■Stereostratum corticioides (メダケ赤衣病菌)

■ 2015年04月18日 撮影

春のキノコ探しの道中でメダケのやぶの中に不自然な色合いを発見しました。 近寄ってみると稈(タケの幹)にオレンジ色の変な塊がビッシリ付いています。 これは本で見て知ってました。「せきいびょう」ではなく「あかごろもびょう」と呼ぶのが正解です。 タケ類に発生するサビキン目の担子菌で、ナシ赤星病菌と同じ科に属します。 ただこのテの植物寄生菌類としては病原性はやや低めのようです。

地方によっては「スズメノタマゴ」って呼ばれてるみたいですね。 吸水した状態ではねっとりした外見になり、こねることができることから、粘土のように遊べるとか。 ただこねられた状態でも病原性は健在のため、移動させず手を洗いましょうね。


■ 2015年04月18日 撮影

拡大しました。この表面の黄褐色の塊が本種の冬胞子になります。 冬胞子堆は秋の段階で稈の内側に形成され、そこに作られた大量の冬胞子が表皮を破るように露出します。 その後、冬胞子の塊が脱落し、その内側に感染力を持つ夏胞子が形成されます。 本種は2種の植物間を移動せず、タケ類単独で感染し続けることができます。


■ 2015年04月18日 撮影

更に拡大です。まるで粉のようでキラキラしており意外と綺麗かも・・・?

植物病原菌なので食べれるワケないです。言う必要も無いですけど。 せいぜい粘土の代用品として子供達のおもちゃになる程度ですが、お庭にササがあるようなお宅は要注意。 本種は園芸でも使われるメダケに出るので庭に出たら非常に厄介な病気です。 土中に菌が隠れており有効な薬剤もありませんので一度発生すると根絶が難しくなります。

■ 2016年03月20日 撮影

最近この近辺を歩いていてかなりの分布範囲だと言うことが判明しました。 今年は少し早めに来てみました。でも暖かかったので意味なかったかな? て言うか前回よりも早めに来たんですが前回よりも進行が早いような・・・。


■ 2016年03月20日 撮影

この緑色の表皮を破ってオレンジ色が出て来る感じは綺麗で不気味ですね。 ちなみに私はこの段階では知りませんでした。雨で変貌するってことを・・・。

■ 2016年04月14日 撮影

山間の林道を歩いていてふと足を止めました。メダケの中に何かが居る・・・?


■ 2016年04月14日 撮影

メダケ赤衣病菌なのは分かる。でも今まで見た子実体とは違う雰囲気。 実はコレ雨の直後。ナシ赤星病菌と同じで吸水することで膨張します。 この天ぷらの衣みたいなのが脱落するとその内側に夏胞子が形成されます。

■ 2018年03月31日 撮影

今年も出ました。初発見と同じ場所に今年も変わらず出ていました。


■ 2018年03月31日 撮影

表皮下から吹き出してくるので破れた薄皮が上に乗っているのに注目です。 あくまで病徴は表面的で、葉に対しては害をなさないので植物へのダメージは比較的軽いようです。

■ 2018年03月31日 撮影

植物体を枯らすようなことはしませんが、土壌にも居るので根絶は困難な模様。

■ 2018年04月12日 撮影

毎年見事な大発生を見せてくれる発生地を訪れると相変わらずの頑張りです。 今年はここ以外にも複数地点で発生を確認しました。ホント普通種なんですね。


■ 2018年04月12日 撮影

少し前に雨が降ったので若干膨らんでいます。今回の目的は胞子の観察。 ナシ赤星病菌もそうですが、植物寄生菌類はミクロの世界を見たくなりまして。 適当な感染部位を幾つか持ち帰り、観察後に追培養することにしました。


■ 2018年04月12日 撮影

オレンジ色の部分の表面を適当に掻き取って観察すると・・・あ、冬胞子だ。 ナシ赤星病菌で見たことのある2胞子性。凄まじい胞子の量ですね。 何か鞭毛のような物や丸い突起が出来ているように見える部分があります。

■ 2018年04月18日 撮影

実は今回観察したかったのはコレ!一週間ほど追培養すると変化が起きました。 メダケの稈に密着していた冬胞子塊が自然と剥がれ落ち始めたのです。 図鑑通りだとこの裏側に夏胞子が形成されるとのこと。実際に見てみると・・・。


■ 2018年04月18日 撮影

2胞子性の冬胞子に付着している明らかに質感の違う胞子。これが夏胞子。 この写真を載せているサイトがあまり無いので自分の目で見たくなったのです。 夏胞子で感染を広げ、冬胞子で越冬する、何とも巧妙な生存戦略だこって。

■ 2018年05月03日 撮影

ここまでは古い顕微鏡で観察していたので、新しい顕微鏡での観察は今回が初めて。 新しい顕微鏡での練習用標本を探している最中に発見したので持ち帰りました。 冬胞子はもう中がスカスカの物が多く、詰まっているのは1割程度でした。


■ 2018年05月03日 撮影

逆に夏胞子は豊富に形成されており。裏側を掻くと粉状になって落ちました。 しかしこうして新旧の顕微鏡写真を並べてみると性能差を感じますね・・・。

■ 2020年03月15日 撮影

春の子嚢菌類探しの最中に再会。そう言えば顕微鏡観察リベンジしたいなと思い採取しました。 今回はしっかりと黒バック撮影。細い稈ですが色合い的に存在感バリバリです。 大量の冬胞子が薄い表皮を破って出て来ているのが良く分かります。


■ 2020年03月15日 撮影

冬胞子堆を拡大してみました。やっぱコレ「冬胞子塊」って言うほうが正しいみたいですね。 どうも冬胞子堆そのものはもっと下層にあって、見えているコレは冬胞子の塊みたいです。 冬胞子は大型のため、ある程度拡大すると1粒1粒がキラキラして見えます。


■ 2020年03月15日 撮影

実際にオレンジ色の部分を掻き採って観察してみると、冬胞子以外の組織は一切見られません。 と言うことはやはり冬胞子堆と呼べる部位は稈表面だけで、盛り上がっている部分は全て冬胞子と言うことなのでしょう。


■ 2020年03月15日 撮影

ダテに顕微鏡観察練習してないぜ!前と全然違いますね。 胞子の色合いもしっかりとあのオレンジ色が確認できます。 多少なりスキルが上がった、と言うことにしておきたい。


■ 2020年03月15日 撮影

綺麗な写真も撮れたので再度しっかりと解説したくなりました。 冬胞子は2胞子性。サビキン目の冬胞子は双方の一端が尖って紡錘形の種が多いです。 ですが本種は胞子が2つとも丸いため2つくっ付いても楕円形です。 一方の端には冬胞子堆と繋がるへその緒のような構造が存在します。


■ 2020年03月15日 撮影

前回観察時は解禁していなかった油浸対物レンズでの初観察! やはりこの倍率で観察すると非常に細部まで構造を知ることができます。 こうして見るとかなり厚膜なんですね。
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