■Cudoniella sp. (ミズベノニセズキンタケ属 No.001)

■ 2020年05月03日 撮影

新型コロナウイルス感染拡大が本格化していた頃。 遠方へ出歩くのは止めて人気の無い地元の沢へ。 この場所はピンタケとミズベノニセズキンタケの2種類の水生キノコが発生する場所。 そこで出会った水没した広葉樹材から発生する本種。 以前から何度か目にしていましたが、てっきりミズベノニセズキンタケの幼菌だと思っていました。 しかし子実体の形状、発生材の違い、そして顕微鏡観察から別種であると判断しました。

国内ではかなりミズベノニセズキンタケと混同されているようです。と言うか私もしていましたし。 属名については悩みましたが、子実層の構造が同じであることから同属菌であると一旦仮置きです。 海外では本種に良く似た種に「C. tenuispora」が存在し、外見的にも顕微鏡的にも良く似ています。 しかし海外サイトでもアミロイド反応や胞子がバラバラで、やっぱり厄介者のようです。


■ 2020年05月03日 撮影

子実体は「ズキンタケ」の偽物と呼ぶにはあまりにも柄が短く、肉厚なビョウタケ形と言ったトコロ。 色は全体的にクリーム色で透明感があり、子実層面のみ灰色を帯びます。


■ 2020年05月04日 撮影

帰宅後に黒バック撮影してみました。ミズベノニセズキンタケに比べると柄が明らかに短いです。 子実層面は成熟するとやや盛り上がるのですが、ミズベノ(略)ほど大きく盛り上がりません。 また表面は滑らかなままでデコボコせず、また縁部が沿って巻き込むこともありません。


■ 2020年05月04日 撮影

しかし子実層面を顕微鏡観察してみてビックリ。あれ?何か似てるぞ?


■ 2020年05月04日 撮影

ミズベノニセズキンタケ()を同倍率で並べて比較してみることにしました。 まず気になったのは子嚢と言うか子実層の厚さですね。 半分以下の子実層の厚さでは流石に同種とするには無理があります。 ただそれ以外の特徴は驚くほど一致していました。


■ 2020年05月04日 撮影

驚いたのが側糸先端の泡状内包物と子実層下の縦方向に並ぶ褐色の組織です。 この2つの特徴は私自身本家ミズベノニセズキンタケでしか見ておらず、同属を落とし所にしたのはコレが理由です。 またこの写真から下方で色付いていたのが側糸の基部だったことも判明しました。


■ 2020年05月04日 撮影

子嚢胞子は楕円形でサイズはミズベノ(略)とほぼ同じ。 ただ紡錘形チックさは少なく、また両端に対になっていた泡状内包物も見られず内部は均一です。 並べてみるともっと分かりやすいですが、胞子にも違いがありますね。


■ 2020年05月04日 撮影

気になっていたメルツァー試薬でのアミロイド反応は・・・?


■ 2020年05月04日 撮影

何度か染色を試みましたが非アミロイドであり、これでニセビョウタケ属を選択肢から排除しました。 ただ同属内でアミロイド反応って違うっけ?と言う疑問もあります。 となると本家ミズベノ(略)も本種も、肉眼では観察が難しいくらいアミロイド反応が弱いってことなのかも知れません。 今回はKOHによる前処理を忘れていたので、次回の課題としておきます。

流石に不明種なので食毒不明ですが、普通に小さいし水っぽいしで無毒でも美味しくないでしょう。 それよりも情報が足りませんね。来年はもっと詳しく調べたいです。

■ 2018年04月28日 撮影

実は初発見は掲載から2年前の2018年。この時はミズベノニセズキンタケとして掲載していました。 この時から「柄が短いな」とは思っていたのですが、他にこんな種を知らず思い込んでいました。 2020年に本物のミズベノ(略)の幼菌を見て、明らかに違うと認識しました。


■ 2018年04月28日 撮影

子嚢盤はとても子嚢菌らしい外見で見ていて楽しいです。 最初はこのように子実層面は真っ平らですが、成熟すると中央が盛り上がります。 ニセビョウタケ属にも子実層面が膨らむ種は存在しますが、多くは平坦か凹んでいるか。 本種は本家ほどではないにしても結構丸くなります。

■ 2018年04月28日 撮影

もう1つ気付いたことがあります。それは両者が発生する材の違いです。 本家ミズベノニセズキンタケの材は表面こそ黒いものの内部はベージュ色で明るい色合いです。 またこの材はニッパーでも簡単に切断できないほど硬く、まるで偽菌核化しているかのようです。 しかし本種が発生する材は内部まで黒く腐朽しており、触るとボロボロ崩れます。 明るい色の材に生えている場合でも材の硬さが全く違うのです。これも宿題ですね。

■ 2021年04月27日 撮影

今年も来ましたいつものフィールド。今年は本家ミズベノニセズキンタケが全然出ていません。 と言うか幼菌でした。どうも本種は本家より発生が若干早いようですね。 水の流れの中にあってとても良い雰囲気でした。 本家ミズベノも立ち上がってカッコイイですが、本種のこの背の低い感じも結構好きだったり。


■ 2021年04月27日 撮影

拡大してみました。やっぱりグレーですよねコイツ。 この日は発生環境を動画に録ってたんですが、本種は録り忘れたんですよねぇ。 でも環境は完全にピンタケと同じで、そこそこ流れがある感じです。

■ 2021年05月22日 撮影

本家ミズベノニセズキンタケを見に行ったらまだ発生していました。 本種のほうが本家より少し発生が早いようで、すでに消滅しているか、このような老菌しかありませんでした。
■図鑑TOPへ戻る