★Scleromitrula shiraiana (キツネノヤリタケ)

■ 2012年05月03日 撮影

キツネノワンと合わせて2012年の目標としていた種、とうとう発見できました。 写真は初発見の知人宅の畑。養蚕学習のため残されたクワの樹下でした。 春にクワの樹下にのみ発生すると言う珍妙なキノコ、和名は「狐槍茸」です。 キツネノワンとは同じ科のクワ仲間でも属は異なり、形状も全く異なります。 しかしその生態はほぼ同じ。時に同時に見ることもできる相棒的存在ですね。

本種とワンは有名なクワの病害菌。クワの花期に胞子を飛ばして雌花に感染します。 症状はキツネノワンと同じで、菌核化したクワの実から翌年キノコを生じます。 唯一違うと言えば発生時期。ヤリはワンの最盛期を過ぎた頃にピークを迎えます。

このページ、クワ菌核病にお困りの方が検索で見に来られることが多いです。 この病気で困ってググって来られる方が多いので、対策を書いておきましょうかね。 なので対策を一応書いておきますが、「白化した果実を落花前に除去する」コレに尽きます。 菌核は薬剤耐性が高い上に、本体が地下のため植物体の殺菌はほぼ無意味。 しかし一度子実体を発生させた菌核は役目を終えるため、 仮に地面に1つも落とさせなければ1〜2年で根絶できることになります。 まぁ隔年で出る可能性も無くはないので、周囲の地面の土を完全に入れ替えればなお良いでしょう。


■ 2012年05月03日 撮影

子実体は棍棒状で頭部と柄からなります。アミガサタケを細くした感じですかね? 全体的に黄褐色で、頭部は不定形ですが、基本は縦方向の隆起があります。 ただこのようなシワ状だったり小型の個体だと平面的だったりでバラバラです。 柄は細長く、基部はほぼ真っ黒になっており、地面の下で菌核と繋がっています。

大量にあれば食べれなくもなさそうですが、味が悪くて食不適のようです。 目に入れても痛くないようなキノコなので、見れただけでも運が良いと言うことで一つ。

■ 2012年04月28日 撮影

遺伝子分析用の標本の採取を依頼されたため手袋持参で慎重に採取しました。 でもいざ掘ってみると深い深い。何本も途中で千切れてしまって苦労しました。 そしてキレイに掘り出せたのがコチラ。柄ぇ長っ!?こんなに長いとは・・・。 ワンが地表付近に菌核があるのに対し、ヤリは随分深く潜っていたのですね。 一番下に見える塊が菌核化したクワの実。クワの形状をあまり留めていませんね。

■ 2012年05月03日 撮影

以前見た時はキツネノワンしか無かった深山の野生のクワの樹下。やはり出ました。 ワンより遅れて1週間。最初は気付きませんでしたが目を凝らすと足元にいっぱい! 良く見ると右の方にワンも写ってます。この光景こそキツネペアの醍醐味ですね。

■ 2013年05月18日 撮影

キツネノヤリタケは小型の上に細く、非常に撮影が難しいキノコだと思っています。 寝そべって撮影しまくってたらちょうど日光が差し込み、偶然撮れた一枚です。 右の個体が縮小版アミガサタケみたいに表面積が増えてて愛おしさを感じます。

■ 2014年05月03日 撮影

ええと。これ我が家から徒歩で、徒歩で2分の場所です。どう言う事ことなの。 子供の頃から何度も何度も通った近所の道沿いの木は何とクワの雌株でした。 昨年秋に初めて気付いて確認してみると下はヤリタケ天国。あの努力は一体。

■ 2014年05月03日 撮影

やっぱキツネノワンとのツーショットは本種の醍醐味ですね。

■ 2014年05月03日 撮影

今までピントが合わず綺麗に撮れたと思った写真が大半パァだった本種。 今年はフォーカスを練習して来たので良い写真がイッパイ撮れましたね。

■ 2014年05月03日 撮影

本種の面白さは子実層面のある頭部の形状が子実体によってバラバラなこと。 なので撮る側としてはいつも姿が異なるので撮影していて新鮮なんですよね。 中にはほとんどしわが無く平面的な物もあったり。撮ってて楽しいヤツです。

■ 2014年05月10日 撮影

綺麗なペアを発見。子実層が白っぽく、透明感があるモノと雰囲気が違います。 こうして見ると頭部も中心に支えの芯が入っている様子が確認できますね。

■ 2016年05月04日 撮影

相方のキツネノワンの不調に反して本種は例年以上の大爆発を見せました。 もうクワの樹下一面に槍が突き出ているかのような光景。これは壮観です。 所々にワンが混じっていますが、やはりもうピークは過ぎていますね。

■ 2016年05月04日 撮影

恐らく今まで本種を撮ってきた中でのベストショットです。自慢したいマジで。 高さ2〜3cmの小さな小さな世界の姿ですが、こんなにも幻想的なんですよ?

■ 2017年05月06日 撮影

毎年見られる峠道のフィールド。でも今年はちょっとした問題発生です。 何と切られた大きなスギの枝がフィールドに捨てられてしまっていました。 おかげで地面が見えなくなり、発生にも支障が出てしまったようです。 何とか地面が露出した場所に発生が見られましたが、来年が少し心配。

■ 2018年04月15日 撮影

今年は非常に暖かかったのでGW頃に見頃を迎える本種もすでにこの状態。 雨が少なかったのが心配でしたが、流石は菌核を持つ種、乾燥には強いです。

■ 2018年04月21日 撮影

新しく発見したクワの樹下はコンクリ上に薄く表土が覆っているような環境です。 しかし用水路のおかげで常時水分が多く、菌核の成長に都合が良いようです。 とここでほぼ菌核が露出している子実体を発見!これは初めて見たかも。 恐らく深く潜ることができないためにこのような発生状態になったのでしょう。


■ 2018年04月21日 撮影

深く潜った子実体しか撮影したことがなかったため、持ち帰って黒バック撮影。 ワンと比べると菌核はやや角張った感じで、ワンより萎縮したように見えます。 また果実内のクワの種子がそのまま残っていました。これも見たこと無いかも。

■ 2018年04月21日 撮影

TOP写真に差し替えようかと思った美しい発生状態。パーフェクトですね。 本種はなかなか「これだ!」って生えかたをしてくれないことが多いので。


■ 2018年04月21日 撮影

せっかくなのでと黒バック撮影用に持ち帰っり、クリーニングしました。 残念ながら一番左の1本は土中で割れた菌核のもう一方から出ていました。


■ 2018年04月21日 撮影

頭部を拡大してみました。やはりやる気の無いアミガサタケみたいで好き。 「とりあえず表面積広げとくか」って程度のやる気は感じられる形状ですね。 しかし不思議なのが何と言ってもキンカクキン科に似つかわしくないこの外見。 この科の多くが椀形の子嚢盤を形成するので、本属菌は異端と言えます。 またキツネノワンとは依存する植物が同じなのにこの外見の差。ホント不思議。

■ 2018年04月28日 撮影

gajin氏をお誘いしてのGW子嚢菌類観察会。そのターゲットの一つが本種でした。 この場所は普段から湿り気が絶えず、キツネペアの生育には適している模様。 そのためかこの場所では両種共に、特にヤリの立派な子実体が目立ちました。

■ 2018年04月28日 撮影

この日一番立派だったであろう子実体達。このサイズは見たこと無いかも。


■ 2018年04月28日 撮影

子実層面のある頭部も立派ですが、それよりも柄の質感が今までとは別物。 まるで針金のように硬く締まっており、色も暗色で見るからに頑丈そう・・・。

■ 2018年05月05日 撮影

gajin氏に顕微鏡を頂いた当日にも撮影したのですが、その時はアダプタ未所持。 なのでより鮮明な写真を撮るためにアメジストの詐欺師氏とのオフでも標本採取。 子嚢は明らかにワンよりも小型ですね。子嚢細胞自体もあまり長くないです。


■ 2018年05月05日 撮影

胞子もかなり小型の印象。不規則な長楕円形で両端に油球らしきものが見えます。


■ 2018年05月05日 撮影

メルツァー試薬で染色すると子嚢も頂孔も共に非アミロイドだと分かりました。 キンカクキン科は多くが頂孔アミロイドの性質があるため、やはり異質ですね。

■ 2019年04月27日 撮影

本来は本種より発生時期が早いはずのキツネノワンがこの年はあまり発生していない模様。 いつもは遅れて出るハズの本種が例年より早い時期にもかかわらず状態の良い子実体が多く見られました。 写真は子実層が未発達の幼菌です。

■ 2019年04月27日 撮影

コチラは成菌。柄も黒さが増し、先端も波打ちが大きくなって見慣れたヤリの姿になっています。 こうして見ると意外と傘の部分に透明感があるのが分かりますね。

■ 2019年04月27日 撮影

ワンとヤリ、どっちのページに載せるか迷った一枚。 どうしても子実体のサイズ的にワンが主役になりがちです。 ですが今回はちょっぴりワンにピントが合っているのでこっちに載せました。 やっぱりこの2種は1枚の写真に納めたくなっちゃいます。

■ 2021年04月24日 撮影

2020年は本種があまり出ず、良い写真が全くありませんでした。 今年こそはと思い訪れると、今度はワンが少ない・・・どうなってんのコレ。 でもヤリはそこそこ出ていたので一安心。何か周期でもあるんでしょうか?
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