■Hebeloma sp. (ワカフサタケ属 No.001)


■ 2021年06月26日 撮影

キノコが賑わい始めた6月末。地元のフィールドで見慣れないキノコを遠くから目視。 ヤマビルが出るので慎重に斜面を登ると、そこには見たことの無い束生のキノコ。 しかし撮影していても属すら見当が付かなかったんですよね。 帰宅後に顕微鏡観察しても結局答えが出ず、Twitterに投稿するとご指摘を頂くことができました。 シイやカシなどのブナ科広葉樹下に発生するようです。

自分も指摘を頂いてからでもワカフサタケ属だとは信じられませんでした。 それくらい本種はあまり本属菌っぽくなかったんですよね。 ただ胞子やシスチジアを観察した感じだと、現在は本属菌だとしておくしか無いかな、と。 外見的には仮称ではありますがアシナガワカフサタケと呼ばれている種に特徴が近いようです。 むしろその名前で載せようとも思いましたが、情報が少なすぎるので不明種扱いとしました。


■ 2021年06月26日 撮影

本種がワカフサタケ属だと思えない理由はこの子実体の発生状態です。 そう、束生なんですよね。本属菌は単生か散生していることが多いので。


■ 2021年06月26日 撮影

傘は丸みを帯びており、あまり平らに開かないような印象です。最後まで丸みは残りそうですね。 表面は黄褐色でツヤは無し。表面に放射状のシワが見られます。 この頃はまだ束生具合を見てモエギタケ科あたりを予想していました。 しかし1本引っこ抜いてその可能性が0だと悟りました。


■ 2021年06月26日 撮影

柄は白色で太く繊維質。かなりしっかりした肉質のようです。 それよりも驚いたのはひだが赤みを帯びている点です。 ここまで明確にピンク色となると、思い浮かべるのはイッポンシメジ属とワカフサタケ属あたりですね。


■ 2021年06月26日 撮影

ひだは湾生。やや密と言う感じで、この状態でも隙間を感じます。 注目すべきは柄の上部にくもの巣膜が見られるんですよね。 明らかにフウセンタケ科の特徴であり、一部のワカフサタケ属にも見られる特徴です。 胞子が積もって赤色になっている点と合わせても本属菌だと言うのは説得力があります。


■ 2021年06月26日 撮影

基本ハラタケ型菌のひだの切片は適当に作って適当に観察するんですが、 今回は珍しく適当に切ったら綺麗な切片を作成することができました。


■ 2021年06月26日 撮影

珍しく、本当に珍しく切片がそこそこ綺麗に作成できたので、シスチジアも担子器も綺麗に見えてますね。


■ 2021年06月26日 撮影

シスチジアは紡錘形で、1つ上の写真の左に見えるもののように頂部伸長が確認できます。 この形状もワカフサタケ属菌っぽいんですよね。あとアシナガワカフサタケの記述とも近い気がします。


■ 2021年06月26日 撮影

担子器は4胞子性ですね。凄く分かりやすい角度で撮れました。 左の担子器は小柄の先端に胞子がほぼ出来上がっていますが、右の担子器はまだ未熟です。 おかげで立体感が良く分かりますね。


■ 2021年06月27日 撮影

0時を過ぎちゃったのでこの1枚だけ日付が進んじゃってますが、胞子を油浸対物レンズで観察してみました。 胞子は楕円形〜卵形で胞子は褐色系ですが、本属菌らしく少し赤みがありますね。 また胞子表面は細かいいぼに覆われてます。

ここまで観察した中ではアシナガワカフサタケに非常に近いと思いますが、 そう考えると赤字で食毒不明としておいたほうが良いでしょう。 ワカフサタケ属菌は猛毒種の印象は無いですが、それなりの毒を持っている種が多いですし。 また出会えるかは分かりませんが、今度はもう少し情報を得たいですね。

■ 2021年06月26日 撮影

成菌のすぐ近くに幼菌があったのでスルーしようかと思いましたが一応撮影しておきました。 発見当時はピンと来ませんでしたが、幼菌を見ると確かにフウセンタケ科ですね。
■図鑑TOPへ戻る