■Psathyrella ammophila (スナジクズタケ)

■ 2020年11月23日 撮影

秋のキノコ類もそろそろ姿を消す時期、寂しいなぁと思って訪れた砂浜で意外な出会いがありました。 差し込む強い日差しのおかげで影ができていたので気付くことができました。 夏から秋にかけて海岸の砂地に発生すると言う変わり者「砂地屑茸」です。 ちなみに種小名の「ammophila」は「砂を好む」の意味で、スナヤマチャワンタケの種小名と同じですね。

「クズタケ」と言う名前と属名を見れば分かるようにイタチタケなどと同じナヨタケ属菌です。 砂に埋れたイネ科植物の腐植に発生するとも言われていますが、 有機物が無いような場所にも発生が見られるのでぶっちゃけ良く分かりません。


■ 2020年11月23日 撮影

子実体はクヌギタケ型で、いかにもナヨタケ属だなぁと言う感じの見た目。 むしろナヨタケが砂から生えてると言う感じです。 子実体は全体的に黄褐色で粘性は無く、傘中央は若干赤みが強くなります。 また乾燥によって傘の組織内に「ス」が入り、傘周囲が白っぽくなります。


■ 2020年11月23日 撮影

引っこ抜いてみました。柄も傘と同色で、柄の表面には縦方向の条線が走っています。 柄は半分ほど地面に埋もれており、砂に埋れた植物由来の有機物を栄養源にしているっぽいです。 ひだは灰褐色ですが、成熟すると暗褐色になります。これもまた本属っぽいですね。


■ 2020年11月23日 撮影

子実体が比較的頑丈なのでカミソリで切りやすかったですね。 今回は顕微鏡観察もしっかりとできました。あまりシスチジアが目立たないなぁ・・・。


■ 2020年11月23日 撮影

切り方を失敗して角度が付いちゃったんですが、逆に担子器が4胞子性であることが良く分かる写真が撮れました。


■ 2020年11月23日 撮影

傘をスライドガラスの上に置いておいたら大量の胞子が落下しました。 そもそもナヨタケ属は胞子紋が暗紫褐色〜黒色の種であり、本種も例外ではありません。 顕微鏡で見てもここまで暗い色に見えるって時点で相当暗色ですよ。


■ 2020年11月23日 撮影

油浸対物レンズで見れば胞子の形状がハッキリ見えて来ます。超綺麗な楕円形ですね。 担子器の小柄と繋がっていた部分だけピンと跳ねていますが、この整った形状は惚れ惚れしますね。 胞子は暗紫褐色で良いのかな?表面は小疣に覆われています。

食毒不明ですが、仮に無毒であっても食用価値は無いでしょう。 小型で量も採れませんし、ひだの隙間に砂粒が入りまくっていて洗うのも大変。 肉質も脆いのでそんなに洗ったら木っ端微塵になりそう。 食べるとか考えずに、特異な環境に出る種として愛でましょうぞ。


■ 2020年11月23日 撮影

ハラタケ型菌が減る11月末に見て意外でしたが、ネットで調べると結構晩秋〜初冬に出るんですね。 でも普通に夏から秋にも出てますし、発生時期が良く分かりません。 とりあえず砂浜にキノコ型のキノコが出てるのは結構衝撃なので探す価値アリですよ?
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