■Hymenogaster sp. (ヒメノガステル属 No.006)


■ 2023年10月28日 撮影

発見当初は断面が赤いためベニダンゴの仲間ではないかと疑われました。 しかし帰宅後に顕微鏡観察してみるとメチャクチャ見覚えのある胞子が見え、 ヒメノガステル属菌であることが判明しました。 しかし写真を整理した後に今まで見て来た本属菌と比較検討してみたのですが、 その結果初見であることが判明した次第。ブナ科広葉樹下に発生するようです。 確かにワカフサタケ属に近縁なのでグレバが赤いのは予想すべきだったか・・・。

ヒメノガステル属菌は外見は似ているものの、 断面の構造や胞子等の顕微鏡レベルでの特徴がワリと分かりやすくに異なるため、 見比べると別種だと気付けるものが結構居るのがありがたいですね。 他の地下生菌ももう少し見習って欲しいものです。 崩れた斜面に出ていたので、やっぱり更新が良く起きる撹乱地を好むみたいですね。


■ 2023年10月28日 撮影

子実体は多分最初は白色なんでしょうが、成熟した今では黄土色で表面は平滑。 今まで見て来た種は成熟してもかなり白さを保っていたので、 今回見たものは一番色付いているように見えます。傷んでるのかと思いましたもん。


■ 2023年10月28日 撮影

断面を見るために切断してみると、そのグレバの赤さにビックリ。 赤さだけなら「ヒメノガステル属 No.003」に匹敵するかも知れません。 この赤さのために最初はイッポンシメジ属から進化したベニダンゴの仲間を想像したんですよね。


■ 2023年10月28日 撮影

帰宅後に表皮と断面を黒バック撮影してみました。やっぱり表皮が平滑で黄色みが強いですね。 断面を見ると表皮からも色が透けて見えるほど表皮は薄く、内部は赤褐色で迷路状のグレバです。 また基部には傘があるキノコから進化した名残でもある無性基部が確認できます。


■ 2023年10月28日 撮影

グレバを拡大してみました。小腔室と言う不規則な穴の集合体で出来たスポンジ状です。 ここがキノコのひだにあたる部分で、表面に胞子が形成されます。 ワカフサタケ属菌は胞子が赤っぽいので、その性質が受け継がれていますね。


■ 2023年10月28日 撮影

グレバをカミソリで薄く切って切片を作成し、低倍率で顕微鏡観察してみました。 こうして見ると小腔室の内壁に胞子を形成する子実層面が形成されているのが良く分かりますね。 肉眼であれだけ赤く見えていたのも大量の胞子が表面にあったからなんですね。


■ 2023年10月28日 撮影

少し拡大してみると担子器とシスチジアが確認できました。


■ 2023年10月28日 撮影

油浸対物レンズで高倍率撮影してみました。担子器は2胞子性、シスチジアは棒状です。 本属菌としては2胞子性は一般的、シスチジアはあまり見られない種が多いのでやや異質かな? シスチジアについては過去にもっと多く見られる種がありましたけどね。


■ 2023年10月28日 撮影

※オンマウスで変化します

担子胞子は本属菌共通の形状でもあるレモン形で茶褐色。両端に乳頭状突起を持つのも普通です。 形状的には一般的なヒメノガステル属菌って感じなんですが、 胞子外膜が胞子本体にピタッと貼り付いているためか胞子の形状が整っている気がします。 また別種と判断した最大の理由は、胞子表面のいぼが微細でくっきりしていることでしょうか。 本種の胞子表面のいぼはもっと「もょっ」としている印象なので結構雰囲気違いましたね。

不明種なので当然食毒不明なんですが、土臭くて正直食えたもんじゃないと思います。ハイ。 そもそもワカフサタケ属菌は毒キノコが多いので、その辺も含めて食べるべきじゃないでしょう。
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