■Rhytidhysteron rufulum (リティディステロン ルフルム)

■ 2022年08月06日 撮影

属名に和名が存在しないため、読み方がこれで合っているかは正直自信ありません。 「リチジステロン」としている例もありますね。 冬虫夏草の素晴らしい収穫があったフィールド、そのオフ会にて期せずして出会いました。 マメ科の枯死した植物体から発生する小型の子嚢菌類です。 フジやニセアカシアの材から発生することが多く、今回もフジの莢果(豆ざや)に出ていました。 種小名の「rufulum」は「赤みがかった」の意味ですが・・・子実層の色かな?

本種はどちらかと言うととある菌寄生菌の特異的な宿主と言う特徴のほうが有名かも? それはヤドリビョウタケ。古くなった本種に寄生する子嚢菌類です。 当然居ないか調べましたが、寄生は見付けられませんでした。 すぐ近くでヤドリツブチャワンタケも出ているので、冬虫夏草を含めて寄生菌類が優秀な場所かな?


■ 2022年08月06日 撮影

何かフジの豆ざやにつぶつぶした何かが付いているなと思ったら小さな子嚢菌類が沢山! 子嚢盤は閉じた唇形で外側は暗青緑色。光の加減かと思ったら本当に青緑色でした。 成熟すると口を開くように子実層面が露出します。 図鑑では大きく見えますが、平均して長い方の幅で2mm程度とかなり小型。


■ 2022年08月06日 撮影

小さくて撮影が難しいので採取して帰宅後に詳細を観察しました。 子実層面が露出した子嚢盤は楕円形で、何か既視感があるなと思ったらアワビですね。


■ 2022年08月06日 撮影

超マクロ撮影してみました。子嚢盤の外側は上述の通り青緑色を帯び、表面には唇のようなシワがあります。 子実層面は赤さびでも出来ているかのような色と粗面で、おおよそ子嚢菌類の子実層面に見えません。 種小名の「赤みがかった」はこの色のことを指しているんでしょうか? と言うかこれどうやって胞子を飛ばすんだ?


■ 2022年08月06日 撮影

と言うことで顕微鏡観察してみました。するとやっぱり子実層面が褐色の物質に覆われています。 そのため子嚢先端が空気中に向けられています。 地下生菌化しているワケでもないですし、一応風で胞子を運ぶ種だと思うんですけど・・・。


■ 2022年08月06日 撮影

子実層面を拡大すると子嚢と側糸がビッシリ綺麗に整列している様子が分かります。 子嚢胞子の数は子嚢1つにつき8個で一直線に並びます。 そして側糸ですが、妙に綺麗に並んでいるなと思ったら偽側糸と言う構造なのだそうです。 本来は基部から発生する側糸ですが、子嚢殻の上から成長したものを偽側糸と呼ぶそうです。 つまり本種はチャワンタケ型と言うか開かれた子嚢殻と言うワケですね。


■ 2022年08月06日 撮影

凄く胞子が綺麗に並んでいたので撮影。成熟段階の違いが良く分かります。 偽側糸が子嚢の間を流れるように埋めているのが面白いですね。


■ 2022年08月06日 撮影

子嚢胞子を油浸対物レンズで観察してみました。超楕円形で褐色隔壁が3個あり、4細胞が繋がったような構造です。何かの幼虫を彷彿とさせます。 そう言えばテングノメシガイの仲間にこんな胞子作るヤツが居たような気が。


■ 2022年08月06日 撮影

面白かったのがメルツァー試薬による呈色反応です。 子実層面を覆う褐色の物質子実層上部が全体的にアミロイド反応を示します。 子嚢が全く変色していないところを見ると呈色しているのは偽側糸のようですね。 このような色付き方は初めて見たので観察していて面白かったです。

極めて小型のキノコであり、食毒不明であると同時に普通に食用価値無しでしょう。 仮に無毒でも食べるに値しません。ヤドリビョウタケを探す指標くらいに思っておきましょう。 それに本種そのものも魅力的な特徴を持つ種なので、フジの樹下とか探してみては?


■ 2022年08月06日 撮影

オマケでマクロ撮影した成熟したもの(左)と未熟なもの(右)でシメたいと思います。 偽側糸があると聞いて不思議でしたが、右の子嚢盤の形状を見て何となく納得。 これ朽木なんかに良く出るコーヒー豆みたいな偽子嚢殻を持つ子嚢菌類に近い構造なんですね。
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