■Plectania platensis (クロヒメチャワンタケ)

■ 2019年06月16日 撮影

以前から「クロチャワンタケと紛らわしい種」と言う情報として知ってはいました。 しかし出逢えども出逢えども顕微鏡で見える胞子は球形ばかり。 本当に居るのか?と疑っていたくらいですよ。まさか近所の竹林で出会えるとは思いませんでした。 初夏の広葉樹林地上に発生する「黒姫茶椀茸」です。 竹林ではありますが広葉樹の根が這うように伸びている苔生した急斜面に出ていました。

外見は早春に見られるクロチャワンタケと酷似していますが、本種はエナガクロチャワンタケ属菌です。 クロチャワンタケと比べると発生量が少なく、同定に顕微鏡観察が必須のため、ネット上でもほとんど目にしません。 逆に顕微鏡観察を行っていない同定は何の意味もないと思って良いと思います。


■ 2019年06月16日 撮影

子実体は黒色で、「ヒメ」と付くワリにはクロチャワンタケより肉厚で重厚感があります。 子実層面にもつやが無く、キツネノサカズキのように縁部がボソボソしているのも、 薄くて整った形状をしているクロチャワンとは明らかに異なります。 この荒い質感の縁部は子嚢盤の外側が菌糸に覆われているためです。

全然関係ないですが子嚢盤の内側にそれぞれトビムシ?とダニ?が居座っていました。 何かこのモクズショイみたいなダニが妙にカッコ良かったです。


■ 2019年06月16日 撮影

本番はここから。子実層面を顕微鏡観察して叫びましたね!


■ 2019年06月16日 撮影

子実体の質感からもしかしてとは思っていましたが、子嚢内部の胞子の形状を見て確信できました。 この時、胞子に妙なモアレが見られたので、レンズの加減かと思っていましたが、実はコレが重要な特徴でした。


■ 2019年06月16日 撮影

側糸は糸状で隔壁を持ち、分岐するのが特徴です。 コレ以外に分岐しない菌糸が混ざるそうですが、自分は見付けられませんでした。


■ 2019年06月16日 撮影

不思議だったのがコレ。なぜか胞子にだけ像のブレが発生してしまうのです。 最初は原因が分からず絞りを調節したりレンズを掃除したりしたんですが、一向に直らず。 それもそのハズ、実はコレこそ本種を決定付ける胞子の特徴だったのです。


■ 2019年06月16日 撮影

胞子を単体で観察して初めてその原因が判明しました。 本種の子嚢胞子は左右非対象の楕円形なのですが、その膨らんだほうの側面に 横方向のシワがあるのです。これ像のブレじゃなかったんですね。 観察中はこの波打ち方が羽つきギョウザにしか見えなくなって凄く面白かったです。


■ 2019年06月16日 撮影

メルツァー試薬での染色も試みましたが、子嚢は非アミロイドでした。

食毒不明ではありますが感覚的に食不適でしょう。 土を巻き込んで土臭いわ小型だわで食用価値無しと言うよりかは食えたモンじゃないレベル。 本種に関しては顕微鏡によるクロチャワンタケとの判別作業こそが醍醐味かも知れません。 意外と珍しい種みたいなので、もし怪しい子嚢菌類に出会えたら是非顕微鏡を覗いてみて下さい。

■ 2019年06月16日 撮影

同じ子実体に見えますが違いますよ。コレ少し離れた場所の別の子実体なんです。 ここにも同じダニが居座っていました。何か好きな成分でも出してるんでしょうか? こうして見るとやはり決定的に違うのは縁部の質感だと気付かされます。
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