■Cordyceps sp. (ノムシタケ属 No.001)

■ 2016年06月17日 撮影

地元にガガンボ氏といんたー氏をお呼びしての突発冬虫夏草オフ会を開催。 クチキムシツブタケ発見に沸く中、サクラの朽木に見慣れない赤い物体を発見。 冬虫夏草だと言うのはすぐ分かりましたが、この段階では特に気に留めていませんでした。 しかしその後採取する段になってその見慣れぬ姿に驚かされる羽目に・・・。 何と鱗翅目ではなくハチの繭から出ていたのです!

本種は以前から「ハチ繭生不明種」として冬虫夏草界隈で存在自体は知られていました。 ヌンチャク型の胞子からヒメサナギタケモドキと同種あるいは近縁ではないかと考えられています。 また同じ宿主から発生する青緑色のアナモルフが存在しますが、ソチラはMetarhizium属菌なので別種です。


■ 2016年06月17日 撮影

発見したのはこんな感じ。古いサクラの太めの枝に開いた穴から顔を出していました。 この時は小さなサナギタケか何かだろうと思っていました。


■ 2016年06月17日 撮影

断面を作成した時、皆が違和感に気付きました。宿主がガじゃない! 木の孔の底にあり、入り口には詰め物の蓋。こんな宿主は見たこと無いぞ。 また観察中に胞子が飛んだのですが、ルーペでもその形状の特徴が分かりました。


■ 2016年06月17日 撮影

帰宅後クリーニングしたのがこの状態。これは確かに繭ですが鱗翅目のものではありません。 調べた結果ギングチバチなどのハチ目の繭と判明しました。 Cordyceps属はそのほとんどがチョウ目を宿主としているハズ・・・。 さらに詳しい方にお聞きすると各地で発見されていると教えて頂きました。 一部では仮称で「ハチノヒメサナギモドキ」と呼ばれている種だそうです。


■ 2016年06月17日 撮影

結実部を拡大してみました。かなり色が濃く、子嚢殻は半裸生型のようです。 この特徴がイラガ生のヒメサナギタケモドキに良く似ているのが仮称の由来です。 よって本種はヒメサナギタケモドキの宿主違いの可能性も高いです。 ただ本種の方がより埋生寄りで、子実体の色も濃く、意見が割れている模様。


■ 2016年06月17日 撮影

ヒメサナギタケモドキに関連付けられる理由はもう一つ、それは胞子の形状。 実は現地でのルーペ観察段階で噴出した胞子でもしかしてと思ってました。 本種の胞子はなんと中央部が異様に細いヌンチャク形をしているのです。 これは飛距離を伸ばすためか、それとも宿主に付着しやすくするためか・・・? 何にせよこの形状の胞子を持つ種はヒメサナギタケモドキを含め少数派です。 現状では「ヒメサナギタケモドキあるいはその近縁種」止まりになるでしょう。 もう一度しっかり顕微鏡観察したいんですが、これ以降出会えずじまい。どこに居るの・・・?

現状不明種なので食毒不明ですが、あっても薬用効果くらいかな? 棍棒形の子実体を持つ冬虫夏草としてはかなり小型で価値は低いですけど。
■ 2016年06月17日 撮影

オマケで子嚢殻のマクロ撮影です。本種の子嚢殻はとにかく粒が細かいのが特徴。 ヒメサナギタケモドキの他にもヌンチャクイラガタケやホソエノコベニムシタケ(山形型)と近縁と思われます。 ただしヌンチャクイラガタケはもっと黄色く、ホソコベ山形型はもっと赤いので、かなりヒメサナギタケモドキに近いようです。 個人的にはヒメサナギタケモドキの宿主違いではないかと疑っていますね。
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