■Tolypocladium sp. (サキブトタマヤドリタケ)

■ 2018年04月30日 撮影

実は以前幼菌は見ていましたが、成熟した子実体を見るのはコレが初めて。 京都での地下生菌オフにてK.Y.氏が発見、その後近くで便乗発見できました。 まだまだ情報不足の珍菌「先太玉宿茸」!確実にこの日のハイライトでしたね。 地中のツヅレシロツチダンゴおよびその近縁種を宿主とする菌生冬虫夏草。 冬の早い時期から発生が始まり、春頃になると成熟し子嚢殻を形成します。 ちなみに発見者はこの日同行したK.Y.氏だったりするんですよね〜何と言う贅沢。

本種はまだ発見例が少なく、詳しいことが分かっていないレア種です。 関東型と関西型があると言われ、この子実体は関西型のようです。 ただこれはどうやら別種の可能性もありそうなので、研究が待たれますね。


■ 2018年04月30日 撮影

子実体は全体的にオリーブ色。ただし、これは落葉に埋もれていたためです。 地上に露出すると暗緑褐色になり、色合いのせいで発見難易度が上がります。 先端には子嚢殻が形成されます。埋生ですが、そのワリに突出して見えます。


■ 2018年04月30日 撮影

少し掘ってみるとアッサリ宿主が露出しました。基本的に浅い場所に居ます。 宿主は黄色菌糸を持つツヅレシロツチダンゴ近縁種。以前見たのも同じでした。


■ 2018年04月30日 撮影

掘り採り成功!変な形状の子実体だなぁと思ったら2個体が癒着してました。 ツチダンゴが黒く見えますが、これは表面の菌糸が剥げた状態なので誤解無きように! ここでは詳しく調べられないので標本を採取して帰宅後に色々と調べました。


■ 2018年04月30日 撮影

帰宅後にクリーニングし黒バック撮影してみました。和名に納得の形状ですね。 子実体はまさに「先太」。先端に向かうほど少しずつ太くなって行きます。 宿主のツチダンゴは表面の菌糸が剥げて暗灰青色の外層が見えています。 宿主の深さで柄の長さは異なりますが、基本的に短いのが助かります。


■ 2018年04月30日 撮影

結実部はこんな感じです。子嚢殻は埋生ですが先端は結構突出します。 柄と結実部の境界はハッキリせず、下方に密度が低くなっていく感じです。 また成長の加減で表皮がひび割れ、だんだら模様になることがあります。


■ 2018年04月30日 撮影

別の角度から見た結実部です。この形状が如何に異様かがお分かりになるかと。 異様に短い子実体は無駄を極力省いた合理的な形状なのかも知れませんね。 暗色になった先端部の上から更に子嚢殻が出来るのでこんな色になります。 関東型は結実部がよりハッキリとタンポ型になり、ミヤマタンポタケに似ます。


■ 2018年04月30日 撮影

分裂前の子嚢胞子を観察できました!糸状で64個の二次胞子に分裂します。 ただ両端に近いほど二次胞子が長く、特に両端の2つは弾丸形で尖っています。


■ 2018年04月30日 撮影

コチラは二次胞子に分裂した状態。円筒形です。

かなり小型の冬虫夏草であり、発見は2009年ですし、現状では食毒不明です。 特に関東型と本家関西型は別種の可能性が高く、となると混在していますからね。 ただどう考えても食不適ですし、薬効も不明なので鑑賞が主となるでしょう。

■ 2017年12月30日 撮影

年末に奈良県で行われた地下生菌観察会でまさかの冬虫夏草が出ました。 ちなみに発見はこの時もやっぱりK.Y.氏。菌を愛し、菌に愛されていますね。


■ 2017年12月30日 撮影

未熟ですが結実は始まっている模様。先端の結実部は暗緑褐色になってます。 結実部がデコボコしているのは子嚢殻が形成され始めているためですね。 この段階から一度菌糸が覆い、そこにやや突出した子嚢殻が形成されます。

■ 2018年04月30日 撮影

Y.K.氏がこの日初めて発見した子実体。とても菌生冬虫夏草には見えない!


■ 2018年04月30日 撮影

Y.K.氏作成の断面です。柄が極端に短く、子嚢殻のでき方も何かいい加減な感じ。 とりあえず自分は本種を「何かやる気が感じられない」と良く言っています。 もちろん自分はこう言う突出した子嚢殻が大好物なので本種も大大大好きです!

■ 2021年04月24日 撮影

地元で春の菌生冬虫夏草を探していたら、何かやたら小さな冬虫夏草のようなものを発見。 この段階では普通にヒネたハナヤスリタケだと思っていましたが・・・。


■ 2021年04月24日 撮影

何気無く掘り出してみたら宿主がツヅレシロツチダンゴ系だと? ハナヤスリタケならアミメツチダンゴ(広義)のハズ・・・。


■ 2021年04月24日 撮影

帰宅後に黒バック撮影してみました。流石に古くて胞子は噴出しませんでしたね。 しかしやっぱり見た目はハナヤスリタケ似。 撮影していた頃は全く本種だと言う可能性に気付けず、ずっと悩んでいました。


■ 2021年04月24日 撮影

正体が分からずに思い切って真っ二つに切ってみると、何と宿主のツチダンゴに硬質の外皮が。 この写真をTwitterに投稿したところ、K.Y氏よりサキブトではないか?との指摘を頂きハッとしました。 確かにサキブトの宿主は硬質外皮を持つツヅレシロツチダンゴの仲間だ! まさか地元初発見だとは思いませんでしたよ。

■ 2023年04月18日 撮影

白水氏とその同行者様で訪れた地元の菌生冬虫夏草の発生坪。 春型タンポタケやハナヤスリタケで盛り上がる中、 白水氏がハナヤスリタケを探すために落ち葉を退けた場所に何か質感の違う冬虫夏草を発見。 その色と子嚢殻の感じからすぐに本種だと気付きました。まさかの大発見ですよ。

■ 2023年05月03日 撮影

しんや氏とのGW冬虫夏草オフ。しんや氏のリクはマルミアリタケで、私からのリクが本種でした。 既に発見して地元でも見付けている種をなぜ私がリクったかと言うと、胞子観察のためです。 4月に地元で見たものは胞子観察できず、2018年以降一度も胞子が見れていなかったのです。 しっかりと観察したかったので案内して頂いたと言う流れですね。


■ 2023年05月03日 撮影

「先太」と言う和名が与えられているだけあって見事な先太りの子実体です。 タンポタケモドキもこんな形状になりますが、この子嚢殻の突出は本種ならではの特徴。 京都で最初に見たものは腐植の下にあって黄色かったですが、実際にはこれくらい黒くなります。

■ 2023年05月03日 撮影

胞子を吹いていないけどそろそろ吹きそうなちょうど良い感じの子実体を発見。 この1個体のみ採取させて頂くことにしました。


■ 2023年05月03日 撮影

実は少し前にしんや氏が本種が硬質外皮の黒いツチダンゴから発生しているように見える写真をTwitterに投稿。 ひょっとすると別種か?と私が勝手に盛り上がりましたが、単にツヅレシロツチダンゴの菌糸が剥げただけと判明。 確かに実際に採取してみると宿主の周囲に白色菌糸が確認できました。お騒がせして申し訳ございませんでした。


■ 2023年05月04日 撮影

帰宅後にクリーニングしたものを黒バック撮影してみました。 クリーニング中に土と一緒に菌糸は脱落してしまい、最終的にはこんな見た目に・・・。 これが自然界でも起きていたと言うワケですね。

ちなみに胞子観察はこの段階で済んでいますよ。 クリーニングは水を使用しますが、吸水すると乾燥時に一気に胞子を吹いてしまうことが多いです。 なのでクリーニングは胞子観察後に実施することをオススメします。


■ 2023年05月04日 撮影

貴重な標本をムダにはしません!無事サキブトタマヤドリタケの子嚢胞子撮影に成功しました。 子嚢胞子は糸状で260μm前後で記載の範囲に収まっています。 一番左の1本は未発達のようですが、他は数えてみるとちゃんと64個の二次胞子でした。 外見は関西型ミヤマタンポタケに似ていますが、こうして見るとミクロ的にはしっかり別種ですね。


■ 2023年05月04日 撮影

油浸対物レンズで分裂後の二次胞子を観察してみました。 1つ1つは円筒形で長さは3〜7μmと倍以上の開きが見られます。 本種は子嚢胞子の両端付近ほど二次胞子が長くなる傾向が見られます。 また両端の2細胞だけは弾丸形になります。

■ 2023年05月03日 撮影

驚いたのがコチラ。宿主が露出して子実体発生の様子が丸見えになっています。 ツヅレシロツチダンゴの黒色の硬質外皮が破れて子実体が伸びて来ているのが確認できます。 しかも一部つぶつぶして見えるあたり子嚢殻も形成しているようです。 宿主の外皮が亀甲状にヒビ割れる様子と合わせて、かなり貴重な光景が見れた気がします。 コレ見ると確かに黒色ツチダンゴに見えますよね?

■ 2023年05月03日 撮影

発生量はかなりのものでしたが、発生範囲はかなり局所的で、 少し離れると全く見当たらなくなりました。恐らく宿主の性質によるものなのでしょう。 蚊の猛攻に耐えての観察でしたが、とても有意義なフィールドでした!
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