■Yosiokobayasia kusanagiensis (クサナギヒメタンポタケ)

■ 2022年04月28日 撮影

ignatius氏、K.Y氏、SORA氏、アメジストの詐欺師氏、そして私の久し振りの大人数でのオフ会。 春の菌生冬虫夏草を探して訪れたフィールドで貴重な冬虫夏草が連発! その中でignatius氏が発見した「草薙姫タンポ茸」です。 宿主は土繭を作る鱗翅目の幼虫で、楕円形の土繭に包まれたガの幼虫から発生します。 本来成熟はもっと暖かくなってからなのですが、まさかの4月に成熟個体に出会えました。

以前はCordyceps属でしたが、その色合いからかMetarhizium属菌として長く扱われていました。 確かにやや黄色みの強い子実体や、斜埋生型の傾向がある子嚢殻などがそれっぽいですからね。 しかし2020年に発表された論文にて本種のみからなる新属が提唱されました。 一目瞭然ではありますが、属名の由来は日本の菌学者である故小林義雄氏です。 また、和名については山形県の草薙温泉で発見されたことに由来します。


■ 2022年04月28日 撮影

子実体は淡黄色で遠目に見るとかなり白っぽく見えます。 実際に成熟すると地味な色になるため、真っ白な幼菌のウチに探しておくと楽なんだそうです。 和名に「タンポ」とあるのですが、タンポ度は低く、結実部は結構不定形です。 子嚢殻は先端がやや突出し、色は黄土色。分かりにくいですが若干斜埋生型


■ 2022年04月28日 撮影

掘り出されたものです。今回は斜面に張り出した土の先端付近にあったのでポロッと取れた感じです。 分かりにくいですが、右側の楕円形の塊が土繭で、中のガの幼虫から発生しています。 宿主にはある程度特異性があり、何種類かは宿主が特定できているそうです。 今回は生態写真を撮ることが最大の目的だったので、採取はせずに現地に残しました。

食毒不明ですが、あっても薬効くらいで食用価値はそもそも無いでしょう。 冬虫夏草も酒に入れて飲んだら中毒と思しき症状が出た例を御本人から聞いているので、安易に摂取せぬように! 本種は冬虫夏草の中では比較的珍しい種ですし、そもそも属自体変わって間無しの謎だらけ。愛でるに徹しましょう。

■ 2020年07月12日 撮影

実は本種の生体は初見ではありません。ガガンボ氏が2年前にサンプルを送って下さったんです。 氏の地元で大量発生し、顕微鏡観察がしたいのでお願いして1個体を頂いていたのです。 しかし生態写真が無いためサイトへの掲載は見送っていました。 そして2021年に現地へお邪魔するはずが、コロナ禍で遠征は中止。お預けを食らっていました。 2022年こそリベンジ!・・・と思っていたらまさか4月に成熟個体に出会えるとは。


■ 2020年07月12日 撮影

本来本種の成熟時期は梅雨〜初夏くらいであり、この時期が本来の最盛期です。 なので4月に子嚢殻が出来ていると言うのは相当なイレギュラーだったと思います。 この子実体は結実部がまぁまぁタンポ形になっており、斜埋生型の子嚢殻も分かりやすいですね。


■ 2020年07月13日 撮影

子嚢胞子は糸状で64個の二次胞子に分裂します。数えてみるとピッタリですね。 そして今までメタリジウム属の胞子を見てきていれば、これがメタリジウムっぽくないと分かるでしょう。 ハヤカワセミタケとかが典型的ですが、基本的にあの属の胞子は細長くて隔壁があり、1細胞がもっと細長いですからね。


■ 2020年07月12日 撮影

土繭を綺麗に切り開くことができました。宿主はガの幼虫で間違い無いですね。 流石に素人では宿主の同定はムリですね・・・。 土繭内の幼虫から発生する性質上、菌糸が繭を貫通して子実体を発生させます。 そのため完全に土繭を除去するのは不可能なので、ここがクリーニングの限界です。

■ 2022年04月28日 撮影

TOP写真の個体のすぐ近くで見付かった幼菌です。見ての通り、ほぼ真っ白で良く目立ちます。 過去にも大量に発見しているignatius氏も「目立つ幼菌の内に見付けて場所を覚えておくのがコツ」とのこと。 確かに・・・と思います。ただこれが本来のこの時期の成熟度なんですよね。成熟個体を見れたのはやはり奇跡。
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