■Purpureocillium takamizusanense (スズキセミタケ)

■ 2016年10月29日 撮影

それは地元でアケビタケを観察中のこと。菌核を発見ししゃがみこんだ時でした。 足元に不自然な色合いの物体を発見。その正体に気付いた時は大絶叫しましたよ。 各種セミの成虫を宿主とする超絶激レア冬虫夏草「鈴木蝉茸」です! 恐らく我が県では初発見と思われます。まさか見付けられるなんて・・・。

本種は虫草屋さんですら特別視してしまうレベルの非常に珍しい種。 しかしその性質上、日本全国に広く分布している可能性が高いです。 要するに見付けづらいだけかもしれないって事。さぁ皆さんも探そう!


■ 2016年10月29日 撮影

宿主はどうやら小型のセミの成虫。周囲の状況からヒグラシのようです。 そこから何本も生えている淡緑色の棍棒状のものが本種の子実体です。

注目すべきは宿主表面に生えているモノ。これセミノハリセンボンの残骸。 そう、スズキセミタケは滅多に出来ないセミハリのテレオモルフなんです。 やや埋もれるなどの特定環境下でセミハリから本種が出るとされます。


■ 2016年10月29日 撮影

残念ながら時期的に不稔のようで、表面には肝心の子嚢殻がありません。


■ 2016年10月29日 撮影

帰宅後クリーニングして黒バックで撮影。宿主の傷みが激しいですね。 本種はやや埋もれたセミハリなどから翌年夏に発生するみたいです。 そのため半分ほど地面に埋もれており、掃除は結構大変だったりして。


■ 2016年10月29日 撮影

この緑がかった子実体はどうもMetarhizium属菌を連想してしまいますね。 ただ子嚢殻が無いのは寂しいのでタッパーに入れて追培養してみました。


■ 2016年11月06日 撮影

子嚢殻が出来ました。表面に黒っぽいツブツブができてきましたよ! しかし流石にもう冬間近。成熟はせず全体が紫色の分生子で覆われ終了。 ただ発生環境は掴めたので、来年以降は意欲的に探そうと思っています。

菌に侵されたセミの死骸です。薬効も聞きませんし食不適で良いかと。 てか食う事に頭が回らないくらいのレア虫草なんで、出会いが奇跡です。

■Purpureocillium takamizusanense (セミノハリセンボン)

■ 2015年08月22日 撮影

近所の森の中で出会えました。比較的目に付きやすい冬虫夏草だそうで。 ヒグラシなどのセミの成虫を宿主とするアナモルフ菌類「蝉針千本」です。 ずっと探していたのですが不思議と出会えず、意識したら見付かりました。 他にもミンミンゼミやアブラゼミなどからも見境無く発生するようです。

ちなみに本種のテレオモルフはスズキセミタケであるとされています。 適切な環境で追培養すれば完全世代の子実体を発生させる事がでいます。 ただし成虫生の冬虫夏草は似たアナモルフを発生させるので要注意です。


■ 2015年08月22日 撮影

拡大してみました。ハリセンボンの名にふさわしい外見です。もう少し拡大。


■ 2015年08月22日 撮影

幼虫は基本的に仰向けに落ちている事が多いです。拡大すると凄いですね。 表面に見える細かな虫ピン状のシンネマが無数に形成されています。 宿主は薄っすらと菌糸に覆われますが体表が見えなくなるほどではないです。


■ 2015年08月22日 撮影

更に更に拡大してみました。ここまで来るとマクロレンズ無しにはムリです。 細い分生子柄の先端に淡紫色の分生子がマッチの先のように付着してます。 息を吹きかけると結構な量の分生子が宙に舞います。行ってらっしゃい。

セミの形状はそのまま残っていますが、内部が完全に菌に置き換わっています。 毒は無いみたいですがただのカビた死骸なので食用価値無しで良いでしょう。

■ 2015年08月22日 撮影

コチラはアブラゼミに感染してシンネマ形成が始まったばかりの宿主です。 注目すべきは脚を開いている事。セミは自然死すると脚を閉じます。 つまりこのセミは生きたまま菌に冒されて死亡したと言う証拠になります。

■ 2015年08月22日 撮影

この日見た中で最も衝撃だった一枚。これ実は一切触ってない状態です。 生きたまま菌に殺されたようで、下の葉をしっかり掴んで死んでいました。 本種は稀に幹に掴まったままの宿主からも発生します。一度見てみたい!

■ 2016年09月07日 撮影

昨年見た場所に戻ってくると、ほぼ同じ場所に居ました。・・・何故に? やっぱどこかで待ち構えてるんですかね?どこかにテレオモルフがあるか?

■ 2016年09月07日 撮影

上の写真のセミハリを見付けて数秒で発見したかなり綺麗な子実体です。 持って重みのあるものは埋めておくと翌年スズキセミタケが出るそうで。 ただ残念ながらコイツは軽かったので望み薄です。そのまま放置しました。


■ 2016年09月07日 撮影

何となく拡大です。しかし本種のシンネマの出方は非常に興味深いですね。 アナモルフ菌類は全面に菌糸が覆ってるイメージが個人的にはあります。 ただ本種は蝉の素肌(?)が見えているのでコントラストが綺麗ですね。

■ 2016年10月08日 撮影

ウスキタンポセミタケの坪を散策中にやたらと目立つ白っぽい物体を発見。 すぐにセミハリだと気付きました。ここスズキセミタケ見付かってますし。


■ 2016年10月08日 撮影

宿主はアブラゼミでしょうか?持ってみるとかなり重量感がありました。 これは来年まで残っていればスズキセミタケが発生する可能性大です。 この個体もですが地面にやや埋まっているくらいが良いようです。

■ 2017年12月10日 撮影

地元の公園で地下生菌探しをしていたらカシの樹下で発見。得した気分です。 持ってみると地面にガッチリ固定されてるのでその場に放置してきました。 このようなセミハリからはスズキセミタケが出るかもなので放置が一番!

■ 2018年10月14日 撮影

地元で定点観察してたヤツは台風襲来で消滅しました。 しかし観察会にて某氏がウメムラセミタケ、ボーベリアと合わせて発見! 残念ながら持ってみると軽かったのでスズキセミタケにはならなさそう。

■ 2018年12月22日 撮影

京都での地下生菌探索中に発見。ガヤドリのアナモルフもあったのでそう言う環境のようです。 にしてももう着込まなくては肌寒い師走に本種に出会えるとは思いませんでした。 夏のキノコってイメージなのでこの時期に出会うと違和感がゴイスー。


■ 2018年12月22日 撮影

拡大するとシンネマの先端はやや崩れたような形状になっていました。 流石に発生から時間が経ちすぎてたかな? そう言えばまだ顕微鏡観察していませんでしたね。 古くても分生子くらいは観察できそうだったので採取することに。


■ 2018年12月23日 撮影

見やすいように分生子柄束を1つ切り出してみました。 本来は虫ピンのような形状ですが、こんな感じで帯化したような形状のものも結構見られます。 先端のカリフラワーみたいになってる部分に分生子柄と分生子形成細胞が大量に形成されています。


■ 2018年12月23日 撮影

モコモコしていた部分を油浸対物レンズを用いて高倍率で観察してみました。 分生子柄の先端には扇形に分生子形成細胞が並んでいます。


■ 2018年12月23日 撮影

別の部位を観察してみました。先端が尖った細胞が分生子形成細胞です。 この先端部に分生子が形成されてあの粉っぽい外見になると言うワケ。 分生子は連鎖しないのでフィアライドとは呼びません。


■ 2018年12月23日 撮影

大量に放出された分生子です。不規則に歪んだ楕円形とのことですが、あまり両端が尖ってないような。 図鑑で見る図とは少し違うような気がします。古いからでしょうか?ちょっと微妙なので再挑戦しなくては。

■ 2021年08月28日 撮影

久し振りに見たかも知れません。ずっと雨が降らずキノコはあまり出ませんでした。 ただそれだけではなくて年単位でであまり出会った覚えがありませんでした。 この場所は以前テレオモルフも確認できた場所なので期待はしてるんですが・・・。


■ 2021年08月28日 撮影

拡大してみると落葉落枝を抱くように息絶えたヒグラシから発生していました。 やっぱりヒグラシに出ているほうがアブラゼミよりも多い気がしますね。 これはメスかな?持ってみると非常に軽く、この重さはテレオモルフは期待できないかな?

■ 2021年08月28日 撮影

掲載し忘れていて1年後に載せました。上の写真と同じだったのに・・・。 ただこの宿主も持ってみると軽いです。テレオモルフとの再会はいつになるのやら。

■ 2023年10月28日 撮影

日付を見ると「11月手前にアブラゼミ?」と思われそうですが、日付は間違いではありません。 このアブラゼミは夏の間にすでに絶命し、外骨格の力で幹に張り付いている状態です。 上方で見づらいですが、良く見ると部分的に虫ピン型のシンネマが見えており、 何とかセミハリだと分かりました。
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