■Vibrissea truncorum (ピンタケ)

■ 2017年05月06日 撮影

湿地や沢筋の水に浸った落枝に発生すると言う不思議な性質を持ちます。 また発生時期がと言うのも特殊。実は世界的に広く分布する種です。 水分を好むキノコとしては最も一般的な種で、探せば簡単に見付かります。 ある程度存在を予想できたのも嬉しかったですね。ところで「ピン」って漢字無い?

カンムリタケやミズベノニセズキンタケと時を同じくして発生する水生キノコ(通称)の1つです。 前述の2種と比べるとより水分の多い流れを好む性質があります。 驚くべきは材や子実体全体が完全に水没していても発生する点です。


■ 2017年05月06日 撮影

傘と柄が有るように見えますが本種は子嚢菌類。頭部表面が子実層面です。 この表面から胞子を飛ばします。大きくても直径2mm程度の極小サイズ。 頭部は半球形で卵黄色。柄は白色で基部に黒い鱗片を付けます。 小型の子実体の柄はほとんど白色ですが、大型だとかなり黒くなります。

言わずもがなですが小型すぎて食用価値無しです。そりゃそうですね。

■ 2014年04月26日 撮影

初発見時の奇跡!ピンタケの上に小さなクモが乗ってポーズ取ってました。 何となく癒やされたので撮影。森では色んな小さな命が生きていますね。

■ 2014年04月26日 撮影

本当に水が大好きな種のようで完全に水没した材からも普通に出ています。 担子菌類には少ないですが子嚢菌類には同様の生態を持つ種は多いです。 しかし左下の子実体なんて結構な深さにあります。息できてるのかな・・・。

■ 2014年05月10日 撮影

しばらく経ってから再度見に行きました。日持ちするようで相変わらずです。 水に浸っているので傷みが速いかと思いましたが、真逆のようですね。

■ 2014年05月10日 撮影

可能な限り拡大しました。ホント水没した材に黄色いピンが刺さってるみたい。 柄の部分に黒色の鱗片が生えているので暗い色合いに見えていますね。 鱗片は柄の下方ほど濃く生えているようで、柄の上の方はほぼ白色です。 頭部は鮮やかな黄色で水分が多いためか透明感があり、極小種でも綺麗です。

■ 2014年05月10日 撮影

沢伝いに歩けばあるわあるわ。あまり珍しい種ではないみたいですね。

■ 2015年04月26日 撮影

デジタル一眼レフを購入して良かったと思えたキノコの一つ、それが本種です。 小さくて上手くピントが合わなかったので真価を発揮したと言う感じですね。

■ 2015年04月26日 撮影

マクロレンズ凄い!このドチビなキノコをここまで拡大することができるとは! 頭部は球形ですがちゃんと柄と頭部の境い目が有るんですね。何か変ですが。 柄が急激に太くなっている辺り球体と言うかドーム状になっている模様。 また柄の表面の黒い鱗片も良く見えます。鱗片と言うか繊維っぽいですが。


■ 2015年04月26日 撮影

この日の探索の大きな目的は本種の胞子を見ることでした。 しかしこの当時は顕微鏡の性能不足で胞子に気付けませんでした。その理由は後述。

■ 2016年05月04日 撮影

ミズベノニセズキンタケをメインで撮っちゃいました、ゴメンねピンタケ・・・。 それにしても本種は水生キノコの中でも一番水が好きなんじゃないかな? いくら水オタクでも他の種は水中に子実層面を作ったりはしませんから。

■ 2017年05月06日 撮影

花びら舞い散る春の沢筋、歩けば毎年恒例のピンタケロードになっていました。 あえて長時間露光にして水の流れが滑らかに見えるように撮影してみました。


■ 2017年05月06日 撮影

結構色が濃い部分があると思って撮影してみたら良い感じに熟していました。 剛毛が生えすぎて柄が真っ黒になってました。これは中々に毛深いですね。 そして撮影中、ファインダー越しの風景に違和感を感じて観察すると・・・?


■ 2017年05月06日 撮影

胞子が飛んでる!本種はてっきり水中に胞子を流すんだと思っていました。 単に条件が合っただけなのかも知れませんが、飛距離は中々みたいですね。 にしてもこの胞子の飛び方、まるで冬虫夏草のソレみたいに見えるんですが。

■ 2018年04月28日 撮影

gajin氏と共に水生キノコの良く出る沢へ。まぁコイツは出会えますよねぇ。 ただ以前と比べると出る材が減ったような気も。安定して出てくれるかな?


■ 2018年04月28日 撮影

拡大してみました。やっぱ可愛いです。幼菌時は子実層面が平らなんですね。 やがて中央部が膨らみあの丸みを帯びた形になるのがこの写真で分かります。 柄の剛毛も常に濃いワケではないようで、どれも上の方は結構白っぽいです。

■ 2018年05月05日 撮影

アメジストの詐欺師氏をお招きした子嚢菌類オフにて計画通り出会えました。 カンムリタケ狙いだった氏も予想以上にその姿を気に入り、かなり嬉しそうだったのを覚えています。 子実体が材ごと完全に水没していましたが、それでもしっかり出ていました。


■ 2018年05月05日 撮影

そう、これが見たかったのです。この大量に吹き出した糸状の物体こそ本種の子嚢胞子。 何とピンタケの胞子は側糸と見間違いそうな糸状になっているのです。 多少の違いはあれどピンタケ属菌はこのような細長い糸状胞子を持ちます。


■ 2018年05月05日 撮影

これでは何が何だか。 実際、初めて顕微鏡観察した時はどれが胞子か分からず、最初は側糸と勘違いしていました。


■ 2018年05月05日 撮影

ただ糸状と言うと冬虫夏草の子嚢胞子を連想しちゃいます。 確かに空中に胞子が舞う姿は冬虫夏草のソレに良く似ていた気がしますね。 しかし本種は1つの細長い細胞から成るため隔壁がありません。 また隔壁が無いため滑らかな曲線を描きます。


■ 2018年05月05日 撮影

子実層を拡大してみました。子嚢内部の胞子が見えています。 側糸は先端がやや膨らみ、内部に黄色い内容物があるので色で子嚢と見分けられます。


■ 2018年05月05日 撮影

メルツァー試薬で染色してみました。 ちょっと分かりにくいですが、先端がピンポイントで青くなる頂孔アミロイドです。 本種の子嚢は先端がやや尖るため、染色領域が青い点のように見えます。 頂孔アミロイドの中でも特に観察しづらい変色の仕方だと思いますね。

■ 2018年05月05日 撮影

撮影時の設定を間違えて露光時間が長いまま撮影したら何だか良い感じの写真が撮れました。 水上水中どちらにも子実体発生が見られ、水分豊富なおかげか状態も良いです。 さらに長時間露光のおかげで水面の反射が美しい模様を生み出してくれました。

■ 2019年04月27日 撮影

実況撮影で立ち寄ったいつもの沢筋。今年は発生量があまり多くありませんでした。 しかも発色もいつもより悪い感じ。今年は外れ年かな?


■ 2019年04月27日 撮影

拡大してみました。幼菌の時はカンムリタケのように柄に透明感があります。 また幼菌だと有柄のチャワンタケ系の名残りが感じられますね。 今年はちょっと発色も悪く、物足りない感じだったので来年以降に期待したいです。

■ 2020年05月03日 撮影

今年はコロナ騒動で中々遠出できず、普段は何度も行かない水生キノコの楽園へ何度も足を運びました。 昨年はあまり良い発生状態を見られなかったのですが、今年は中々良い調子だったご様子。 複数箇所で立派な群生を多数見ることができました。

■ 2020年05月03日 撮影

このフィールドはブナ林帯の中を流れる水量の少ない沢筋です。 周囲に針葉樹が無いためカンムリタケは見られませんが、それ以外はほぼほぼ見られる素晴らしい場所。 左下がピンタケ、中央右がミズベノニセズキンタケの幼菌です。 左上の材には水生キノコとまでは行きませんが多湿な材を好むハイイロクズチャワンタケの仲間が見えます。

■ 2020年05月03日 撮影

TOP絵と差し替えようかと迷ったくらいの綺麗な群生です。 子実層面の発色も良く、遠くからも黄色いドットがハッキリ見えました。


■ 2020年05月03日 撮影

生えている場所が良かったのか、水流による傷みもゴミの付着もほとんどありませんでした。 そう言えば顕微鏡観察が胞子以外であまりちゃんとできてないことを思い出し、サンプルを採取することに。


■ 2020年05月03日 撮影

目的は顕微鏡観察でしたが、せっかく採取したのだからと黒バック撮影しておきました。 やっぱ黒バックはこのように明るい色合いのキノコで絶大な威力を発揮しますね。 こうして見ると柄の毛や、普通は見えない巻き込んだ裏側の子実層面の縁部が見えますね。 カンムリタケに比べて背が低いのは水流対策なんですかね? 本種はカンムリやミズベノニセズキンに比べて水量が多い場所に出ますし。


■ 2020年05月03日 撮影

前回の顕微鏡観察で失敗したなと思っていたメルツァー試薬でのアミロイド反応を確認しました。 今になって通常の子実層も撮っとけば良かったなと若干後悔。 せっかく採取したのに勿体無いことをしました。また来年の宿題ですね。


■ 2020年05月03日 撮影

前回観察時は封印していた油浸対物レンズが今回は使えるので余裕ですよ。 本種の子嚢は頂孔アミロイドですが、青く染まる部位が小さいのでかなり観察しづらいです。 高倍率のレンズじゃないと暗い点にしか見えませんが、油浸ならここまでハッキリ分かります。

■ 2020年05月03日 撮影

ちょっと珍しいものが見れました。ピンタケとカンムリタケ、黄色系水生キノコの揃い踏みです。 何が珍しいんだと思われるかも知れませんが、実は発生環境的に中々一緒に居てくれないのです。 と言うのもピンタケは広葉樹材、カンムリタケは針葉樹腐植から発生します。 よって針葉広葉両樹種が入り交じる沢筋と言う環境が揃わないと見れないのです。 この場所は沢を挟んで雑木林とヒノキの植林が分かれているため見れた光景です。

■ 2021年04月27日 撮影

毎年春になると見に行ってる水生キノコの沢。行けば大体本種には出会えるこの安心感よ。 この水没している様子が実に本種らしい光景だなぁと思ったり。 左に見えるのはミズベノニセズキンタケ・・・と思ったけど別種のほうですね。

■ 2021年04月27日 撮影

完全に水没した材からも出ているのがあちこちで見られます。 良く見ると水面ギリギリに白っぽくボサボサしたものが見えています。 ひょっとしてアナモルフだったり?調べてないので何とも言えませんが。

■ 2021年05月21日 撮影

1ヶ月後に別件で近くを探索したのでついでに見に行ってみました。 まだこの時期でも残ってるんですね。流石に過熟でオレンジ色になってるものが多かったですが。 しかしこの水の流れとの組み合わせ、被写体として最高ですよね。


■ 2021年05月21日 撮影

せっかくなので拡大してみました。子実層面の色を見るに、やっぱりちょっと過熟気味かな? 同日に見れたミズベノニセズキンタケもギリギリ残ってるって感じでしたし。 やっぱり水生キノコの旬は4月半ば〜5月初旬ですね。
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