■Syzygites megarocarpus (フタマタケカビ)

■ 2021年10月09日 撮影

秋もやや深まり、キノコの姿も少なくなって来た頃に出会いました。 今までも何度か出会っていますが、少し前に近縁種が話題になったのでしっかり撮影しました。 老成したキノコの上に発生する「二又毛黴」です。 その名の通りケカビ目に属し、本種1種のみで構成された属です。 そのためあえて種小名が省略されていることもありますね。 ちなみに種小名は「巨大な果実の」の意味で、納得の命名だったりします。

分類はケカビ目クモノスカビ科フタマタケカビ属。 外見が似たものに、昆虫から発生し外見の良く似た胞子嚢柄を形成するスポロディニエラ属が存在し、 この菌は私が遠征でお世話になった出川先生が発見に深く関わっている種でもあります。 スポロディニエラは比較的レアですが、フタマタケカビ自体は珍しいものではなく、比較的出会うことができます。


■ 2021年10月09日 撮影

何気無しに見ているとただのカビにしか見えませんが、少し近付くと違和感に気付きます。 単なる菌糸の集合体のようですが、良く見ると先端が変じゃないですか? 表現しづらいですが、先端がポワポワしているように見えますよね。


■ 2021年10月09日 撮影

少し拡大すると先端がパッと開いた線香花火のようになっているのが分かります。 これが本種の最大の特徴ですね。


■ 2021年10月09日 撮影

さらに拡大したところで詳細説明します。本種が「二又」と呼ばれる所以。 それは長く伸びた胞子嚢柄の先端が複数回二又分岐するところにあります。 胞子嚢柄そのものは最大で5cmくらいまで伸びるのですが、分岐するのは本当に先端部分だけ。 線香花火のように見えるというのは喩えではなくマジだったりします。


■ 2021年10月09日 撮影

野外撮影の限界まで拡大してみました。分岐している様子が良く分かります。 胞子嚢柄そのものはほぼ無色透明で、分岐した柱軸の先端に丸い胞子嚢を形成します。 生育途中は淡黄色ですが、成熟すると写真右のように灰青緑色になります。 そのため成熟しきったものは遠目に見て全体的に青緑色っぽくなります。

食不適と言うか傷んだキノコに生えたカビですので、普通にお腹壊すと思います。 雑菌の塊でしょうしね。でも観察する分には非常に魅力的なカビだと思います。 「巨大」と表現されるだけあって構造が肉眼的なのもポイント高いですね。
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