■Tylopilus otsuensis (コビチャニガイグチ)

■ 2020年09月21日 撮影

多くのニガイグチ属同様にアカマツ・コナラ林に発生する大型のイグチです。 和名は「媚茶苦猪口」。聞き慣れない響きの「媚茶」は日本の伝統色です。 大型種なのですが、色が地味ここに極まれりって感じなので中々目に入らないのが玉に瑕。 ありきたりすぎてスルーしがちになってしまい、2020年にやっと満足の行く被写体に出会えました。 ちなみに種小名の「otsuensis」は「乙」ではなく、地名の「大津の」の意味です。

外見的に良く似た種にオクヤマニガイグチが存在します。 オリーブ系の同属菌でパッと見は似ていますが、部位ごとに見るとかなり違いがあります。 またオクヤマは稀だと言われており、実際に私もそうだと思えるイグチに出会ったことがありません。


■ 2020年09月21日 撮影

媚茶はPC的には「■ #716246」と表現で、実際全体にそのような色合いをしています。 文字で表現すると暗オリーブ色〜オリーブ褐色であり、凄い地味で緑色っぽいキノコと覚えておくと吉。 傘表皮はビロード状で粘性もツヤも無く、部分的に色ムラが出来ることが多いです。 なおピンク色は降り積もった胞子ですね。自然の胞子紋です。


■ 2020年09月21日 撮影

柄は傘とほぼ同じ色で表面に網目は無く、ニガイグチ属らしく表面に暗色の縦条紋が見られます。 管孔は白色でやや黄色みを帯びますが、全体的にほんのりと紅色を帯びるのが特徴。 これは隣の傘に降り積もった胞子の色を見ると分かるように、胞子がピンク色だからですね。 また管孔は傷付くと帯紅褐色に変化するのも特徴です。 またニガイグチの仲間としては珍しく・・・もないですが苦味が無いです。 これらは酷似したオクヤマニガイグチと見分ける際に必要となるポイントです。

苦味も毒も無し。ボリュームも満点なのですが、食用価値無しだそうです。 苦味の無いニガイグチの仲間には美味しい種もあるので、ちょっと残念ですね。

■ 2010年07月10日 撮影

旧TOP写真です。本種は夏になると欠かさず見るレベルの一般的なイグチです。 ですが「またコビチャか〜今回は良いか!」でずっとスルーしていました。 比較的時間が経ってから気付き、何種類か普通種と呼べるキノコを狙っていました。 本種もその1つであり、何とか差し替えに耐え得る子実体に出会えました。


■ 2010年07月10日 撮影

この写真がちょっと気に入らなかったのは色が変に写ってしまったことです。 ホワイトバラスの設定を誤って異様に青い写真になってしまっていたのです。 写真屋さんにお願いして色調補正かけまくって何とか見られるレベルになりました。 ただ実際の色合いよりもかなり彩度が落ちた写真になっています。

■ 2010年07月10日 撮影

幼菌は更にオリーブグリーンが強いですね。にしても地味ぃ。 これは生えてても見過ごしちゃいますね。普通にスルーしそうになりました。

■ 2013年07月15日 撮影

このフィールドでは毎年単生ながら立派な大型個体を安定して見ることができます。 地味で自然に溶け込んでいますが、この色合いは意外と自然界には無いですね。 なので歩いていると不思議と目に入って来て、見落とすことの少ないキノコです。

■ 2013年09月13日 撮影

相変わらず渋い色合いですね。この個体は今まで見た中で一番綺麗だったかも。


■ 2013年09月13日 撮影

裏返してみると管孔がほぼ真っ白で綺麗!変色性も強く分かりやすいですね。 傘の周囲と言い柄の付け根と言い管孔部がクッキリと分かれていて面白い。 また孔口の径が小さいので平面的で管孔に見えないのも綺麗さの理由かな。

■ 2020年09月21日 撮影

2020年にそこそこの規模の発生に出会い、無事TOPを任せて良さそうな子実体を撮影できました。 この場所はアワタケヤドリタケが良く発生しており、本種が宿主と思われます。 感染個体は良く見ましたが、この時期は寄生菌が大人しくしていました。

■ 2020年09月21日 撮影

TOP写真にしようと思った凸凹コンビ。片や大型、片や普通サイズ。 ただ何か平面的と言うか背が低くて写真映えしなかったのでTOP絵にはしませんでした。 本種は背が低くなると言うか傘が大型化するので相対的に低く見えるタイプのイグチですね。 オオコゲチャイグチとかでもそんな子実体を良く見かけます。


■ 2020年09月21日 撮影

うーん良い色!渋い緑色ですよね。この色合いは何と言いますか「」な感じです。 それでいて胞子紋がピンク色なので、傘の色との対比が面白いです。 また傘中央部が濃色、周辺が淡色になる傾向が良く分かります。


■ 2020年09月21日 撮影

大きいほうの子実体をひっくり返してみました。 これだけ大きいとオオコゲチャイグチかな?とも思っちゃいます。 実際、管孔の色や柄と管孔の境界部分の落ち込み具合とか似てませんか? にしてもこの積もった胞子の色は面白いですよね。 赤と緑は色相環で言うところの反対色(補色)の関係なので凄く目立ちます。
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