★Taphrina wiesneri (サクラ天狗巣病菌)

■ 2018年04月10日 撮影

おそらく最も多くの日本人が目にしたことの有る植物寄生菌類でしょうね。
撮ろう撮ろうと思っていたのに新年度のバタバタで満開の時期を逃しました。
ともあれ成熟した状態を見れたので、一応は及第点と言うことにしましょう。
ソメイヨシノなどのサクラ類の枝を異常発生させる植物寄生菌類です。
お花見の時に感じた違和感の正体、それはコイツ。ヤドリギじゃないよ?

各種天狗巣病は脇芽の成長を促すサイトカイニンが増えるために起こります。
原因は担子菌類、子嚢菌類、寄生虫など様々ですが、原因物質は同じです。
海外では「魔女のほうき(witch's broom)」と呼ばれます。やっぱ怪異の類。


■ 2018年04月10日 撮影

本種の感染を受けた枝は毎年小枝を無数に生じ、どんどん大型化します。
この小枝が叢生した部分には花がほとんど付かないようになります。
そのため満開の花の中にぽつんと葉っぱだけの塊ができるのです。
このような部位を「天狗巣」と呼びます。確かに鳥の巣みたいですしね。


■ 2018年04月10日 撮影

満開の頃は綺麗な葉なのですが、花が散る頃になると葉に異変が起きます。
別に生育環境は悪くないハズなのに葉が縁から黒変し枯死してゆきます。


■ 2018年04月10日 撮影

枯死した葉を裏返してみると、葉の表の黒変のワリには変色していません。
それどころか枯死部の表面が白色微粉状になっていることに気付きます。
そう、これこそが表面に菌らしさを出さない本種の本体でもあるのです。


■ 2018年04月10日 撮影

帰宅後にCanon製「MP-E65mm F2.8 1-5×マクロフォト」で撮影。
すると表面に霜が降りたような透明感の有る粉状の物体が確認できます。
ここを切り出して切片を作成し、顕微鏡で観察すれば、ようやくお出まし。


■ 2018年04月10日 撮影

葉の裏側に並ぶ見覚えの有る細胞・・・そう、これ実は子嚢なんです。
天狗巣病菌と呼ばれるものはヤマツツジ、ウラジロモミ、アスナロなど様々。
しかしこれらは担子菌サビキン目に属し、担子器を作るものばかりです。
ですが本種は植物体表面に直接子嚢を作るれっきとした子嚢菌なのです。


■ 2018年04月10日 撮影

コチラは子嚢胞子。不規則な楕円形で、なぜか大きさも不揃いです。
子嚢盤を作るような子嚢菌類とはやや縁遠さを感じる特徴ですね。
ちなみにこの胞子、酵母のように出芽して出芽胞子になります。
この段階でようやく感染力を持つあたりただの子嚢菌類ではない感じ。
大きさが不揃いなのは出芽によって個々が小さくなったためでしょうか?

葉の裏側に現れる以外は常に植物体の枝内部に居り、食えるわけないです。
本種で特筆すべきは何と言ってもその分布の広さと防除の難しさしょう。
もうご存知でしょうが、場所によっては本種に感染してない樹が少数派なレベル。
桜の名所では本種の防除に力を入れていますが、楽な作業ではありません。
感染部位は最終的に枯死するため、胞子の飛散を防ぐためにも切除します。
しかしどうしても残しが出るため、この作業を複数年継続実施する必要アリ。
本種は著しくサクラの観賞価値を下げるので「ヒトの心の毒」でしょうか?

■ 2018年04月10日 撮影

ソメイヨシノへの感染が多いですが、このように他品種にも感染します。
ただちに影響が出るものではありませんが、不格好さは否めません・・・。
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