■Verpa digitaliformis (テンガイカブリタケ)
■ 2019年04月27日 撮影 初発見は2010年。その時はそこまで珍しいキノコだと思っていませんでした。 しかしそれ以降、私とgajin氏が毎年チェックしていたにも関わらず発生が完全に途絶えました。 それでも諦めきれずに毎年通っていた甲斐があったと言うもの。実に9年振りの再会を果たしました。 春に各種地上に発生する「天蓋被茸」です。 「天蓋」とは本来は宗教関係の道具のことですが、雰囲気的には「天蓋付きベッド」を想像すると分かりやすいかも。 こんな外見ですが実は縁遠いながらもアミガサタケ科に属しています。 原始的なアミガサタケと言った雰囲気のキノコですね。 近縁種にオオズキンカブリタケが存在します。 ■ 2010年04月17日 撮影 傘は褐色で不規則な浅いシワを生じ、天蓋を被っているように見えるためにこの和名が付いています。 本種に似たオオズキンカブリタケはこの表面に著しいしわを生じるので区別は容易。 傘と柄がありますが本種はチャワンタケに近い種であり、胞子は上面で作られます。 また成長に伴い子実層があばた状に抜け落ちる性質があります。 表面に見える色の淡いつぶつぶは子実層が脱落したくぼみです。 ■ 2010年04月17日 撮影 柄はクリーム色で中空、肉質はかなり脆いです。 傘はまさしくハラタケ型の傘のようになっているので縁が存在します。 ナガエノチャワンタケとアミガサタケを足して2で割ったような形状と表現したら良いのかな? ■ 2010年04月17日 撮影 初発見時は顕微鏡のケの字も知らないペーペーだったので、今回やっと顕微鏡観察できました。 側糸が色素を含んでいるためか子実層自体に色味があります。 ■ 2010年04月17日 撮影 子実層面の先端付近を拡大してみました。 側糸は長棍棒形で淡褐色。先端部は膨らみ、隔壁が確認できます。 色素の顆粒を含むと言う感じではなく、側糸そのものに色があるみたいですね。 ■ 2010年04月17日 撮影 子嚢胞子は楕円形で無色。しかし何かピンボケたように写る・・・何故だ? ■ 2010年04月17日 撮影 油浸対物レンズで高倍率撮影してその理由が判明しました。 本種の胞子は厚膜であり、楕円の両端付近に泡状の付着物が存在するのです。 なので別にピンボケていたワケでも絞り調節ミスってたワケでもなかったんですね。 この特徴は図鑑にも載っておらず、個人サイトを拝見して初めて知りました。 ■ 2010年04月17日 撮影 ちなみに「子嚢先端に蓋がある」と言う記述の意味が分かりませんでしたが、想像以上に蓋でしたね。 肥厚部を持つ子嚢では頂孔を通って胞子が勢い良く噴出されますが、本種はパカッと開く構造なんですね。 ■ 2010年04月17日 撮影 子嚢菌類であればやはりメルツァー試薬での反応を見ておきたいもの。 特に特徴は無いのかと思っていましたが若い子嚢に偽アミロイドの性質があるようです。 成熟した子嚢は無反応ですが、若い子嚢だけは赤色に染まっています。 ■ 2010年04月17日 撮影 念のため子嚢先端も油浸対物レンズで観察しましたが先端部にアミロイドはありません。 染色されていると胞子の細胞膜の厚みが良く分かりますね。 文献によっては可食とされますが、有毒説が有力なのが現状ですね。 有毒だとしても毒性はあまり強くないようですが、手を出すべきではないでしょう。 ちなみに香りを嗅いでみましたが、爽やかな香りとはお世辞にも言えない土臭さでした。 ■ 2010年04月17日 撮影 図鑑では柄が短い個体が多いですが、高さ10cm近い個体がほとんどのようです。 アミガサはこの頭部が表面積を広げるためにあのように進化したと言う事でしょう。 本種は原始的なアミガサタケの仲間なんだぁと思っています。 ■ 2010年04月17日 撮影 抜いてみると内部はやはり空洞でした。ですが厚みが有るので結構重いです。 また内部は完全な中空ではなく、内壁面に白色菌糸がビッシリ生えてました。 科は同じでも別属になっている理由が、少し分かったような気がしました。 ■ 2010年04月17日 撮影 初発見は偶然でした。アミガサタケを探してソメイヨシノの樹下を探していたときのこと。 遠目から何か生えているなってのは見えてたんですが、ハラタケ型のキノコだと思ってました。 近付いて本種だと気付いた時は大興奮! ■ 2010年04月17日 撮影 狭い範囲に数十株はあったでしょうか。かなりの規模の群生でした。 立派な子実体が多く、被写体には困らないのでぶっちゃけ適当に撮ってました。 まさかその後9年間出会えないだなんてこの時は夢にも思っていませんでしたからね・・・。 ■ 2010年04月17日 撮影 傘の拡大です。やはり成熟するとあばたのような無数の微細な丸いくぼみが出来る模様。 子実層面が抜け落ちているのでここには子嚢が存在しません。 ■ 2010年04月17日 撮影 抜いてみると内部は空洞ですが厚みがあるので結構重いです。ただ肉質はかなり脆いですね。 また内部は完全な中空ではなく、内壁面に白色の菌糸がビッシリ生えてます。 科は同じでも別属になっている理由が少し分かったような気がしました。 ■ 2010年04月17日 撮影 サクラの花弁を頭に乗せた子実体。春の風情がありますね。 ■ 2010年04月17日 撮影 コチラもかなり立派な子実体。コレだけ見るとシャグマアミガサタケに近いようにも見えます。 傘の縁部が広がっていると本種っぽいですが、巻き込んでいるとまた雰囲気が違いますね。 子嚢菌類の中でもやや異質な存在だなと感じます。 |