■Hymenogaster sp. (ヒメノガステル属 No.001)


■ 2018年12月22日 撮影

前年に同じ場所で見ていました。本当の狙いは和製黒トリュフだったんですが、本種もメイン張ってました。 シイやカシなどの広葉樹下のリタースレスレに発生する地下生菌です。 属名自体に和名が存在せず、また類似種が多いことから種小名もほぼ「sp.」のままです。 この年は前年を大きく上回る素晴らしい発生量を記録しました。

こう見えてワカフサタケ属に近縁なハラタケ目のキノコなんですよ? 不思議と公園など人の手の入った場所(撹乱地)にばかり発生すると言う特徴があります。 今回発見した場所も町中に有るさほど大きくないごく普通の公園のカシの樹下でした。


■ 2018年12月22日 撮影

子実体は球形〜塊状で綺麗な球形にはあまりならないようです。 色は幼菌時白色ですが、成熟すると褐色を帯びます。 この子実体は3cmの大型のもので、大きいものだと成長に負けて表皮が裂けていることが多いですね。


■ 2018年12月22日 撮影

切断してみると内部は赤褐色を帯び、最終的には褐色になります。 確かにワカフサタケ属菌っぽい色合い、個人的にはアカヒダワカフサタケを連想しました。 下方に見える白い部分は無性基部と呼ばれるハラタケ目らしい柄の名残です。


■ 2018年12月23日 撮影

断面を黒バック撮影してみました。表皮は薄く、内部のグレバは迷路状に孔の開いた小腔室で満たされています。 これはひだが折り畳まれて押し潰されてスポンジ状に進化した状態です。ひだだと思って下さい。


■ 2018年12月23日 撮影

グレバをマクロ撮影してみました。 ひだが進化したものですので、当然表面に担子器が並んでおり、胞子が形成されます。 地下生菌の胞子は大型のものが多く、本種もこのように確認することができます。 表面に見える褐色の粒が担子胞子です。


■ 2018年12月30日 撮影

顕微鏡で小腔室を切り出して観察してみました。日付が異なるのは保管していたものを再度観察したためです。 表面には担子器が並んでおり、ちゃんと担子菌類なんだなぁと実感できます。 左方の担子器に胞子が2つ繋がっていることから2胞子性だと分かります。


■ 2018年12月23日 撮影

担子胞子はこんな感じです。流石に油浸対物レンズ使わないとダメか。


■ 2018年12月23日 撮影

油浸対物レンズを用いて高倍率で観察してみました。 胞子はレモン形〜紡錘形で茶褐色。表面には細かないぼがあります。 厚みがあるように見えるのは胞子表面に胞子外壁(膜)が存在しているためです。 また両端には乳頭状突起が存在します。 細いほうの突起は恐らく担子器に繋がっていたへその緒のような名残りのようです。

まだ分類すらままならない謎多きキノコ、当然ながら食毒不明です。 地下生菌は動物に食べさせて胞子を運ぶ種が多く、もしかしたら無毒かも知れません。 ただ本種を含め本属菌は油臭さと青臭さを足して2で割らないような不快臭がするのでお察しですけどね。

■ 2018年12月22日 撮影

以前発生していた近辺を熊手でガサガサすると、出るわ出るわポロポロ転がり出てきます。 ただほとんどが1cm有るか無いかと言ったサイズで、2cmクラスは滅多に見付かりません。 比較的リターの深い場所の子実体は大型化するような気がします。
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