■Puccinia tokyensis (ミツバさび病菌)

■ 2020年06月06日 撮影

数多くのさび病菌が発生する地元の旧道脇にて見慣れないものを発見しました。 最初は斑入りかと思いましたが、さび病を見慣れた自分の目は誤魔化せませんぞ? 大きく育った野生のミツバの葉に明らかな病徴。これはさび病だ! 調べてみると異種寄生性を持たないミツバのみのプクキニアが存在することを知りました。 他に似たような種は無さそうなので、これが「ミツバさび病菌」で良さそうです。

調べてみると園芸ページで「ミツバさび病」の名前自体は結構出て来ます。 ミツバは栽培もされているので、存在自体は知られているのでしょう。 しかし学名が掲載されていないものばかりで、この学名は若干疑問です。 ただ2020年1月版の日本植物病名目録でミツバにさび病を起こす原因菌はコイツのみ。 なので消去法的な感じですが、この学名で掲載することにしました。


■ 2020年06月06日 撮影

最初に目に入ったのはこの葉でした。 「綺麗な斑入りだなー」と思って5秒くらいで違和感に気付きました。 いや普通に考えて色素欠乏の斑入りってこんなに細かくないだろ。 そう思って近付いて表面を観察し、病害であると確信しました。


■ 2020年06月06日 撮影

見てみると黄色い班の中心付近に褐色の胞子の塊が・・・さび病だ! と言うか裏面じゃなくて葉の表面に胞子作るんですね。


■ 2020年06月06日 撮影

裏返してみると見慣れたさび病の症状が。本種はどうも両面に胞子を作るのですね。 問題はこれがさび胞子世代、夏胞子世代、冬胞子世代のどの世代にあたるかです。 たださび病を沢山見て来たお陰か、何となく世代については予想ができていました。


■ 2020年06月06日 撮影

拡大してみましたが、胞子が出来ている部分はかなり小さいですね。 野外での観察はこれが限界なので、帰宅してじっくり観察することに。


■ 2020年06月06日 撮影

帰宅後にマクロレンズで撮影してみました。 病斑は太い葉脈に囲まれた範囲が黄色くなっている感じですね。 何か葉脈を越えられないのでモザイク状になるべと病の病斑みたいですね。 サビキンは普通丸く大きな病斑を作るので葉脈は越えられると思うんですが・・・。


■ 2020年06月06日 撮影

拡大してみました。胞子はかなり色が濃いようです。 そしてこの病徴からこれが夏胞子世代だと言うことも分かりました。


■ 2020年06月06日 撮影

胞子は飴色で、夏胞子としてはかなり色が濃いようです。 なぜこれが夏胞子だと思ったかと言うと、植物体が肥大していないからです。 さび胞子堆は植物体周辺が盛り上がりますし、冬胞子世代は胞子の色がもっと暗色です。 なにとりピンポイントで表皮が破れ胞子が溢れ出すのは夏胞子の特徴ですからね。


■ 2020年06月06日 撮影

んでは確認のために胞子観察です。あーやっぱ夏胞子ですわ。


■ 2020年06月06日 撮影

プクキニア属の夏胞子はこんな感じで卵形かつ表面にまばらなトゲがあるのが共通の特徴です。 もう完璧にその特徴を押さえている形状ですね。そして顕微鏡で見てもやっぱり色濃いです。


■ 2020年06月13日 撮影

※オンマウスで変化します

通常ピントと深度合成を切り替えられるようにしてみました。 胞子の中心にピントを合わせると分かりませんが、表面は面白い形状をしています。 とりあえず夏胞子世代であることは分かりましたが、となると他の世代はどこに居るんだろう? 調べた感じだと異種寄生ではないようなので、ミツバのみで代を繋げるみたいですけど。

食えるどころか食用のミツバの病気なので、むしろ食べ物を減らしてくるヤツです。 同じ植物体に再感染するため、駆除は感染した植物体の処分かつ周囲への殺菌剤散布がベスト。 異種寄生ではないので単体で対処できるのがせめてもの救い?


■ 2020年06月06日 撮影

やっぱ居るんですよね、このハエ目の幼虫。さび菌菌の胞子を食べているようです。 それが証拠にすぐ近くのムギ赤さび病の葉に居るヤツはもっと鮮やかな色合いです。

■ 2020年06月06日 撮影

発生は広範囲なんですが、不思議とこの隣の群落は感染無しで、さらにその隣はまた感染しています。 近くに居れば問答無用で感染ってワケでもなさそうですね。タイミングとかがあるのかな?
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