■Ustilago shiraiana (タケ黒穂病菌)

■ 2009年06月06日 撮影

タケ天狗巣病を探して訪れた林道脇で何か雰囲気が違う天狗巣病を発見しました。 最初はスルーしていましたが、他の植物寄生菌類を観察ついで近寄ってみて別種だと気付きました。 晩春にタケ類の新芽に発生する「タケ黒穂病菌」です。いわゆる「くろぼ病」の1種です。 クロボキン綱クロボキン目に属し、黒穂胞子と呼ばれる胞子を作るのが特徴です。

最初は天狗巣病様の症状を元に調べてたので本種の名前に辿り着けませんでした。 確かに天狗巣病ではあるのですが、「Aciculosporium take (タケ天狗巣病菌)」とは病徴が異なります。 これ本家タケ天狗巣病の症状に見慣れてないと見落としてたと思います。


■ 2009年06月06日 撮影

タケ天狗巣病菌を採取する目的でしたが、何か雰囲気が違うなと思ってじっくりと見ていて気付きました。 どう見ても新芽付近が黒いです。これは明らかに別種ですね。 ただ、どうみても黒穂病なのに、この時はとある別種を思い浮かべていました。


■ 2009年06月06日 撮影

ただ全体的に病徴部がボロボロになっているものが多く、ちょっと時期が遅かったようです。 それでも入念に調べてみると綺麗な黒穂も残っていました。 ちなみに胞子の量が凄まじく、少し手を入れただけで手や袖が真っ黒になりました。


■ 2009年06月06日 撮影

どうやら黒穂胞子が形成されているのは側芽の部分。 新芽部分が破壊されてしまうためかそこから先は枯死しています。


■ 2009年06月06日 撮影

正直黒いものが見えた時に思ったのは「Heteroepichloë sasae (ササ天狗巣病菌)」でした。 タケ類に天狗巣病を起こす菌の1つで、成長点付近から黒い子座を出現させます。 ですがアレは子嚢殻を形成するはずで、粉状になる種ではありません。 ここでやっと「くろぼ病」と言う可能性に行き着きました。


■ 2009年06月06日 撮影

帰宅後にマクロレンズで撮影してみた病徴部です。 何かボサボサしているなと思ったらホントにボサボサしていました。 この毛のようなものは菌そのものなのか、植物体が変形したものなのか良く分かりません。 このボサボサの隙間に黒穂胞子が詰まっていたのですね。


■ 2009年06月06日 撮影

いよいよ胞子観察です。顕微鏡を通しても分かる胞子の黒さよ。


■ 2009年06月06日 撮影

これが黒穂胞子と呼ばれる本属菌に見られる厚膜胞子です。 この胞子が発芽して担子器を形成し、そこに小生子と呼ばれる担子胞子を形成します。 黒穂胞子そのものは植物体へは感染せず、非常に強固な構造で越冬し、翌年に発芽します。 これ発芽の様子を撮りたかったんですが、家庭じゃ難しそうだなぁ。

当然ですが食不適です。粉ですからね


■ 2009年06月06日 撮影

本種は確かに天狗巣病の症状を呈するのですが、その病徴は結構特徴的です。 パッと見で感じた印象は「スカスカ」だと言うこと。 タケ天狗巣病菌はもっと密集しており、まさに天狗巣病と言う感じです。 ですが本種は全体的に分岐が細かいと言う見た目なのです。 実はコレは本種が通常は成長しない側芽が成長させるために起こる特徴です。 短いままのはずの側芽が全て伸びるため、全体的にスッカスカに見えたと言うワケ。
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