■Elaphomyces sp. (ツチダンゴ属 No.001)

■ 2021年02月06日 撮影

初めて出会ったツヅレシロツチダンゴ系ツチダンゴは本種でした。 初発見時は冬虫夏草の発見の「ついで」でしたが、自力で単体発見できるようになりました。 当時はしっかり撮影もしておらず、顕微鏡観察もできなかったので良いリベンジの機会となりました。 比較的普通種でブナ科樹木の周囲に発生する小型の地下生菌です。 胞子の色や全体的な雰囲気が見慣れた褐色系のツチダンゴとは一線を画します。 また本種やその近縁種は一部の冬虫夏草の宿主にもなることで有名。

先述の通りツヅレシロツチダンゴに近縁な種であり、違いは菌糸の色と胞子のサイズ。 学名的には「E. aff. mutabilis」と表記すべきのようです。 この他にも本種の近縁種は複数存在しており、現在はまだ研究段階です。 また本種は菌生冬虫夏草のサキブトタマヤドリタケの特異的な宿主です。


■ 2021年02月06日 撮影

子実体は小型で灰青褐色なのですが、その表面を菌糸が覆っているのがこの系統のツチダンゴの特徴。 そのため硬質の外皮は菌糸に包まれていてほとんど見えません。 またツヅレシロツチダンゴとの最大の違いは白色菌糸に黄色が交じることです。


■ 2021年02月06日 撮影

上から見ているだけだとただの白い塊に見えますが、切断するとこの通り。 本種は他の同系統ツチダンゴに比べて密生しやすい傾向があるようです。 これはツヅレシロツチダンゴも同様で、切断するとこのように1塊の中に複数の子実体が見られることも。


■ 2021年02月06日 撮影

切断すると完全にピータンです。愛好家からもそう呼ばれているそうで。 こうして断面を見ると菌糸とグレバの間の有色の表皮があるのが分かりますね。 グレバは灰青色で、褐色系の胞子を持つツチダンゴ類とは雰囲気が別物です。


■ 2021年02月06日 撮影

帰宅後にクリーニングしたものを真っ二つに切断してみました。 表面の白色をベースに黄色が交じる感じです。 また菌糸の直下に見える黒く薄い層は硬質の外皮です。 その下の灰色の部分が内皮で、更にその内側が胞子を蓄えたグレバです。 実は似た菌糸を纏う近縁種に硬質の外皮を欠く種が存在します。 パッと見では区別が付きませんが、あまり密生しないことや、断面を確認することで判別可能です。


■ 2021年02月06日 撮影

断面を拡大してみると硬質の外皮の存在が良く分かります。 これの有無は形態的には非常に大きな違いですね。 菌糸の中に見える褐色の断面は木の根。 本属菌は菌根菌であり、本種も例に漏れず大量の木の根を巻き込んでいます。


■ 2021年02月06日 撮影

前回観察時は顕微鏡を使いこなせず写真が撮れていなかった本種、今のosoは一味違いますよ? 今回はしっかりと撮影することができました。


■ 2021年02月06日 撮影

※オンマウスで変化します

子嚢胞子は球形で直径が15μm前後とツヅレ系にしてはやや大型。 色はツヅレ系に共通の灰青褐色です。 表面は棒状のとげに覆われており、確かにつぶつぶして見えます。 ですがどうも部分的に被膜に覆われているようで、地球儀みたいな模様が見えています。 図鑑でも他の近縁種とは異なり被膜に覆われているように見えるので、間違い無いでしょう。 部分的に被膜が剥離することでこのような濃淡が現れるようです。

食毒不明ですが、基本的にツチダンゴ類に食用価値は無いですからね。 本種が好物なのは居るとすれば胞子散布を手伝う野生動物くらいでしょうし。 あとは本種を好んで宿主とするサキブトタマヤドリタケとか?

■ 2017年12月30日 撮影

初めての出会いはサキブトタマヤドリタケの発見と同時でした。 この当時は発生環境から「これ自力発見はムリだわ」と思った、てか言ったのを覚えています。 何だかんだで探索技術は向上したと言うことでしょうか。


■ 2017年12月30日 撮影

この子実体はまだ白っぽいほうかも知れませんね。 右の子実体は表面の菌糸が剥げて灰青褐色の外皮が露出しています。 この外皮は黒いツチダンゴのように硬質で、切ろうとするとパリッと音がします。


■ 2017年12月30日 撮影

綺麗に切断することができました。やっぱピータンっぽいんですよね・・・。 この頃はツチダンゴと言えばアミメくらいしか見ておらず、青い胞子に衝撃を受けました。 この日は右の半分を持ち帰らせて頂きました。


■ 2017年12月30日 撮影

黒バック撮影。ツヅレシロツチダンゴには無いはずの黄色い菌糸が見えます。 現状はグループ的な扱いですが、将来的には別属になるかも知れませんね。

■ 2021年02月06日 撮影

久し振りの出会いとなったこの日、場所はプベルルムグループのTuberやロウツブタケ属菌が出た場所です。 やはりブナ科広葉樹と共生関係にあるようで、短時間で軽く30個体以上は見たでしょうか。 周囲にはホシミノタマタケ属菌やウスベニタマタケも出ますし、まさに御神木ですな。


■ 2021年02月06日 撮影

サキブトタマヤドリタケの発生時にも感じたことですが、やっぱり本種は密生しますね。 たまに大きな塊になっていて、採ると5〜6個体まとまって付いて来ることがあります。


■ 2021年02月06日 撮影

可哀想なので1個体だけ採取して割ってみました。 このフィールドの近くには外皮を欠く種の発生地もあるので一瞬戸惑いました。 外皮の有無なんて大したこと無いじゃんと思われるかも知れませんが、 普通のミカンと最初から果肉むき出しのミカンくらいの違いですからね。

■ 2023年12月30日 撮影

2023年末の地下生菌オフで久し振りに出会いました。 他の参加者さんも発見していたのでこのフィールドでは普通に見られるようです。 すでに一部菌糸が剥離して内部の硬質外皮が見えていますが、 古くなって菌糸が消失すると黒いツチダンゴにソックリになります。


■ 2023年12月30日 撮影

このフィールドでは外皮を欠く種も発生するので切断して断面チェック。 ちゃんと黒い外皮が見られるので間違いナシ。 そろそろ菌糸が真っ白の本当のツヅレシロツチンダンゴに会いたいものです。
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