■Elaphomyces sp. (ツチダンゴ属 No.008)

■ 2021年02月06日 撮影

コロナ禍で大人数での大規模遠征が出来ない日々が続く中、単独行動での寂しい遠征。 感染対策を徹底しつつ行った遠征にて目的地手前のカシ林で出てしまいました。 逆に目的地では収穫ゼロだったんですが、コレが出ただけでもう撮れ高十分です。 当サイトに掲載している地下生菌の中でもトップクラスの激レア種。 実は地下生菌研究者の皆様と過去に行った関東遠征でも私が発見し大盛り上がりしました。 最初は激レア地下生菌のクロイボツチダンゴだと思われましたが・・・。

掲載するにあたり地下生菌研究で知られるO氏の意見を仰ぎました。 結論から申しますと全情報のネット公開は控えるべきと言うことになりました。 実は本種は胞子が非常に美しく、私もそれは知っていたので当然しっかり顕微鏡観察を済ませています。 しかし現段階では子実体と胞子の関連性を示すべきではないと言うことで掲載は一時中断します。 と言うのも、胞子の観察結果からクロイボツチダンゴとは別種の可能性があるのです。 となれば国内初の可能性もあるワケで、 O氏から何かしらの正式な発表があるまで顕微鏡観察結果はPCの中で眠らせておくことにします。


■ 2021年02月06日 撮影

まず思うのがその深い黒さです。 地面にコレを見た時はブラックホールみたいに見えました。 立ち上がって全体を見渡すと明らかに1ヶ所だけ不自然に黒くて笑えて来ます。


■ 2021年02月06日 撮影

子実体は和名の通り黒色、表面はこれまた和名の通り低いトゲ状のいぼに覆われています。 国内には黒色の外皮を持つツチダンゴの仲間は多いですが、本種はそれらのどれとも異なるグループです。 どちらかと言えば無印ツチダンゴやアミメツチダンゴに近縁・・・のハズなんですけどね・・・。


■ 2021年02月06日 撮影

表面のイボを拡大してみました。背は低く、やや脆いようで部分的に脱落してしまっています。


■ 2021年02月06日 撮影

掘り出した状態です。綺麗な球形で重みがあります。 当サイトでも黒いツチダンゴの仲間は複数掲載していますが、これらは全て外皮が硬質です。 炭のような脆さなので切断しようとするとパリパリと砕けてしまいます。 しかし本種の質感は見慣れた褐色系ツチダンゴのように菌糸状なのです。 また分かりにくいですが下部に無性基部があります。


■ 2021年02月06日 撮影

正直白バックにすりゃ良かったと後悔しました。 黒バックにすると元々黒いので何が何だかワケ分かりません。


■ 2021年02月06日 撮影

黒バックで表面を拡大してみました。 表面のいぼはアミメツチダンゴのような鋭角的なピラミッド型ではなく、本当にイボみたいな感じです。 でも形状もサイズも見慣れたアミメツチダンゴ系統なのにこの色は違和感が凄いですね。 まぁ本種の決定的な違和感は割った時に分かるんですけどね。 この子実体は標本として提供となったため、断面については同日発見の別個体でご紹介しますね。

中はパッサパサの粉なので食不適も良いトコですよ。 てかこんな珍しいキノコを食おうとか、到底浮かばない考えです。 また成熟すると鼻を突くような刺激臭を発するので食用とかとてもじゃないけど向きません。 と言うかもし見付けたらしかるべきに場所に研究用に送ったほうが良いですよ。 他の地域でも見付かっているので、意外と分布は広いかも知れませんので是非探してみて下さい。

■ 2021年02月06日 撮影

初めて発見したフィールドではすぐ近くに複数個体発生が見られました。 なのでここでも・・・と思い周囲の落ち葉を退けてみたら、一気に2個体出て来ました。 1株だけだと採取が不安でしたが、これでとりあえず一安心かな?


■ 2021年02月06日 撮影

やっぱ複数株居てくれると安心しますね。 白い菌糸が周囲に見られますが、もしかして何かに感染してる? そう言えば長野遠征ではニッコウクロツチダンゴがハナヤスリタケに感染していましたが、 ひょっとすると本種も冬虫夏草の宿主になったりするんでしょうか。


■ 2021年02月06日 撮影

カッターナイフで真っ二つに切断すると衝撃の光景が見えました。 そう、何と本種の胞子は灰青色なのです。これがどれだけ異質かお分かりになるでしょうか? 青い胞子を持つツチダンゴは国内ではツヅレシロツチダンゴおよびその近縁種が存在します。 しかし本種は色を除けば形態的にはツチダンゴやアミメツチダンゴに近いグループに属しています。 これがどれだけ異常かを例えるならば「コフキサルノコシカケみたいなキノコが真っ黒で周囲に積もった胞子が青色」 とでも言いましょうか?それくらいとんでもない異様さなのです。


■ 2021年02月06日 撮影

拡大するとこんな感じで外皮は表面が黒色で内部が褐色。胞子が詰まったグレバが灰青色です。 子実体の基部は不自然に凹んでおり、まるで腹菌型の担子菌類のようです。ここが無性基部かな? その外見的特徴から海外で見付かっている「E. cyanosporus」に近い種ではないかと疑われています。 初発見時は真っ暗闇の中で人工照明下での観察と撮影だったので、自然光下で見れて本当に嬉しかったですね。


■ 2021年02月06日 撮影

切断した半分だけを持ち帰って黒バックで両面を撮影しました。 初発見時はあまりにも貴重すぎてグレバの1部だけ持ち帰った感じなので、これ見れたのは嬉しいなぁ!


■ 2021年02月06日 撮影

切断面を観察してみました。最も外側が黒褐色の外皮で、これがいぼいぼしている部分です。 その下は褐色の内皮です。アミメツチダンゴでは大理石模様がある部分ですね。 更にその内側が胞子に満たされたグレバです。

ちなみに顕微鏡観察結果が掲載できないので、文章で胞子の特徴を大まかに掲載しておきます。 胞子は球形で灰青褐色、表面に不規則な網目を持つのが特徴です。子嚢も観察できました。 掲載段階で唯一発見されていた福岡県のサンプルと比べると胞子の網目に乱れが目立ちます。 もしかすると別種かも知れません。掲載OKが出たら追加掲載する予定。

■ 2019年12月07日 撮影

国内の地下生菌研究の最前線の皆様と共に行われた地下生菌探索会。 ネット上で公表できないほどヤババな地下生菌2種がメインターゲットでしたが、想定外の出会いがありました。 熊手を使って地面を掻いていた時、地面に不自然な物体を発見しました。 すぐに違和感に気付き、K.Y氏をお呼びし見て頂いたところ、氏の表情が一変。只事では無いと感じました。 まだこの時はクロイボツチダンゴだと思っていたので、国内で2例目だと大はしゃぎ。 実際には1例目だったのかも知れないですけど。


■ 2019年12月07日 撮影

最初にコレを見た時に、見慣れた褐色系ツチダンゴが朽ちたものだと思いました。 と言うか割ってみるまで疑いがどこか拭い去れない感じでした。 よくよく考えてみれば、こんなに黒く朽ちたら形状を保てないですよね・・・。


■ 2019年12月07日 撮影

かなり成熟が進んだ子実体だったので、表面のいぼはかなり潰れていますね。 周囲の腐植や木の根を巻き込んでいるのでちょっと汚れて見えます。


■ 2019年12月07日 撮影

この日はこの1個体しか見付からなかったので研究用の標本として提供となりました。 個人的にはこの段階でもまだ古くなったツチダンゴじゃないかと若干疑ってたんですよね。 こうして見ると真っ黒ではなく褐色を帯びるんですね。


■ 2019年12月07日 撮影

実は上の写真を撮影した段階ですでに漆黒の闇。ドライブインに移動してトイレの前で撮影タイムとなりました。 カミソリで切断すると参加者全員が「おおー!」と声を上げてしまいました。 この日は別の激レア冬虫夏草が主役だったのですが、それに十分引けを取らない存在感を醸し出していました。 やっぱり下部が凹むみたいですね。


■ 2019年12月07日 撮影

貴重な標本なので持ち帰ることはできません。O氏への提供となりました。 しかし何とか白バック撮影がしたい!てことでちょっとした裏技。なんちゃって白バック撮影! 白い紙を敷いて撮影した後、画像編集で背景の明度調整することでこんな感じにできます。


■ 2019年12月07日 撮影

拡大するとこんな感じで、褐色系ツチダンゴの色がバグったみたいな印象を受けます。 菌根菌らしく木の根が子実体表面に絡み付いていました。 希望者は小さなグレバの破片を持ち帰り、私も頂いたものを顕微鏡観察。 そのあまりの美しさに大興奮したのでした。あー胞子がお見せしたいよう!


■ 2019年12月07日 撮影

ちなみに発生環境はこんな感じ。この段階で森の中はすでにほぼ真っ暗。 良く見付けられたし、良く撮れたものだと我ながら感心します。 ちなみに自然に見えるようシャッタースピードを落とし、ライトを多方向からグルグル当てて撮影しています。 昼間みたいに見えるでしょ?

■ 2020年03月21日 撮影

昨年末にレア地下生菌が連発したフィールドにいつものキノコ仲間と再度訪れました。 前回と違う場所など見方を変えたりもしましたが、この日はあまり収穫は振るいませんでした。 私が「今回はクロイボツチダンゴ無いですねぇ・・・」と言いつつ地面を見た時でした。 音声認識やめろって!言って2秒で目に入るのはシャクトリムシハリセンボンで経験してましたが、またかよ! あまりの面白さに突っ伏してしまいました。


■ 2020年03月21日 撮影

実は昨年12月の探索以降に別の調査班が複数個体見付けていたそうです。 このフィールドではそれほど珍しい種ではないのかも知れませんね。 国内で見ればドチャクソレアなんですけど。 にしてもこの子実体、妙に綺麗だな。


■ 2020年03月21日 撮影

それもそのハズ、何とほとんど傷みの無い子実体でした。 しかもやや若くて色合いも前回見たものと違います。 どうやら成熟するまでは暗灰褐色みたいですね。 何とも言えない穏やかな色合いで、ますます好きになっちゃいました。

■ 2020年03月21日 撮影

この発見を期に周囲を皆で探すとガガンボ氏も近くで発見!しかも2つ並んでいます。 後ろに見える真っ黒なのが朽ち果てた老菌です。 激レア地下生菌が1日で3個体も見付かるのは奇跡ですわ。


■ 2020年03月21日 撮影

コチラの子実体は初発見時とほぼ同じ成長度合いなのか、子実体も真っ黒で似た色合いでした。 やはり成長とともに表皮が黒く変化するようです。 またこれは幼菌の段階でも見られますが、上面のトゲが潰れる傾向にあるようです。 アミメツチダンゴなどは上面もトゲがピンと立っているので、本種の特徴なのかも知れません。

■ 2021年12月18日 撮影

コロナ禍の合間を縫って何とか開催に漕ぎ着けることができた地下生菌オフ。 その目玉の1つだったのですが、いざ探し始めると人数は居るにも関わらず見付からず・・・。 主催者的にやらかしたかと思っていたら辛うじて見付けることができました。 暗さと雪と湿った地面のせいで見付けられなかったのかも知れませんが。


■ 2021年12月18日 撮影

掘り出してみました。本種を探していて非常に鬱陶しいのがヤブツバキの果実。 開裂せずに地面に落ちて黒く朽ちた丸いままのものが非常に本種に似ているんですよ。


■ 2021年12月18日 撮影

割ってみると初見メンバーは驚きの声を上げていました。 確かに胞子が青いツチダンゴはツヅレシロツチダンゴ系くらいしか普通は見ないので・・・。


■ 2021年12月18日 撮影

断面を見ると3層構造になっているのが分かります。 一番外側が黒くてトゲトゲの外皮。その内側がクリーム色〜褐色の内皮。そして一番内側が灰青褐色の胞子が詰まったグレバ。 内皮は場所によって褐色度合いが違い、一見すると4層に見えますが、これはより内側が茶色く染まりやすいためですね。
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