■Russulaceae sp. (コイシタケ)

■ 2018年01月13日 撮影

2018年一発目の遠征は静岡県での地下生菌観察会。凄いメンバーでした。 最初のフィールドでO先生がフライング採取されていた「小石茸」です。 その名の通り小石のような小さなキノコ。写真でしか知りませんでした。 ブナ科樹木、特にナラ類の樹下でほぼ地上に露出した状態で見付かります。 近縁種にミヤマコイシタケが存在しますが、担子器や胞子に違いがあります。

以前はキツネタケ属に近縁な種として学名「Hydnangium carneum」とされていました。 しかしその後の研究によってベニタケ属に近縁説が濃厚となりました。 そのため現在は種小名はおろか属名すらも未決定の学名無し状態です。 このページも学名表記が「科名 + sp.」となっているのはそのためですね。 ちなみに「H. carneum」はモノホンを観察しており、別種なのは明らかです。


■ 2018年01月13日 撮影

子実体は大きくて2cm。普通は直径1cmほどのあまり型崩れの無い球体です。 表皮は白色ですが、成長すると亀甲状にひび割れ黄色い下地が見えます。 白い石や木の実にしか見えず、キノコだと思って視界に入れないと見過ごします。

香りを放って動物を寄せ、食べさせる性質があると言われています。 地下生菌は胞子散布に野生動物の手を借りる種が多いみたいですしね。 そうなると無毒の可能性がありますが、現状では食毒不明とします。

■ 2018年01月13日 撮影

落葉のすぐ下に居た子実体。ちょっとゴツゴツしていて余計に石っぽいです。 あまり落葉などの堆積物が無い根や階段と言った段差部分に良く出ます。 ヤラセで置いたと疑われそうですが、これが本種の発生状態そのままですよ?


■ 2018年01月13日 撮影

成長によって表皮のひび割れが進み、白い部分が点々と存在する状態に。


■ 2018年01月14日 撮影

帰宅後に持ち帰って黒バック撮影しました。実にコイシタケって感じです。 これ下に固定用の針を刺して撮影しているんですが、刺す時に違和感が。


■ 2018年01月14日 撮影

断面はこんな感じ。小腔室はハラタケ類の地下生菌としてはかなり微細です。 それよりも凄いのはその子実体の硬さ。切るのに唸り声上げるレベルです。 「小石」って別に大きさだけを指してるワケじゃなかったんですね・・・。 子実体を長持ちさせ、動物に発見される可能性を上げる知恵なのでしょう。 基部にはごくわずかですが柄の名残りである無性基部が確認できますね。


■ 2018年01月14日 撮影

グレバを拡大してみました。小腔室内は淡黄色の胞子がたっぷり。


■ 2018年01月14日 撮影

Canon製「MP-E65mm F2.8 1-5×マクロフォト」で更に倍率を上げました。 すると小腔室の内壁にへばり付く担子胞子を写真に捉えることができました! 場所によっては胞子の形状だけでなく、表面の質感も辛うじて確認できます。 本種は担子器1つにつき1つの担子胞子を付ける1胞子性なのも特徴ですね。


■ 2018年01月14日 撮影

胞子は球形で表面は先端が丸い長いとげに覆われているのが特徴です。 確かに言われてみればこのトゲトゲした胞子はベニタケの仲間っぽいか? でもそうなるとやっぱりあの有名な試薬を試してみたくなりますよねぇ・・・。


■ 2018年01月14日 撮影

・・・あれ?メルツァー試薬で染色したんですが、オレ何か間違ったかな。 ベニタケ科はアミロイドの性質があるのでとげの先端が青く染まるハズです。 と思ったら何と本種はベニタケに近縁なくせに非アミロイドなんだそうです。 って言うかもうそれベニタケの仲間である必要性が全く無いでしょうが! 近縁なミヤマコイシタケはちゃんとアミロイドなので、本種が異質なようです。

■ 2018年01月13日 撮影

どろんこさん発見の大型の子実体。それでも直径1.5cm。これでも大きい方。 ところでこの周囲の青いのってもしかしてビスソコルティチウム属の菌糸?
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