子嚢胞子ですね。 また本種は細い子実体を保持するために周囲の物に癒着していることが多いです。 そのため普通に引っ張ってしまうと癒着部分でギロチンするので注意。


■ 2015年08月02日 撮影

宿主のアワフキムシを拡大してみました。胸部から発生しているようです。 何となくセミに似ていると思った方は大正解。セミと同じカメムシ目ですからね。 ちなみにこの宿主、頭部から尾部までの長さが7mmです。激小さいですよ?

食用価値も薬用価値も特に無いようです。なので食用価値無しの愛玩用でしょう。 そもそも写真からは想像できないほど小さいので、食べるほど集めることがそもそも難しいです。

■ 2023年07月23日 撮影

実に7年振りの再会となりました。しかも今回も2023年開催の虫草祭。 不思議と本種には長距離遠征した時くらいしか出会えていないんですよね。 今回はハエヤドリタケの大発生など他にも魅力的な冬虫夏草が多数見られたのですが、 前回あまりしっかり観察できていなかったので気合い入れて撮影と観察を行いました。


■ 2023年07月23日 撮影

結実部はまだ未熟なようで、子嚢殻の突出が見られません。 本来はベストシーズンな月日ですが、東北地方での開催と言うことで少し早いのかも知れません。


■ 2023年07月23日 撮影

宿主のアワフキムシです。この場所は旧道から広い沢に入る感じの地形なのですが アスファルト舗装上に溜まった腐植にも多数の発生が見られました。 普通種と言うことでスルーされ気味でしたが、私やどろんこ氏は熱心に撮影していましたね。


■ 2023年08月06日 撮影

撮影日に注目。凄い時間経ってますね。実はずっと追培養していました。 胞子の自然放出をさせたかったのですが、傷むと怖いので先に黒バック撮影を済ませることに。 撮影後もう一度タッパー内に固定して胞子の自然放出に挑みました。


■ 2023年08月06日 撮影

結実部は採取時と比べて子嚢殻が突出しているのが分かります。 一応成熟は進んでいるみたいですね。 本種の子嚢殻は斜埋生型で先端方向に向かって形成されるため、 このように結実部表面に子嚢殻が浮き出して見えるのが特徴。 色合い的にもハチタケと良く似ていますね。


■ 2023年08月06日 撮影

宿主のアワフキムシも黒バック撮影してみました。 ここまで見てきて分かりましたが、胸部あたりから子実体が出ていることが多いですね。 冬虫夏草には子実体の発生位置がほぼ固定の種がありますが、本種もそうなのかも知れません。 しかしこうして見るとアワフキムシってセミに似てるなぁ。


■ 2023年08月19日 撮影

採取から1月近くが経とうとしていました。待てど暮らせど子嚢胞子の噴出が起きません。 子実体が肉眼的に傷み始めたのでまさかと思って結実部をカミソリで切ってみると、 子嚢殻内部が空洞。やはり内部の子嚢が消失してしまったようです。 こうなると胞子を見ることは叶わないため、顕微鏡観察を最後に凍結乾燥に回しました。 子嚢殻は非常に長く900μm前後。本来よりもやや短いかな?


■ 2023年08月19日 撮影

本種の子嚢殻は上方向に成長するので、こんな感じで一定方向を向いています。 細口ビン形と呼ばれる間延びした感じの形状の子嚢殻が特徴。 やはり内部に子嚢が全く見られないので、追培養時の環境が合わなかったみたいです。


■ 2023年07月23日 撮影

時間を巻き戻して2個体採取したもう1個体です。今回はやや未熟だったこともあり、 採取後の追培養に失敗してしまいました。また出会う機会があれば、その時は必ずリベンジするぞ! それよりもまずは地元で出したいんですが、何か居る気がしないんですよねぇ。
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