■Peziza celtica (ペジザ セルティカ)

■ 2018年05月03日 撮影

実は以前から何度も見てはいましたが、同定に自信が持てませんでした。 と言うか現状まだ自信が持てていませんが、今回思い切って掲載しました。 春に朽木や周辺地上に発生する美しい色合いのチャワンタケ属菌です。 外見が似た種が多いのですが、外見的特徴と顕微鏡観察で本種と判断しました。

いわゆるフジイロチャワンタケモドキと良く混同されている種ですね。 ただし胞子のサイズや側糸の先端の形状から消去法でナシとしました。 無印フジイロチャワンタケは外側が黄色なので別種と思われます。


■ 2018年05月03日 撮影

ちょうど成長度合いの違う3つの子嚢盤が1ヶ所に出ていて助かりましたね。 子実体は椀形で子実層面は帯紫小豆色で美しいのですが、老成すると褐色に寄ります。 外側は白色ですが、コチラも成熟すると子実層面と同じく褐色になります。 若い子実体の縁部を見ると分かるように粗面で透明感が有ります。


■ 2018年05月03日 撮影

これを撮影した時は各種染色剤の効果を知らなかったため、そのまま撮影してしまいました。 子嚢胞子は楕円形です。表面の構造までは分からず・・・。 とりあえず大きさが18μm程度有るのでフジイロチャワンタケモドキではなさそうかな?


■ 2018年05月03日 撮影

メルツァー試薬で染色すると頂孔だけではなく子嚢先端が染まります。 この段階では側糸が折れ曲がっており、フジイロチャワンタケモドキの可能性を捨てきれませんでした。

毒性に関する情報が見付かりませんでしたので食毒不明としておきます。 猛毒ってことは無いとは思いますが、同属菌のオオチャワンタケで中毒例が有るらしいですし。

■ 2018年05月03日 撮影

すぐ近くに有った色褪せた子実体です。材上生だったり地上生だったりでどっちでもイケるようです。 全体的に黄ばんでいますが、かすかに子実層面に紫色っぽさが残っていますね。


■ 2018年05月31日 撮影

何と一月近く経っても同じ子実体が残っていたので、立ち寄りやすい場所ですし仕事帰りに採取。 帰宅後に顕微鏡観察に再チャレンジしました。こうして見ると側糸先端は湾曲しないみたいですね。 観察の仕方が悪かったのかも。


■ 2018年05月31日 撮影

メルツァー試薬での染色結果は前回の通り。 こうして染めてみると子嚢より側糸が先に出るのが良く分かります。 側糸は糸状で分岐はせず、隔壁が有ります。


■ 2018年05月31日 撮影

メルツァー試薬で染色した状態で胞子を観察すると、表面の構造がより分かりやすくなります。 子嚢胞子は楕円形で長さは15〜18μm。表面は一面微細な疣状突起に覆われています。 内部の油球は2つで、あまり大きくなりません。


■ 2018年05月31日 撮影

子嚢菌類の胞子表面を見る際に役に立つのがコットンブルーによる染色です。 特に表面の突起の状態を観察する際には絶大な威力を発揮します。


■ 2018年05月31日 撮影

コットンブルーで染色した子嚢胞子を人力深度合成してみました。 表面を覆っている微細な疣状突起が見られます。これらの特徴から本種であると判断しました。 と言うかここまで調べないといけない上にある程度消去法を使わざるを得ないってのは不親切では?
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