■Rhizopogon boninensis (オオショウロ)

■ 2019年07月20日 撮影

収穫があまりなかったこのフィールド。マツの樹下に奇妙な物体を発見。 最初はコイシタケだと思いましたが、触った質感でショウロ属であると確信しました。 しかし表皮の質感に違和感をおぼえ、調べた結果本種であると判明しました。 自然公園の歩道脇に普通に発生していました、その名も「大松露」。どこが「大」なんでしょ?

以前の種小名は黒変する性質から「nigrescens」でしたが、現在はコレに変わっています。 また、非常に厄介なことに某図鑑記載が別種と入れ替わっているので紛らわしいとの情報を頂きました。 具体的にはゴムショウロとされているのが本種であり、オオショウロとされているのは未記載種のようです。 とりあえず本種が本当のオオショウロで良いようです。うーん難しい!


■ 2019年07月20日 撮影

子実体は球形でマツの樹下に埋もれるように発生します。 幼菌時は白色ですが、時間経過とともに褐色に変化し、最終的には黒変します。 しかしこの黒変性については同様の変化をする種が存在するので要注意です。 また子実体表面は平滑で菌糸がベッタリと圧着しているのが特徴です。


■ 2019年07月20日 撮影

断面はこんな感じで印象的なのは外皮の厚さです。妙に分厚いんですよね。 ショウロは近縁種を含めて外皮が薄く、強く圧力をかけるとボソッと崩れることがあります。 しかし本種は強くつまんでみても軟骨質と言うか弾力があります。 最初はグレバの構造の問題かと思いましたが、この断面的に外皮の厚みが原因のようです。


■ 2019年07月20日 撮影

帰宅後にクリーニングしたものを黒バック撮影してみました。 土に埋もれていた部分は白色で、これが元の色合いです。 確かにオオショウロとされていた未記載種と比べて表面の菌糸がのっぺりしているかな?


■ 2019年07月20日 撮影

断面も黒バック撮影。いかにもショウロ属だなって見た目ですね。


■ 2019年07月20日 撮影

グレバはやや褐色みを帯びた白色で、迷路状に孔のあいた小腔室で満たされています。 本種は無印ショウロ同様にヌメリイグチ属に近縁であり、これが管孔の名残りですね。 少しでも子実層面の表面積を広げようとする工夫です。


■ 2019年07月20日 撮影

気になっていた厚い外皮も撮影です。こうして見るとかなり特徴的ですね。 細胞も緻密でしっかりしており、下手に力を加えると外皮のみが綺麗に分離してしまいます。 この写真でもカミソリで切断する際にグレバから少し浮いてしまっています。

少しでも子実層面の表面積を広げようとする工夫です。


■ 2019年07月20日 撮影

グレバがかなり明るい色合いなので成熟度が心配でしたが、顕微鏡観察してみれば心配ご無用でしたね。 グレバを薄くスライスして低倍率で観察してみると、子実層面がしっかり確認できました。


■ 2019年07月20日 撮影

子実層面を拡大してみると無数の胞子が! しかしショウロ属は地下生菌の中でもトップレベルに胞子も担子器も非常に小型な種たちです。 これでは良く分からないので油浸対物レンズの出番ですね。


■ 2019年07月20日 撮影

てことで油浸対物レンズで観察してみたオオショウロの子実層面です。 無数の胞子を蓄えた担子器が確認できます。当然ながら担子菌類ですからね。 シスチジアは存在しないハズなので、左に見えるものが胞子を付けない偽担子器ってヤツでしょうか? 4胞子性の担子器が多いようですが、多いものだと6個ほどの担子胞子を形成するようです。


■ 2019年07月20日 撮影

担子胞子を観察してみましたが、この倍率では小さすぎる・・・。


■ 2019年07月20日 撮影

なのでコチラも油浸対物レンズ前提のようですね。 担子胞子は楕円形で長いもので8μm、短いもので5.5μm。 太さは3〜3.5μmの範囲内に収まるものが大半のようです。 また内部にサイズに差はあれど油球を2つ含むようですね。 まさか小さいなと思っていた無印ショウロよりも小さいとは・・・。


■ 2019年07月22日 撮影

追加で観察する必要があるかも、としばらく部屋で放置していました。 結果ご指摘を頂き結論が出たので、処分しようと思っていたらこんな色合いに。 外皮は見事に黒変し、グレバも麦松露のような色合いに変化していました。 しかしグレバはあまり暗色にはならないようですね。

情報が少ないので食毒不明としておきます。食べられるのかな・・・? たまに「山の松露は当たる」なんて俗説を耳にしますし、もしかすると有毒かも知れませんよ?

■ 2023年11月19日 撮影

ガガンボ氏主催で木下氏ととある地下生菌を探すオフ会を開催。 すると短時間で木下氏が怪しい地下生菌を発見。まさかもう発見か? と思われましたが、断面を見た結果本種でした。 ちなみに目的のブツは未発見で終わりました。


■ 2023年11月19日 撮影

掘り出した状態です。初発見のものも図鑑のものも結構色付いていますが、 これは子実体が露出することで刺激で変色しているためで、 今回のように完全に地面に埋もれた状態だと真っ白ですね。


■ 2023年11月19日 撮影

切断してみるとガガンボ氏も隣から「オオショウロですね〜」と仰るほどにオオショウロでした。 肉厚の外皮黒変するグレバ、見れば見るほど特徴が出ています。 前回は7月の夏真っ盛りの発見でしたが、晩秋でも出てるんですね。
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