■Scutellinia setosa (アラゲコガネコチャワンタケ)

■ 2019年10月05日 撮影

ブナ林帯を歩いていて発見。と言っても実は地元で過去に見たことがありました。 でもその時は時間が無くて撮影も採取もしなかったんですよね。なのでリベンジです。 秋に腐朽の進んだ広葉樹材上に発生する極めて小型の子嚢菌類「荒毛黄金小茶椀茸」です。 見た目と属名、そして和名からも分かりますがアラゲコベニチャワンタケ属菌です。 ちなみに上にチラッと見えてるのはシラウオタケ。ブナ林って感じ。

国内の図鑑で「S.erinaceus」として掲載されているものと同種と思われます。 某チャワンタケのサイト様で知りましたが、年代によって記述がちぐはぐでどれがどれか分からないようです。 一応「子実体が小型で黄色」と「胞子表面が平滑」が本種の特徴と考えて良さそうです。 海外の図鑑の記載内容とも一致しました。


■ 2019年10月05日 撮影

子嚢盤は極めて小型で、大きいものでも直径2mm程度にしかなりません。 雰囲気は確かにアラゲコベニチャワンタケに似るので、このサイズの違いは結構衝撃です。 大きさもですが色も結構違い、鈍黄橙色と表現されます。 アラゲコベニは和名の通り赤みが強いですが、本種は肉眼でも明確に黄色っぽさを感じます。


■ 2019年10月05日 撮影

もう少し拡大してみました。ミニチュアで黄色いアラゲコベニチャワンタケって感じですね。 ただ子嚢盤が小さいワリに縁部の剛毛が長いため、相対的に剛毛が目立つのが特徴。 にしてもこの材、シラウオタケにウツボホコリが共存している良い材ですね。


■ 2020年10月05日 撮影

帰宅後にマクロレンズで撮影してみました。1.5mmをここまで拡大できるのはありがたい。 小型でも密集しているので見栄えが良いですね。


■ 2019年10月05日 撮影

もう少し拡大してみました。剛毛は褐色でかなり頑丈。 幼菌時はこの毛が子実層面お覆うように内側に向いています。 そして子嚢盤が成長し椀が開くと毛も外側に向きます。 何のために生えてるんでしょうかね、この毛。子実層面を守ってるんでしょうか? どうしてもまつげに見えちゃうんですよねコレ。


■ 2019年10月05日 撮影

子実層面を顕微鏡観察してみました。 こうして見ると色素は側糸先端と子実層の基部に集中していることが分かります。 またこの倍率でも綺麗に子嚢内部に8個の胞子が1列に並ぶのが分かりますね。 左下に見えるのは剛毛の生え際です。


■ 2020年10月05日 撮影

もう少し拡大してみました。子嚢より側糸が長いみたいですね。


■ 2019年10月05日 撮影

本種の子嚢盤の色の正体はこの側糸先端の色素だったのですね。 側糸全体に色素を内包していますが、特に先端付近に集中しているようです。 側糸は先端付近で太くなるので、その分色素も多くなるのでしょう。 ただ本当の先端にはあまり色素はなく、やや下に多く含まれています。


■ 2019年10月05日 撮影

子嚢胞子は楕円形で無色。おおよそ22μm×12μmで図鑑の表記と完全に一致します。 また胞子表面が平滑な点も本種と同定した理由の1つでもあります。 厚膜で内部は無数の油球様の内包物で満たされています。


■ 2019年10月05日 撮影

コチラも海外の図鑑との一致を見た、剛毛の基部の構造です。 本属菌は剛毛の付け根が分岐するか否かが同定時に重要になります。 本種は剛毛の基部が分岐して木の根のようになるのが特徴ですので、ピッタリ一致ですね。


■ 2019年10月05日 撮影

剛毛も顕微鏡観察してみました。硬いのも納得、細胞壁がメチャクチャ厚いですね。 ん?「細胞壁」で良いんですよね?「細胞膜」ってレベルじゃねーし。 内部にちゃんと隔壁が見られ、ああ、細胞なんだなって分かります。


■ 2019年10月05日 撮影

メルツァー試薬での反応は非アミロイドで一切青くなりません。

非常に小型の子嚢菌類であり、毒の有無に関わらず食不適です。 味がするほど集めるのも大変でしょうし、多分食ったら剛毛でエラいことになります。 食ったら喉とか口の中が地獄絵図になるんじゃないかな・・・。

■ 2019年10月05日 撮影

小型ではありますが、色合いも形状も群生する感じも非常に被写体に向いているキノコだと思います。 ただ通常レンズではダメですね。マクロレンズ必須ですけど。


■ 2019年10月05日 撮影

室内での黒バック撮影も良いですが、やっぱり自然光で撮ったほうが綺麗ですね。 本種の剛毛は下手すると子嚢盤の直径の半分以上の長さがあります。 そのため子嚢盤が開いていない状態だと子実層面を保護している感が凄いですね。 事実、ゴミなども剛毛に付いていて、子実層面は綺麗なことが多いです。

■ 2020年08月01日 撮影

やっぱりブナ林で発見。以前もブナ材からの発生でしたし。 同じくブナ好きのクロサカズキシメジと一緒に生えていていました。 でも何か白いカビのような菌にヤられたものが多数。 変形菌に感染したものから伝染したように見えます。
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