■Gibellula sp. (ギベルラ属 No.003)

■ 2022年09月03日 撮影

地元でクビオレアリタケ発見場所の周辺を散策して居て小さいながらも目立つ白い物体。 近付いてみると何と冬虫夏草!小型のクモを宿主とする気生型のGibellulaでした。 しかしこの場所の周囲には川や池はおろか沢や伏流すら無い普通の里山です。 イトヒキミジンアリタケやクビオレアリタケが出る時点で相当乾燥した環境ですからね。 ignatius氏より情報を頂き、氏が発見しているものと同種であると考えられます。

有性世代は見付かっているものの胞子観察には至っていないようで、残念ながら不明種です。 発見できる可能性を考慮して今後も調査継続しようと思います。 本種は他のクモ生の小型種の中では比較的乾燥に強いことが確認できています。


■ 2022年09月03日 撮影

拡大するとこんな感じ。枝に掴まった小型のクモから無数のシンネマが出ています。 周囲にも1個体、葉の裏に付いた小さなクモから同種と思しきものが出ているのも確認できました。 ただこの時はクビオレアリタケの観察に夢中で、本種は採取せずにこの日は終わりました。


■ 2022年09月04日 撮影

しかし翌日、諸事情で時間が出来たので、別の場所へ行く途中と言うことで再訪問。 その際に前日の写真を観察していて今まで見たことが無いことに気付いていたので採取しました。 最大の特徴はポンポンの粗さ。 分生子柄束の表面に虫ピンのようなpulchra型の分生子柄が見られます。 しかし丸いフワフワした部分が相対的に大きく、全体的に荒っぽい見た目になります。 また分生子が淡紫色であることも何となく分かりますね。


■ 2022年09月04日 撮影

分生子柄束の先端付近を顕微鏡で低倍率撮影してみました。 表面に分生子柄が無数に存在するのが分かります。 分生子柄は短いように見えますが、マクロ撮影写真でも分かるように長いものが倒れているだけです。 注目すべきは分生子柄束先端にも分生子柄が形成されること。 自分が今まで見て来たGibellula属は今回の掲載段階で全て先端には分生子柄を作らないものばかりでしたので。


■ 2022年09月04日 撮影

分生子柄を拡大してみました。まるで向日葵畑! 先端に放射状に広がる分生子形成細胞が見られます。 他のGibellula属のものと比べると細胞が細く、構造が密に見えます。


■ 2022年09月04日 撮影

分生子形成細胞付近を拡大してみましたが、やはり細胞数が多いように見えます。 他のGibellula属ではこうやって見ると細胞1個1個が結構ハッキリ見えます。 これは細胞1個が大きいためですが、本種では重なり合ってハッキリ見えません。


■ 2022年09月04日 撮影

ちなみに分生子形成細胞の先端付近にピントを合わせてみるとこの通り。 ここまでみっちり詰まっているのはあまり見ない気がします。 肉眼で見た時に先端のポンポンが大きく見えたのはこの構造によるものなのでしょう。


■ 2022年09月04日 撮影

分生子は長〜い楕円形〜紡錘形で、これもignatius氏の観察結果と一致しています。 他のpulchra型の分生子に比べると細長い感じですね。他の種はもっとレモン型に近いです。 ここまで明確に形が違うと自信を持って別種と言えますね。

当然ですが不明種なので食毒不明です。小さくて食用価値なんて最初から皆無ですけど。 ただアナモルフの美しさはGibellula属菌の中でも上位ではないかと勝手に思っています。


■ 2022年09月04日 撮影

シメに黒バック撮影した全体像です。左に見えるのは自身の脱皮殻でしょうか? 一体どのタイミングで感染し、どのタイミングで発症したんでしょう・・・興味は尽きません。 ところでこのサンプルは部屋で普通に自然乾燥させているんですが、私の部屋にはハエトリグモが居ます。 大丈夫でしょうかね?
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