■Sarcoleotia globosa (サルコレオティア グロボサ)

■ 2019年02月16日 撮影

海外からの移入種であり自然環境下ではないため掲載は少し迷いました。 しかし国内で見られるのは確かなので思い切って載せてみました。 冬季に販売されるエリカ属のポットに発生するとウワサされている小型の子嚢菌類です。 外来種のため当然ながら和名は存在しません。 近年になってtwitterでその存在を知り、実況帰りに園芸店へ赴いたらアッサリ見付かってしまいました。

海外で見付かっているこの学名の種と同種と判断しましたが、近縁種の可能性もあるので要注意。 現地の情報ではエリカ属植物との関係は触れられていません。 むしろ貧栄養、酸性土壌、焚き火跡コケの移植地と言った発生環境が挙げられています。 園芸環境的には太字にした後ろ2つくらいが怪しいんじゃないかと。


■ 2019年02月16日 撮影

子実体はズキンタケに似て類半球形の頭部と細い柄から成ります。 全体的に暗灰褐色で子実層面はより暗色。 こんな外見ですが近年になってテングノメシガイと遺伝的に関係が深い種であることが判明しました。 他人の空似と言うべきか・・・人は見かけによらぬもの、ですね。


■ 2019年02月16日 撮影

子実体を白バック撮影してみました。 頭部は半球状で端が反り返っているだけなので、ちゃんと裏側が存在します。 頭部表面には子嚢がビッシリ並んだ子実層面が形成されています。 柄はささくれており、言われてみれば滑らかな柄を持つズキンタケの仲間とはかけ離れていますね。


■ 2019年02月16日 撮影

かなり軟質なので子実層を切り出すのに苦労しました。


■ 2019年02月16日 撮影

子嚢と側糸はこんな感じ。子嚢胞子は子嚢内部に8個入っており先端に詰まっています。 側糸は糸状で根元付近で2つに分岐します。


■ 2019年02月16日 撮影

子嚢胞子は形状にかなりバラツキがありますが、基本的に一方に重心の寄った紡錘形で見慣れない形状です。 中にはボーリングのピンのように一方に偏ったような形状のものも見られます。 また内部には無数の油球様内包物が見られます。


■ 2019年02月16日 撮影

油球を除去してメルツァー試薬で染色した子嚢胞子です。 未染色時には全く見えませんでしたが中央付近に明確な隔壁が存在するのが分かります。 ただ隔壁は1つではなく、観察はしづらいですが最大で4つくらいは存在するように見えます。


■ 2019年02月16日 撮影

子嚢をメルツァー試薬で染色すると、肥厚部が薄いので分かりづらいですが頂孔アミロイドのようです。

毒性がある種とは思えませんが、仮に無毒でも食不適でしょう。 小型で土臭く、肉質も極めて脆いため、簡単に崩れてしまいます。 ただキノコの少ない冬季に園芸店で簡単に見られる種なので、エリカの花とセットで良い癒やしにはなってくれるかと。

■ 2019年02月16日 撮影

別のポットに出ていた幼菌です。鹿沼の粒の大きさからもその小ささがうかがい知れるかと。 確かにコレを見るとテングノメシガイ系の幼菌に良く似ていますね。
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