★Tylopilus sp. (ミカワクロアミアシイグチ)

■ 2020年07月18日 撮影

初発見は2012年。その後そのフィールドからの発生は無し。 2016年に別の場所で再発見するも発生したりしなかったりで良い状態に中々出会えず。 8年振りに素晴らしい発生に出会えました。 掲載段階で手持ちの図鑑で本種を掲載しているのは2冊のみと言うマイナー種。 和名は「三河黒網足猪口」。本州の一部地域からしか発見されていない珍種です。 雑木林のヒサカキの樹下に発生すると言う特殊な発生条件を持っています。 発見から時間が経っていないため、いまだに種小名が決定していません。

本種を見付けたってことはある程度住んでいる地域が絞れると言う地域性が強い種です。 「日本のど真ん中(自称)」の地域周辺でしか見付かっていません。 また本種とされる種には2タイプ存在するとされ、別種の可能性もあります。


■ 2020年07月18日 撮影

傘の表面は暗紫褐色のフェルト状で、乾燥すると細かくひび割れます。 ただ幼菌の頃はこのひび割れが存在しないので、他の黒いイグチと紛らわしいです。 傘が黒いイグチは何種類かあるので、次に注目すべきは裏側です。


■ 2020年07月18日 撮影

管孔はねずみ色で時間が経つとこのような淡小豆色になります。 また肉の変色性が強く、管孔は指で擦ると瞬時に赤変、その後真っ黒になります。 なのでこんな感じで字が書けますし、連続撮影するとどんどん色濃くなるのも確認できます。 柄は下方に太まり、表面には傘と同色の顕著な網目がありますが、傘との付け根の最上部は白くなります。 また本種最大の特徴はこの柄の網目模様。写真では分かりにくいので別写真で解説します。


■ 2020年07月18日 撮影

子実体を真っ二つに切断してみました。これ切ってすぐは断面が真っ白だったんですよね。 でもカメラを構えている内にどんどんこんな感じで色濃く変色してしまいました。 この赤から黒に変わると言う性質は本種判別の重要なカギです。


■ 2020年07月18日 撮影

イグチの顕微鏡観察は初めてでしたが、切片全然作れないんですけど。 どうもイグチの管孔は乾燥させないと薄くスライスすることができないみたいです。 知りませんでした。顕微鏡を提供して下さったgajin氏に教えて頂きました。 でも厚く切ったせいで担子器が4胞子性であることは確認できました。


■ 2020年07月18日 撮影

担子器を探していたら大型のシスチジアを発見。 シスチジアは種の特定に役立つ場合もある特徴的な細胞なので、一応しっかり観察しておきましょう。


■ 2020年07月18日 撮影

ミカワクロアミアシイグチのシスチジアです。紡錘形で子実層面から突出しています。 長さが60μmほどあり、このテのイグチの中では比較的大型のようです。 外見的に良く似たモエギアミアシイグチの倍くらい大きいことになります。


■ 2020年07月18日 撮影

担子胞子は一方がわずかに尖った楕円形2個の油球を内包するものが多いです。 ニガイグチ属菌の胞子にしてはあまり長細くならないようです。

勿体振りません。なんと本種はイグチ科の中でも数少ないの猛毒菌の1つです。 毒成分は2002年に初めて単離に成功した新規物質のボレチンとイミン化合物。 マウスに対して急性毒性があり、本科としては珍しい神経系中毒を起こします。 しかもどれだけ濃度を下げてもマウスに致死作用を示すため致死量を特定できなかった経緯があるそうです。 注意すべきは本種は発見されて間が無いため知名度が低すぎると言うこと。 今でも「イグチに毒無し」迷信を信じている人が居ないことを祈るばかりです。


■ 2020年07月18日 撮影

奥に見えていた幼菌です。柄が観察しやすかったので解説はコチラで。


■ 2020年07月18日 撮影

この幼菌の重厚感・・・何と言うか「あくタイプ」なんですよねミカワって。 黒いイグチだとオオクロニガイグチやオオミノクロアワタケなど他にも何種類か存在します。 しかしそれらはもっとこう食べれそうな黒さや冷たさのある黒さなんですよね。 ミカワが怪しい雰囲気なのはほんのりと赤っぽいのが理由かも。


■ 2020年07月18日 撮影

ミカワクロアミアシイグチと言うと、とある網目の特徴が有名です。 ですがもう1つ面白い特徴があります。それは下方の網目が弱いことです。 他のニガイグチ属菌でもありますが、柄の中ほど付近から急に網目が顕著になるのです。 特に幼菌の頃はこの特徴が分かりやすいですよ。


■ 2020年07月18日 撮影

本種の大きな特徴と言われているのが二重の網目です。 モエギアミアシイグチでも似たものが見られますが、網目の中に網目が見られます。 そのため網目に奥行きがあるように見え、この感じは一度見るとかなり印象的です。

■ 2012年09月02日 撮影

初発見は地元の里山でした。オオオニテングタケが大発生するシイやカシ主体の照葉樹林です。 そこにチラホラとヒサカキが混じる環境で、ヒサカキのキンカクキンなども見られる場所です。 最初は何か分からず頭を捻ってましたが、思い当たった瞬間に叫んじゃいました。


■ 2012年09月02日 撮影

傘の状態はこの感じがベストコンディションでしょうか? フェルト状でホワホワした感じです。実際、傘の肉質もちょっと軟質ですしね。


■ 2012年09月02日 撮影

裏返して変色を確認してみましたが、小豆色の管孔に赤変性が確認でき本種との確信を得ました。 老成すると明確に小豆色ですが、未成熟だと管孔は薄ねずみ色で白っぽく見えます。 柄は初期から内部が勝手に黒変するようで、大抵引っこ抜くと基部がボロっと崩れて黒い断面が見えます。


■ 2012年09月02日 撮影

二重の網目はこれくらい詰まっていると確認は難しいです。 ここでは柄の最上部は色が薄いことに注目しましょう。

■ 2012年09月02日 撮影

コチラは幼菌です。傘は見事に真ん丸。この色合は本当に独特ですねぇ。 周囲には20株近くの個体が確認でき、古いものは溶けて真っ黒なシミになっていました。 成菌になってからの寿命が短い気がしますね。

■ 2012年09月02日 撮影

これは流石にテンションが上がりましたね。まさか近所にこんなに出ているとは! 本種の和名「三河」はその名の通り初発見が愛知県だった事に由来しています。 以降発見例は多数あるのですが、今の所はウチの近隣都道府県でしか見付かっていない模様。 貴重なキノコが身近で見られることに感謝ですね・・・。まぁ猛毒菌なんですけど

■ 2016年09月10日 撮影

何気に久し振りの再会となりました。前回とは違う場所での発見でした。 以前のフィールドに出なくなって久しかったので感動もひとしお。 ただ今回は若干古く、傘の表面も裏側も痛みが激しかったのが残念ですね。


■ 2016年09月10日 撮影

やや古かったですが、この子実体は二重の網目がかなり分かりやすかったです。 ムラサキヤマドリタケやヤマドリタケモドキのようなシンプルな網目とは明らかに異なります。 網目の中に網目があるのでパッと見でゴチャゴチャしているように見えます。

■ 2020年09月21日 撮影

TOP写真と同じ場所です。2ヶ月経ち、真夏を挟んでまた発生が始まりました。 ちなみにこの数日後、安全圏だと思っていたこの場所でまさかのヤマビルに遭遇。 かなりヒトの生活圏に近いので心配です。

■ 2020年09月21日 撮影

上からでも傘の反り返りで分かる小豆色の管孔で本種だと分かりますね。 モエギアミアシイグチはもっと灰色っぽいので。

■ 2021年07月22日 撮影

菌根菌大不作の2021年初夏。やっと菌根菌が沢山見られたこの日、久々の出会いがありました。 そう、この場所は私が本種を初めて発見した場所なのです。 2012年の発見以降、翌年は残骸を見たのみ。それ以降はパタッと見かけなくなりました。 もう居なくなったのかと心配していましたが、無事に居てくれましたね。

■ 2021年07月22日 撮影

幼菌だけではなく立派な成菌も見られましたよ。 斜面のオーバーハングした場所から出ており、最初はオニイグチ系かと思いました。 しかし近寄ってみると見紛うこと無き網目状の柄。やはり初発見地は特別ですね。
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