★Rhizopogon roseolus (ショウロ)

■ 2020年11月23日 撮影

初発見は2009年。今思えば本種がキノコ人生で初めて出会った地下生菌でしたね。 我が国では古くからその存在を知られており、ネタバレですが食用キノコとして有名です。 漢字で「松露」と書くのは、昔はマツの精気が集まった物と思われてたのが由来。 発生時期が早春と晩秋の2回で、浜辺や山地のクロマツ林に発生するのが特徴です。 いつもは春の砂浜で探すのですが、秋の海岸生キノコを捜索中に期せずして遭遇しました。

典型的な外生菌根性の地下生菌であり、クロマツの根の表面に菌糸を展開します。 これがマツの成長を助けるので、菌糸をわざと接種すると言うことも行われます。 また分子系統解析の結果、遺伝的にはヌメリイグチに近縁だと言うことも分かりました。 進化の段階で地上に潜り、管孔を形成しない方向へと進化したのだそうです。


■ 2020年11月23日 撮影

ちなみに初めて秋に発見したんですよね。今まではビックリするほど春見付けています。 そして恐らく過去最大サイズでした。意外と秋のほうが調子良かったりするのかなぁ?


■ 2020年11月23日 撮影

クロマツの松ぼっくりと並べてみるとこの通り、直径6cmはあります。 大きいものでも4cmくらいなので、これは相当大きいですね。


■ 2020年11月23日 撮影

基本的には地中に埋まっていますが、成長するにつれて地表に露出します。 表面は黄褐色で所々赤みを帯びます。また傷付けると赤変するのが特徴。 種小名の「roseolus」が「淡紅色に」と言う意味なのはこの赤変性に由来します。


■ 2020年11月23日 撮影

引っこ抜いてみました。半分くらい埋まっているので、掘り出すとよりサイズ感が分かります。 埋まっているので地下部のほうが少し押し潰されているように見えます。 また地下部は根状菌糸束を纏っており、これがマツの根に繋がっています。


■ 2020年11月23日 撮影

切断してみました。グレバは若い頃は下の子実体のように真っ白ですが、成熟すると徐々に黄褐色に変化します。 白さを失い成熟してしまったものは「麦松露」と呼ばれ、食用価値が下がります。 そして写真の上の子実体のように暗色になってしまったものは食用価値が無いと思って下さい。 むしろ食べたら腹壊しますよ?


■ 2020年11月23日 撮影

グレバは微細な小腔室からなるスポンジ状で、この内壁に担子器が形成されます。 内壁が少しラメって見えるのは表面に担子器と担子胞子が形成されているからですね。 ちなみにイグチの管孔が変化してこのような構造になっています。進化ってすげぇな。


■ 2020年11月23日 撮影

成熟した子実体ではグレバが溶け出して周囲に胞子を撒き散らします。 軟質になったグレバをスライドグラスに乗せると簡単に胞子を観察できます。 この胞子をわざとマツの苗に接種することで成長を助けることができます。


■ 2020年11月23日 撮影

胞子は淡褐色でやや紡錘形っぽくも見える長楕円形。 2個の大きな油球と小さな油球を少数内包していることが多いです。 特筆すべきは胞子が6〜9μm X 2〜3μmと小型である点です。 地下生菌としては小さいですが、見た目に反して高い耐久性を持つことが分かっています。 長期間周囲に宿主となるマツが居なくても耐えるための戦略でしょう。

すでに上でネタバレていますが、上品な香りを持つキノコとして珍重されてきた美味な食菌です。 ただし本当の意味で美味しく頂けるのは先述の通り内部が色付いていない若い個体のみ。 内部が溶けていなければ褐色でも食えますが、料理が流出した胞子で汚れます。 香りは爽やかな果実臭で、加熱しても干しリンゴのような不思議な食感です。 オススメはお吸い物、茶碗蒸し。通は塩焼きにして酒のツマミにどうぞ。

■ 2009年03月15日 撮影

初めて発見したショウロ、思い出深いですね。すぐ擬人化思い付きましたし。


■ 2009年03月15日 撮影

掘り出すとこんな感じです。まるで小さなジャガイモのような歪んだ球体です。 海岸のショウロは撮影環境に難があり、直射日光がハレーションを引き起こしちゃいます。 ちょっと遮光とか考えないとダメかもですね。


■ 2009年03月15日 撮影

切ってみました。内部はやや黄色い白色。非常に細かいスポンジ状です。 これがショウロのグレバ。熟すと少しずつ色付き始め、やがて褐色に変化します。 最終的には自己消化を起こして内部が溶け出し、胞子を拡散します。 この色ならまだギリギリ食べられる状態かな?

■ 2009年03月15日 撮影

そう、当然砂浜なので砂地に生えてるんですよね。いや、埋まってる・・・? 地上に顔を出した個体は既に熟していることが多いので、ねらい目はやはり地下です。 一株見付けたら、道具を用いて周囲を浅く掘り返してみましょう。根気が必要ですよ。 中から白いしっとりとした個体がボコボコ出てきたらラッキー!

■ 2009年03月15日 撮影

こんなに分かりやすく顔を出していることもあります。どうです?探してみませんか?

■ 2009年03月28日 撮影

もう旬が過ぎたかと思いましたが、再度海岸を訪れると・・・ありますあります。 熊手で乾いた砂を掘り返すと、中から新鮮なショウロがポロポロと出て来ました。 ただし同時に老菌も多く見られました。もう発生は長くなさそうです。

■ 2009年03月28日 撮影

地面を掻いた瞬間、気が付いたのですが、遅かったー!ちょっと傷付いちゃいました。 熊手と比べてもその大きさが分かるのではないでしょうか?かなりの大物でしたね。 何せ石にしか見えないものですから、顔を出した自然体は探すのに根気が要ります。


■ 2009年03月28日 撮影

掘り起こしてみました。大きい!これくらいのサイズならば文句無しです。 これだけ表面が白ければ、中はまず間違い無く真っ白で食べ頃と思って良いです。 せっかくなので、塩焼きにして頂きましたが、これは酒のツマミになるなぁ・・・。

■ 2010年03月13日 撮影

今年初の更新なのですが、その嬉しさよりも画質が気になってしまう結果に。 デジカメと画像縮小ソフトを変えたら、えらい写りが良くなってしまいました。

■ 2011年03月19日 撮影

早朝から知り合いの方のたっての希望で一緒にショウロ掘りに行ってきました。 東日本大震災の直後なので海岸が怖く、短時間で切り上げて早々に引き上げましたけど。 海岸なので日光を遮る物体が無く、変な色に写ったので若干補正かけてます。


■ 2011年03月19日 撮影

引っ張り出してみました。右側に見えてるのが根のような根状菌糸束です。 雨が少なく少し心配でしたが、乾燥した砂浜でも元気な姿を見れました♪

■ 2011年03月19日 撮影

これは流石に食べるには古いですね。地表に出て表皮がひび割れています。

■ 2011年03月19日 撮影

割ってみました。内部は真っ白でスポンジのように細かな穴が開いています。 ・・・でも真っ白なので良く分かりませんね・・・。ちなみにこれくらいが食べ頃。


■ 2011年03月19日 撮影

別個体ですが一緒に紹介。いわゆる「麦松露」の時期を過ぎ、食用不可状態になりました。 もう少し経つと胞子が流出します。内部は無数の小腔室が集まりスポンジ状になっています。 これが食べた時にシャリシャリと言う干しリンゴ様の食感を生み出すのですね。

■ 2011年03月19日 撮影

地表付近にあったので引っ掻いちゃいました・・・。照れて赤くなってます。

■ 2012年03月10日 撮影

カメラ買い替えましたので、色合いが少し自然になったんじゃないでしょうか? ショウロは遮光物が無い浜辺なので、どうしてもハレーションを起こすんですよね。 今年はコ○リで幅の調整できる金属製の熊手を購入したので発見率大幅UPでした。 ちなみにこの個体、直径が5cmあります。超大型個体が多かった気が・・・。

■ 2014年03月15日 撮影

ここ数年大規模な発生が無かったショウロ。今年は当たり年だったようです。 個人的にはそこまで美味しいとは思わないんで写真だけ撮って帰りましたが。

■ 2014年03月15日 撮影

これ完全にエイリアンの卵ですよね。間違い無く何かが産まれると思います。 表皮が破れたのか内部のスポンジ状のグレバ部分が露出してしまっています。 確かにこれが元イグチの管孔の名残だと言われると分からなくもないですね。

■ 2014年03月15日 撮影

やっぱりショウロと言うとこの色合いですよね!ほろ赤い感じがタマラナイ!

■ 2019年03月09日 撮影

顕微鏡を使い慣れてきて、良い加減そろそろ胞子見ろよと思い訪れた砂浜。 いつもは見付かるのにこの年はボウズ。諦め半分で立ち寄った内陸にて発見。 この場所はいつもシモコシを見に来る若いマツ林です。


■ 2019年03月09日 撮影

砂浜でばかり見ていたので普通の土から出ているのは意外ですね。 でも逆に砂に汚れていないので妙に綺麗です。


■ 2019年03月14日 撮影

最終段階ではグレバが真っ白で未成熟だったので、ケース内で少し追培養しました。 その後良い感じにヘタって来たので再度断面を見ると少し成熟したっぽいので観察開始です。 と言うかもう少し遅れたら傷んでしまってたっぽいので危なかったですね。 黄色かった表皮が赤変しているのが分かります。


■ 2019年03月14日 撮影

グレバは最初真っ白でしたが、成熟すると黄褐色へと変化してゆきます。 白さを失い写真のような成熟してしまったものは「麦松露」と呼ばれ、食用価値が下がります。 そして暗色になってしまったものは食用価値が無いと思って下さい。 グレバは微細な小腔室からなるスポンジ状で、この内壁に担子器が形成されます。


■ 2019年03月14日 撮影

こんな外見ですが立派な担子菌類ですからね。ちゃんと担子器が存在します。 名前は似ていますがセイヨウショウロ属は子嚢菌類なので全然違いますよ。


■ 2019年03月14日 撮影

何か担子器の先端の胞子が妙に多いような気がしていたら、間違いじゃないんですね。 本種の担子器は先端に6〜8個と言うやたら多くの胞子を形成するのだそうです。 奥にも胞子があるので見間違いかと思っていました。


■ 2019年03月14日 撮影

コレを見るために花粉症を押してショウロ探しに出たようなものです。 以前は地下生菌と言うジャンルに興味がなかったのですが、今となっては胞子が見てみたい! その思いで意地になって探した甲斐があったと言うモノ! それでもまだ顕微鏡を使いこなせてはいないので、その後よりキレイな写真が撮れてますけど。

■ 2020年11月23日 撮影

TOP写真の子実体を発見するキッカケになったのはコレでした。 地面から何か「にゅっ」と突き出していて、見逃すのが無理ってくらいに凄まじい違和感でした。 先端部分は表皮が裂けており、完全にエイリアンの卵でしょコレ。

■ 2020年11月23日 撮影

こんな感じでショウロって結構黄色いことがあるんですよね。 キイロショウロか?と期待するんですが、本種は普通にこんな色になります。 赤く変化する機会が無いと黄色が色濃くなるって感じかな?


■ 2020年11月23日 撮影

かなり大きく齧られています。 タイムリーなお話ですが、ヤマトヒナガヒラタハナアブと言う海岸性のアブが ショウロ食に特化していると言う研究結果が2021年1月に発表されました。 論文をざざっと読みましたが、食跡孔が良く似てるんですよね。 しかも時期も11月と言うことで、ひょっとするとひょっとするのかも知れません。
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