★Pseudotulostoma japonicum (コウボウフデ)

■ 2015年10月04日 撮影

雑木林の中で発見しました。初めに言っておきますが、超激SSRレアです。 どの図鑑にも「非常に珍しい」と表記される異端児「弘法筆」と言うキノコです。 周囲にも数株見付かり、まさかこんな近所に生えているとは思いませんでした。 ずっとツチグリと同じ腹菌型とされていましたが、子嚢菌類だと判明しました。 灰青色の胞子を持つツチダンゴの仲間から進化したと考えられています。

本属自体が非常に珍しく、他だと海外に「P. volvata」が存在する程度です。 古い図鑑だと「Battarrea japonica」の学名で腹菌類の項目に入っている場合があります。 国内でも特に珍しい種であり、本種との出会いそのものが「愛好家のステータス」なんて言われることも。


■ 2015年10月04日 撮影

幼菌は薄黄色をしたタマゴ型ですが、成熟すると破れてつぼとなります。 そして内部から青灰色をした柄が伸びて行きます。とてもヘンな形状です。 この先端が崩れて胞子を飛ばすのですが、その様が「筆」のように見えます。 つぼがあるのに傘が無い。他に類を見ない異様さです。見れたことに感謝したい。

見た目に粉っぽく、とても食えるキノコではありません。てか食べないで。 本種は冗談抜きに激レアなんです。発生していたらその環境そのものが宝ですから!

■ 2008年09月21日 撮影

雨の中でも、水を弾くのか本種は乾いた印象でした。本当にヘンなキノコですね。 水滴に弾かれたのか、それとも自然と崩れたのか、地面に破片が散っています。 図鑑などでは数株かたまって生えた写真が多いですが、ここでは散って生えます。 色が地味な上にほとんど落葉に埋もれているので、気を付けないと踏んでしまいます。

■ 2008年10月18日 撮影

珍種です。周囲に10株以上確認できました。実は結構普通に居るのかな? 薄暗い森の中、色が色だけに目立たないですね。幼菌なんて見付けられないよ。 地中生のキノコなので幼菌を見付けるのはかなり困難。場所も覚えたし来年こそ・・・。

■ 2009年08月08日 撮影

ナンダコレ?林道脇に見慣れないキノコを発見。てか良く見付けたものだと思う。
抜こうと思って揺すってみてもビクともしないくらい地面に食らい付いていた。


■ 2009年08月08日 撮影

手持ちのカッターで真っ二つにすると、何だか見覚えの有る色をしています。 中央の青灰色の胞子部分が上に伸びるような模様が入っています。 発見場所も以前コウボウフデを発見したすぐ近く。どうも間違い無さそうです。 幻の本種の地面に埋もれた幼菌など更に幻。頭を出しているなんてラッキー!

■ 2009年10月03日 撮影

キノコ大不作だった本年。特にこの時期はキノコの「キ」の字も見当たらない! そんな中意外な事にフツーに生えていたのが本種。乾燥に強いみたいですね。 丁度数日前に久し振りに雨が降ったため、頭が雨粒で潰れて開いています。

■ 2009年10月03日 撮影

この日は結構な個体数を確認する事ができました。本種に救われました。

■ 2010年09月26日 撮影

多くのキノコが不作だったこの夏。でも本種は珍種なのに大発生でした!!! 正直意外です。乾燥に強いのでしょうか?発生量が尋常じゃなかったんです。 複数ヶ所で群生を見かけました。普通のキノコとは違うんだ!って感じですね。

■ 2010年10月02日 撮影

暗い場所だったので少しブレてしまったのが残念。今回は全く別の場所。 今までのフィールドではありがた味が無いくらいに見付けられた本種。 今回の場所、私の住む県内では数少ない発生ポイントの一つとの事。 やっぱり稀少種なんですね・・・。守って行かなければなりませんね。

■ 2011年09月11日 撮影

カメラ買い換え後初の訪問。暗い場所なので三脚必須の撮影となりました。 つぼを破って出てきたばかりなのでまだ柄が短く、先端もあまり崩れていません。

■ 2011年09月18日 撮影

ド迫力のコウボウフデ!何か今まで見てきた個体と比べると大きいような? どっしりしてて見応え有りましたね。この日はかなりの個体数確認できました。 先端部ってもっとボロボロな事が多いんですが、コイツらは比較的綺麗でした。

■ 2012年09月21日 撮影

今年はあまり沢山の個体を見なかったですね。ホントいつ調子良いのか分からん。

■ 2012年09月29日 撮影

幼菌が出ていましたが、手前の個体が全く崩れておらず先端の丸みを残してます。 普通はもっと背が低い段階で崩れ始めるので、こう言う個体は初めて見たかも。 つぼを突き破って湧き出してきたのが形状的に良く分かるお気に入りの一枚です。

■ 2013年09月22日 撮影

大体発生時期は固定なんですね。毎年9月の20日前後に最盛期を迎えます。 しかしこんな貴重なキノコが地元で、しかも近所で見れるのは本当に幸運です。

■ 2013年09月22日 撮影

本種が見てて撮ってて飽きないのは、柄の長さの個体差が大きいから。 非常に細長い物も有ればこのようにとんでもなく短いのも居ますからね。 この個体は上に乗ってる物に邪魔されて崩れ始めちゃったみたいですが。

■ 2015年10月04日 撮影

実はコレ、ガガンボさんどろんこさんをお招きした時は幼菌だったんです。 まだ顔を出したばっかでしたが2週間でここまで成長。早いのかなコレは。

■ 2017年09月30日 撮影

正直今年は出ないんじゃないかと思ってました。ギリギリセーフでしたね。 他のキノコでもそうですが、本種は特に発生に周期性を感じてしまいます。 出る時は本当に大量なんですが、出ない時は片手で数えられる程度ですよ。

■ 2017年10月07日 撮影

あるびのさんを地元にお招きしてのオフ。一週間で一気に発生してくれました。 先週は全然見付からなかったのに・・・あるびのさん、これは持ってるなぁ。 ちなみにコウボウフデのこの先端の感触、メチャクチャもふもふなんです。 一度触ると手に胞子が付くのも気にせずについついポフポフしたくなります。 これこそ実際にこの菌に出会えた幸せ者だけが体験できる貴重な経験ですね。

■ 2017年10月14日 撮影

オフから一週間後、同じ場所を訪れてみるとほぼ成長し切った子実体ばかり。 その中でも気になったのは妙に細長いコイツ。異彩を放っていましたね。

■ 2017年10月14日 撮影

先端の胞子となった部分が完全に崩れ、硬い柄の部分だけになってます。 辛うじて上はふかふかしていますが、指で押すとすぐに弾力を感じます。 左の子実体は幼菌ではなく折れた老菌。この辺が時期的にラストですね。

■ 2018年09月23日 撮影

新しい顕微鏡を頂いたときから胞子を見てみたかったキノコの1つ、それが本種でした。 この外見で子嚢菌類、しかも地下生菌に近縁と聞くと胞子を見てみたいではありませんか。 ちょっと他の菌にヤられていたので、綺麗な部位だけ持ち帰って観察しました。


■ 2018年09月23日 撮影

胞子を観察した結果は・・・うん、これ地下生菌と同じだわ。 正確には灰青色の胞子を保つツチダンゴのそれにソックリです。 子嚢胞子は球形で直径は約6〜9μmでした。 胞子の表面は微細なとげに覆われており、色も形もツヅレシロツチダンゴおよびその近縁種に酷似しています。 ただ本種の胞子は3層から成るため厚膜に見えます。


■ 2018年09月23日 撮影

嬉しかったのはコレ、何と子嚢の痕跡を発見しました! 綺麗な子嚢は幼菌時しか見れませんが、稀に成菌でもその名残が確認できるとは聞いていました。 しかし実際に見れるとは思いませんでした。 未成熟で終わってしまうとこのように残るっぽい?

■ 2018年09月23日 撮影

今年は時期を外したのか、それとも不作だったのか、あまり発生量が多くありませんでした。 見付かった子実体も背が低いものが多かったりで被写体を選ぶのが大変でした。

■ 2018年10月13日 撮影

9月の段階ではほとんど発生が見られませんでしたが、10月半ばになって急に出始めた?急や。 今年は全体的に発生が遅れているのかも知れませんね。

■ 2018年10月13日 撮影

このコウボウフデを撮るために手前の枝を退けたのですが、シャッターにかけた手に違和感が。 何か手の表面に黒い粒がいっぱい付いていました。その1つ1つが蠢いているのを見て鳥肌が立ちましたよ。 そう、何と無数のマダニベビー! 三脚の石突にまでビッシリ付いていてもう大パニック。印象に残る1枚となりました。

■ 2020年11月01日 撮影

この年は何度かこの場所を訪れたのですが、秋になっても1株も見付けられませんでした。 間違い無く少雨にせいだったのでしょう。晩秋になって辛うじて1株だけ見付けました。 胞子観察リベンジしたかったですが、今回は我慢することに。

■ 2021年10月09日 撮影

2021年は事前年に比べると発生量が多くて一安心。 そう言えばツチダンゴ属の属名である「Elaphomyces」は「鹿毛色の菌」と言う意味なんですよね。 褐色の外皮を持つツチダンゴがその由来なんでしょうが、これを見ると本種も近縁だと言うのが良く分かります。 ただ灰青褐色の胞子を持つ種はあまり外皮の色が褐色系じゃないんですけど・・・。

■ 2021年10月09日 撮影

古くなってうなだれたコウボウフデですが、良く見ると基部のつぼや伸びたグレバに青緑色の粉が。 古いツチダンゴにも付いているのを良く見ますが、以前はただのカビだと思ってスルーしていました。 ただどうも違うっぽいんですよね。ひょっとするとボタンタケ属のアナモルフ? それともMetarhizium属のアナモルフ?今度見たら顕微鏡観察してみましょうかね。

■ 2021年10月09日 撮影

コウボウフデ大発生! どうしても縦構図になりやすいので、群生していると幅が出て見応えがあります。 それにしてもページが青い。青と緑と茶色しか無い気がします。

■ 2022年10月08日 撮影

翌週にしんや氏を地元フィールドにお招きすると言うことで、ウメムラセミタケの下見に出撃。 ついでに地元だからと立ち寄ってみたら大発生していました。 これだけ出ているのは久し振りかも知れません。被写体の選別に苦労するレベルでした。 発生範囲も広がっている気がしますし、このフィールドでは本種は安泰でしょうね。

■ 2022年10月08日 撮影

本種の基部にあるつぼは本来褐色なのですが、つぼが青黒い子実体が多いです。 本種では良く見られる光景で、雨で胞子が下方に流れたことでつぼの表面に付着してこんな色になります。 茶色い場合もコントラスト的に格好良いですが、全体に青いのもまた味があります。

■ 2022年10月08日 撮影

本当に至る所で見かけました。翌週も残っていたのでしんや氏にもご案内できました。 見てみたかった種とのことでご満足いただけた模様。長持ちな性質様々です。やったぜ!

■ 2023年10月21日 撮影

晴れ続きでキノコの発生に大きな影響が出てしまった2023年。 本種も少し発生が遅く、発生量も少なかったように思えますが、何とか立派な子実体に出会えました。 ここ最近は毎年天候不順に苦しんでいる印象があります。雨よ定期的に降ってくれー!


■ 2023年10月21日 撮影

奥に見えていた子実体です。基部のつぼがしっかり見える良い発生状態です。 ボロボロの残骸も数多く見られたことから、限られた好条件を利用して発生はしていたようです。 来年はもっと定期的に降って、道沿いにいっぱいコウボウフデが出る光景が見たいものです。 子嚢観察リベンジしたかったんですが、発生量が少なかったので採取はおあずけですね。
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