★Russula ryukokuensis (リュウコクヒメベニタケ)

■ 2017年10月07日 撮影

発見された地名から「龍谷雛紅茸」と言う仮称が付いていましたが、後に「龍谷紅茸」に変更となりました。 シイやカシなどの入り交じる雑木林の斜面に散生しているのを観察会で発見。 以前から少し話題にはなっていましたが、じっくり見ると興味深いキノコです。 最初はヌメリガサの仲間だと言われていましたが、ベニタケ属であることが判明! gajin氏がひだ断面および胞子の染色を行ったところ、間違い無いと言う結果が。

最大の特徴は「小さい」と言うこと。このサイズはベニタケ属としては恐らく最小クラスだと思われます。 また腐朽した材から出ることもあり、初発見がそのような状況だったため材上生だと思われていました。 実際には属的にも菌根菌だと思われます。 和名のマイナーチェンジはヒナベニタケには近縁ではないことが判明したためです。


■ 2017年10月07日 撮影

子実体は極めて小型で平均して直径5mm程度。稀に大型化しますが、それでも1cmくらいです。 あまりにも小型のため子実体が透けるため、形状や色からもヌメリガサ科のように見えてしまいます。 しかしマクロ撮影してみると傘の形状や全体的なバランスなどが完全にベニタケ科です。 特に傘の周囲の溝線が非常にベニタケチックだと個人的には思います。

不明種なので食毒不明ですが、これ仮に猛毒でも致死量に達しない・・・? それこそ目に入れても少し痛い程度の大きさなので、食用不適も甚だしいでしょうね。

■ 2011年06月26日 撮影

ひだは黄色ですが、傘が薄いので色が透けているだけにも見えます。 ヌメリガサ?と言われた所以はこの透明感のあるオレンジの柄ですね。 表面には微細な毛が生えているのがマクロ撮影で何とか確認できました。

■ 2013年07月15日 撮影

左の個体で傘の直径が5mm程度しかありません。探す身にもなって頂きたい・・・。 粒状線とまでは行きませんが、これは明らかにベニタケ属の姿ですね。 中央部が濃色で浅い漏斗状になるのも実に本属らしい典型的な姿ですしね。 分かる方だと傘表皮とひだとの境目も本属っぽいなーと思われるのでは?

■ 2014年06月08日 撮影

撮影技術の向上が伺える一枚。この透明感のある柄がもう堪りませんね。 この子実体も傘の直径が5mm程度。ひだの枚数すら数えられそうな小ささです。

■ 2014年06月08日 撮影

初発見時は材上生と思われていたのも納得。これ埋れ木の上に出ています。 中には腐朽材のかなり上方に発生していることもあり、一見材上生に見えます。 しかし明らかに針葉樹材な上に周囲の地面にも普通に生えているのです。 恐らくオオキノボリイグチ同様に周囲の木に菌根を作り、材の内部を登るのでしょう。 胞子の散布効率を考えるなら小型の本種が高い場所を目指すのは当然かな?

■ 2014年06月14日 撮影

まぁしかし見事にコケとツーショットが多い。子実体が赤いので映えますね。

■ 2014年06月29日 撮影

幼菌がイッパイ生えてました。この赤い小さい玉みたいなのが幼菌です。 平均して直径2〜3mmって感じでしょうか?目に入れても少し痛そう。 小さくとも潰れた饅頭形の傘はベニタケ科の幼菌らしくてしっくり来ます。

■ 2014年06月29日 撮影

マクロ機能で凄く頑張りました・・・。ピントが合わなくて苦戦しましたよ。 砂粒の大きさと比較すれば本種が如何に小さいかお分かりになるかと。 しかしこれだけ小さくてもちゃんと傘周囲に溝線があるのは流石ですね。

■ 2017年07月14日 撮影

材上生ではないのが良く分かりました。沢の土の斜面に大群生していました。 まぁ大群生とは言っても子実体が小さすぎて群れてるって感じじゃないですけど。

■ 2017年07月14日 撮影

カメラにもレンズにも慣れて来ました。同じマクロレンズでも写りが全然違います。 ぶっちゃけISO感度を弄ることを覚えただけです。F値を大きくできますし。 お陰で全体にピントが合わせられました。カンペキにベニタケの傘ですね。

■ 2017年07月14日 撮影

斜面に生えていることが多いので下から見上げて撮るのが難しいキノコです。 今回は運良くオーバーハングしている場所だったので綺麗に撮れました。

■ 2017年07月14日 撮影

この日のベストショット。成菌の隣に愛らしい虫ピンのような幼菌があります。 本種は適度に間隔を開けて発生するので隣り合わせの構図は貴重かもです。 遠くから見付ける事が困難なので、目線の高さに斜面が無いと発見は難しい!

■ 2018年09月23日 撮影

そう言えば今までさんざん「ベニタケベニタケ」言ってきましたが、肝心のアレを見ていません。 そう、胞子です。ベニタケ科と言えば胞子に特徴があるじゃないですか。 でそれを見ようと初夏くらいから結構何回か訪れてたんですが全然出てくれませんでした。 最終的に見付かったのは9月。まぁ10月にも見てるんですが、随分焦らしてくれましたね。


■ 2018年09月23日 撮影

顕微鏡で胞子を観察してみました。もうすでに特徴が見えています。


■ 2018年09月23日 撮影

油浸対物レンズを用いて観察。胞子は類球形で直径は7μm程度のものが多いようです。 そして何と言ってもベニタケ科と言えば胞子がアミロイドと言うのが最大の特徴ですからね。 メルツァー試薬で染色するとこのように胞子全体が青く染まり、特に表面の疣状突起が濃く染まりました。 これを見るとベニタケの仲間なんだって実感が湧きますね。

■ 2020年07月05日 撮影

※オンマウスで変化します

雨が少なくキノコが不作だったこの時期。仕方無く沢筋まで下りてキノコを探しました。 水があれば・・・と思ったのですがここにもキノコはあまり出ておらず。 しかしマツの立ち枯れにまさかの群生を発見!しかも自分の背より高い場所!


■ 2020年07月05日 撮影

当然ですが周囲に伝って来れるような地面は無く、完全に独立した立ち枯れ材です。 この中を菌糸が進んだとは!本種の上昇志向には頭が下がる思いです。 この子実体の小ささも可能な限り菌糸を遠くへ伸ばし、高い場所でも子実体が安定するための工夫でしょうか?
■図鑑TOPへ戻る