■Elaphomyces sp. (ツチダンゴ属 No.006)

■ 2020年01月12日 撮影

地元でのタイワンアリタケ再発見を目指して出かけた午前の部。 地元のアミメツチダンゴの坪を見るついでに訪れたガヤドリの沢筋。 そこでシイ・カシ入り交じる広葉樹林地上で見慣れないツチダンゴを発見。 最初は未熟なアミメツチダンゴだと思ったのですが、まさかまさかの初見種でした。 ちなみにこのすぐ上に肌色胞子の黒いツチダンゴも出ており、まさに御神木って感じです。

菌生冬虫夏草の「Tolypocladium guangdongense」の宿主でほぼ間違い無さそうです。 和名は存在せず、中国で「広東虫草」と呼ばれており、国内で発見例が少ないながらも存在します。 冬虫夏草の実績があるフィールドなので、梅雨時になったら出ないかな?と期待しております。


■ 2020年01月12日 撮影

子実体は黄褐色で球形。驚くべきは直径5mmと非常に小型であること。 なので最初はアミメツチダンゴの幼菌だと思いました。が・・・。


■ 2020年01月12日 撮影

掘り起こした際に違和感をおぼえ、近くの沢で水洗いし土を落としてビックリ。 水が乾くのを待って撮影したのがこの1枚。この段階で本種が未見の種だと確信をしました。 だって明らかに表皮構造が違うんですもん。


■ 2020年01月12日 撮影

恐る恐るカッターナイフで子実体を切断し、私は驚きの声を上げてしまいました。 まず表皮断面に大理石模様が無い!そして胞子が黒い! 明らかに今までに見たどのツチダンゴとも異なります。 タイワンアリタケが目的のお出掛けでしたが、思わぬ収穫がありましたね。


■ 2020年01月12日 撮影

帰宅後に黒バック撮影してみました。楽しい!


■ 2020年01月12日 撮影

まずは表皮から。表面は黄褐色で表面にはイボが・・・イボか?コレ。 と言うのも確かにアミメツチダンゴみたいな突起はあるんですが、背が低いです。 なのでピラミッド型のイボと言うよりは亀甲状と言ったほうが的確かも。


■ 2020年01月12日 撮影

同倍率で撮影した断面です。注目すべきは表皮断面と胞子。


■ 2020年01月12日 撮影

表皮の最外部は黄褐色ですが、そのすぐ下は小豆色と言うか少し赤みがかっています。 当然ですが大理石模様は存在せず、菌糸が均一に詰まったような質感です。 そして驚くべきはその胞子のサイズ。 ツチダンゴ系の胞子でここまで大きく見えたのは初めてかも。


■ 2020年01月12日 撮影

そして嫌な予感的中。油浸対物レンズでも表面が見えない! 胞子が25μmもある上に肉眼でもあれだけ黒いんじゃ当然光が透けませんよね! てことで色々と観察方法を試しましたが、残念ながらコレが限界でした。 とりあえず胞子サイズと色が黒褐色、表面がデコボコしているってことまでは分かりました。


■ 2020年01月12日 撮影

これでは終われないので、胞子を潰して表面構造だけでも観察してみました。 カバーガラスの上から先端の軟らかい棒でトントン叩いて胞子を潰し、光が透けるようにしました。 すると胞子表面の被膜が綺麗に剥けた模様。表面は岩のようにデコボコです。

非常に小型の上に中身は粉。食不適にもほどがあります。 しかも本種、しばらくケースに入れて保管してたんですが、ニンニク臭いんですよね。 でも良い匂いと言うワケではなく、ニラと言うかニンニクと言うか何かソッチ方面の不快臭がします。 ツチダンゴ属には有毒種が居るなんてウワサもありますし、軽い気持ちで口に入れないように。


■ 2020年01月18日 撮影

でもやっぱ諦めたくない!ってことでちょっと小細工してみることにしました。 周囲全方向から光を当てて明視野と暗視野をなんちゃって再現してみました。 そりゃこんだけ黒いなら光が透けないワケですわ。 何となく明視野と暗視野を加工して繋いでみたら良い感じの写真になりました。これ良いぞ。


■ 2020年01月18日 撮影

拡大してみると顕微鏡で見えていたものの正体がハッキリしました。 やはり本種の表面には荒々しい面を持つ皮膜が覆っているようです。 そして部分的に皮膜が消失して胞子本体が顔を覗かせています。 にしてもこの手法は悪くないな。他種でやっても良いかも。


■ 2020年01月18日 撮影

拡大してみるとボコボコした被膜が剥がれた部分から微細なトゲに覆われた綺麗な球形の胞子が覗いています。 てっきり長いトゲがあの表面構造を作っているのかと思ったら・・・何から何まで摩訶不思議なツチダンゴですね。

■ 2020年05月26日 撮影

珍しいトリポクラジウム属菌が見付かったので採取ついでに撮影。実は同じ沢に出ています。 なので「T. guangdongense」が出ないかなと期待しているんですが・・・もうそろそろ時期ですよね。 ここには出ないのかなぁ。


■ 2020年05月26日 撮影

少しだけ拡大してみました。こうして見るとかなり地表付近に出ているんですね。 でも冬虫夏草が生える様子は無いなぁ。 と言うか左のヤツは青っぽい色の菌糸にヤられてますね。 一応近所でいつでも行ける場所なので、定点観察は欠かさないようにする予定。

■ 2022年05月08日 撮影

2022年も本種は何だかんだ出ていました。また何か菌にやられてるっぽいですけど・・・。 今年は岡山遠征に行って本種から発生すると言う広東虫草を実際に見ることができました。 でも何度か足を運びましたが発生は確認できませんでした。残念。なお赤いのはマルトビムシです。
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