■Russula albonigra (シロクロハツ)

■ 2023年09月16日 撮影

感想続きで被写体の少なかった2023年の夏。そんな時に癒やしの大群生を与えてくれました。 夏の真っ盛りにブナ科広葉樹林地上に発生する大型のベニタケ属菌、 和名がゲシュタルト崩壊している「白黒初」です。 何だこの和名?って感じですが、凄く的確だったりします。 掲載されている図鑑が無いので存在を知りませんでしたが、同じ個体を見た方に教えていただきました。 やや標高の高い場所に生えると聞きますが、今のところ低地の里山で普通に見れています。

子実体の形状や変色性などからクロハツモドキに近縁であると考えられます。 むしろクロハツモドキの白色系統と言われても個人的には納得するレベルですね。 ちなみに種小名の「albonigra」は「白くて黒い」と言う意味です。大混乱ですよ。


■ 2023年09月16日 撮影

子実体は典型的なベニタケ型で、背の低い傘中央が凹む見慣れたお姿。 傘はややくすんだ色合いですが基本的には白色で、一回り小さいシロハツって感じです。


■ 2023年09月16日 撮影

ただ明らかに違和感があります。点々と真っ白な子実体に混じって部分的に褐変した傘があるのです。 これはシロハツ系の大型ベニタケでは見られない光景であり、この段階で本種だなと確信しました。 傘表面は平滑ですが、艶消しと言うか少し粉っぽい質感があります。


■ 2023年09月16日 撮影

裏返してみるとひだも柄も白色。あと印象的になのは極めて密なひだでしょうね。 このひだの詰まり方はクロハツモドキやシロハツモドキなどのモドキ系と良く似ています。


■ 2023年09月16日 撮影

さて、ここまで白色要素はありましたが、黒色にまつわる特徴がありませんでしたね。 それもそのはずで、本種は傷付くことでその強烈な黒変性が分かるからです。 全体的に白い子実体からは想像もできないほどに傷付くと短時間で真っ黒に変化します。 クロハツモドキにも同様の変色性があり、ひだの密さからも近縁なのだろうなと思える光景です。 ちなみに指でつまんだ柄も変色してますね。


■ 2023年09月16日 撮影

この強烈な黒変性は子実体全体に存在するため、 子実体を切断すると断面がみるみる黒くなります。 黒変するベニタケの仲間は複数存在しますが、 本種は全体が真逆の白色なので変色が一段と際立つんですよね。

情報が少ないですが、近縁種を考えると最低でも生食は中毒するでしょうね。 猛毒菌も近縁種にあるので、見付けても食べないよう注意が必要でしょう。 変色してない状態では可食のシロハツに見えなくもないのでそれも注意かな?


■ 2023年09月16日 撮影

発生状況はこんな感じで、誇張無しに足の踏み場も無いくらい出ていました。 発生範囲も広く、菌輪を描くどころか一定の範囲にドバッと見境なく出ているような状態。 キノコの少ない時期にこれだけの群生が見れると、出会った甲斐があると言うものです。

■ 2016年09月22日 撮影

初発見は仕事場近くの里山で、白くて大きな子実体が非常に目立っていました。 発見当時は「色の白いクロハツモドキ」くらいに思っていましたね。


■ 2016年09月22日 撮影

このように住宅街の中にある神社林内に大群生を作っていました。


■ 2016年09月22日 撮影

傘は最初白色で時間経過に伴って徐々に黒みを帯びて来ます。 しかし真っ黒にはならず、最後まで下地の白はずっと残り続けます。 種小名の「白く黒い」も名は体を表す分かりやすい命名だと思います。


■ 2016年09月22日 撮影

ひだは密で白色で密度的にクロハツモドキそっくり。 和名も「シロクロハツモドキ」と言われても違和感無いくらい似ています。 実はこれ爪でとある文字を書いた直後で、ここからわずか十数秒経つと・・・。


■ 2016年09月22日 撮影

このように速やかに黒変します。あの白さからは想像できない強い変色性です。 注目すべきは赤色を経ずに直接黒変する点。これポイントだと思います。 黒変するベニタケの仲間の代表のクロハツ系とは明らかに違うのです。 またその変色の速さには何度も撮影のやり直しを余儀無くされましたね。
■ 2016年09月22日 撮影

これだけ変色性が強いのに、この程度の老成では真っ黒になりません。 最早完全に朽ちたと言える状態までなれば真っ黒になるんですけど。

■ 2023年09月16日 撮影

2023年に出会った大群生。新鮮な子実体が多かったですが、それに混じってこんなものが。 一見すると分かりませんが、これは朽ち果てたシロクロハツです。 老成して組織が崩壊すると一気に黒変が進み、こんな状態に・・・。 辛うじて傘の周囲に見える条線でベニタケの仲間だなってことは分かりますね。

■ 2023年09月16日 撮影

傘が褐変した子実体を見ると、どうも乾燥や落葉の体積を経験しているものが多いようです。 外部刺激によって変色しているのかもですね。

■ 2023年09月16日 撮影

まるで株立ちのような大きな子実体の集合体を発見! 傘が少しグレーになっているのは万遍無くほんのり黒変しているためでしょう。 それでもクロハツモドキと比べると全然薄いですね。

■ 2023年09月16日 撮影

2016年の初発見時は生憎の雨模様で傘の質感や本来の色が分かりづらかったので、 良い気候条件で状態の良い子実体を多数見れて良かったです。 一通り調べた感じだと、クロハツモドキに似てはいるものの子実体の大きさや変色性に差異が見られ、 そんな単純な話では無いなと言うのは良く分かりました。今度は胞子とかも見てみましょうかね?
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