■Entoloma sp. (イッポンシメジ属 No.001)

■ 2019年08月24日 撮影

夏キノコを探し終えて帰る途中のスギ林内で見慣れないキノコを発見。 最初はカヤタケの仲間かな?と思ったんですが、どうも雰囲気が違います。 とりあえずカヤタケ属かその近縁な属のキノコだと仮置しつつ一応標本を採取しました。 しかし翌日になって胞子を調べてみると何とイッポンシメジ属でした。

イッポンシメジ属菌にはこのような漏斗形の傘を持つものが何種類か存在します。 しかし全体的な雰囲気がどれとも合わず、不明種とするしかありませんでした。 個人的にはEntoloma特有の胞子の形状観察の練習になったでしょうか?


■ 2019年08月24日 撮影

子実体は全体に淡い色合いで傘は淡褐色。 柄は繊維状でスラリと長く、色は白色で中程がやや褐色を帯びます。 細いカヤタケみたいな雰囲気で、この段階ではイッポンシメジ属とは思いませんでした。


■ 2019年08月24日 撮影

傘は繊維状で綺麗な漏斗形。面白いのが傘中央が突出しないと言うことです。むしろ深く落ち込んでいる印象です。 本属菌の多くは傘の中央部が突出する性質があり、傘が反っても中央だけは飛び出ていることが多いのです。 ですが本種の傘の中央部は見事に凹んでおり、自分が思っていた本属菌のイメージとは違っていました。


■ 2019年08月24日 撮影

裏返してみました。柄の基部は白色菌糸に覆われています。


■ 2019年08月24日 撮影

ひだは柄に対して垂生白色。隣のひだと連絡しているようです。 この段階ではこのひだの色のせいでますますイッポンシメジ属からは認識が離れて行っていました。 ここで日没。この写真も色調補正で何とか本来の色にしている状態なので、さっさと撤退しました。


■ 2019年08月25日 撮影

翌日、標本をケースから取り出して顕微鏡観察開始です。 まずはひだを切り出して低倍率で観察。 ひだ表面には担子器とシスチジアが見られます。


■ 2019年08月25日 撮影

ここで初めて胞子を見れたのですが、この光景を見て流石に「あっ!」と思いましたよ。 この多角形の胞子はまさしくイッポンシメジ属! この段階でやっと本種の属が判明した感じです。


■ 2019年08月25日 撮影

拡大してみると見事な厚膜気味の多角形です。 内部に大きな油球を1つ含みます。 1ヶ所少し飛び出ているのが担子器と繋がっていた名残りですね。 実はイッポンシメジ属の胞子をしっかり観察したのはこれが初めてだったのでかなり興奮しました。


■ 2019年08月25日 撮影

せっかくなのでフロキシンで染色して観察してみました。


■ 2019年08月25日 撮影

やっぱり染色すると分かりやすいですね。 担子器が4胞子性である様子が手に取るように分かります。 胞子の内包物が染色されるので細胞膜に厚みがあるのも分かりやすいですね。 しかしこうなるとやっぱコンゴーレッドが欲しいかなぁ。


■ 2019年08月25日 撮影

あまり良く分かりませんが、シスチジアは棍棒形かな?


■ 2019年08月25日 撮影

実は顕微鏡観察を始める前から本属菌だってのは大体予想できちゃってました。 と言うのもケースから出してみたらひだが肉色になってるんですもん。 採取した段階ではほぼ真っ白だったハズなのに、たった一日でここまで変化するとは。 この色を見るとイッポンシメジ属菌だって気付きますよ。

不明種ですので食毒不明です。 ただ属が属なだけに一応有毒の可能性も考えて赤字表記にしておきます。 ちなみに香りを嗅いでみたらキノコ臭と言うか粉臭でしたね。
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