■Entoloma sp. (イッポンシメジ属 No.003)

■ 2022年10月08日 撮影

以前から気になっていたのですが、ずっと詳細な観察が後回しになっていました。 地元で冬虫夏草が多数見られるヒノキ林地上に発生する謎のイッポンシメジ属菌です。 ウメムラセミタケを見に行くと時期的に必ずと言って良いほどそのフィールドで出会います。 最初は属すら分かりませんでしたが、顕微鏡観察の結果本属菌だと判明しました。 ただ結局それ以上の情報は分からず、不明種として掲載することにしました。

この場所はマジでヒノキしか無い放置気味の植林内。 まばらにササやアセビが生えている程度で、誇張無しにブナ科広葉樹は1本もありません。 なので最初は腐生性の種が多いヌメリガサ科かな?とも思ったんですが・・・。 それ以外の特徴はイッポンシメジ属菌意外考えられません。


■ 2022年10月08日 撮影

子実体は一言で表すなら「真っ白」ですね。 多少傷んだ部分が褐色気味になるようですが、それを除けば本当に純白です。 また面白いことに傘表面にシルク状の光沢があるんです。これで最初に本属菌を疑いました。


■ 2022年10月08日 撮影

引き抜いてまず思うのは柄が太いなと言う感想です。傘のサイズのワリに柄が凄い太いんですよね。 それに反して手に持つと感じる予想外の軽さ。 柄は繊維状で内部がスカスカなので見た目以上に軽いんですよね。


■ 2022年10月08日 撮影

ひだも傘や柄と同様に白色で、肉色になってなかったのが気になりました。 イッポンシメジ属菌ならもっと赤いですし、ひだももっと整ってると思っていたので。 なので今回ちゃんと顕微鏡観察しようと考えました。


■ 2022年10月09日 撮影

と言うことで新し目の子実体を1個体、老成したものを1個体持ち帰りました。 まず分かったことは凄い粉臭いと言うこと。クサウラベニタケの臭いを思い出しちゃいます。 そして切片を作って顕微鏡観察。シスチジアは確認できませんでしたが、担子器は確認できます。


■ 2022年10月09日 撮影

担子器は4胞子性ですね。そしてこの胞子の形・・・。


■ 2022年10月09日 撮影

胞子が明らかに多面体!これは明らかにイッポンシメジ属菌の特徴です。 これを見てやっと属名に確信が持てた気がしました。 ただ多面体ではありますが、やや球形寄りな気もしますけど。

不明種ですので食毒不明です。 赤字にしているのは属的に有毒種が多いので、まぁ保険と言うものです。 ただ仮に食用だとしても、この粉臭は結構不快なので食用価値はそもそも無いような気もします。 あとヒノキ林に発生するからかもですが、土臭さもあるので正直あまり食毒を考えられないんですが。

■ 2022年10月08日 撮影

こちらは老成した子実体です。古くなると傘が褐色気味になって汚らしくなります。 土で汚れたワケではなさそうですね。ですが重要なのは裏側。


■ 2022年10月08日 撮影

裏返そうと柄を持つとボロっと崩れました。老成しているとは言え本当にスカスカの中身です。 臭気的にもクサウラベニタケとかに比較的近い種なのかも知れませんね。 そしてイッポンシメジ属らしくひだが肉色になっています。やっぱなるんですね。

■ 2022年10月08日 撮影

この時期のヒノキ林って地面が暗い色合いなので、この白い子実体が尋常じゃなく目立ちます。 本種に限らずヒノキ林って色々と面白いキノコが出るので油断できないんですよね。 個人的にはスギ林よりは菌類の層が厚いと思っています。


■ 2022年10月08日 撮影

新旧の子実体を引っこ抜いて並べてみました。ひだの色の違いが良く分かります。 右の子実体を見るとイッポンシメジの仲間だなぁと思うんですが、やっぱ幼菌の頃の形状が特徴的ですよね。 多分柄が妙に太いのと全体的に真っ白なせいでしょうけど、凄い個性的で好きなキノコです。
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