■Jimgerdemannia sp. (ジムゲルデマンニア属 No.001)

■ 2018年12月08日 撮影

地元の自然公園に地下生菌を探しに行ったのですが、成果は今ひとつ。 辛うじて見付けたのは小さな小さな菌核のようなもの。これがまさかの大発見でした。 広葉樹林地上で発見。外生菌根性を持つそうですが、様々な林内地上に出るそうです。 接合菌類の1種であり、以前はアツギケカビ属とされていたのですが現在は同科別属に。 Mycena属に感染するタケハリカビに近縁ですが、菌糸を纏い地下生菌化しているので「厚着毛黴」。 個人的には胞子の周囲を菌糸が纏うので・・・だと思っていました。

属名はグロムスやアツギケカビの研究者「Jim Gerdemann」氏に由来します。 以前はアツギケカビ属(Enodogone)とされていましたが、胞子の周囲の菌糸や接合部の形状などから別属となっています。 和名の属名はEndogoneに引き継がれているため、現状はこう呼ぶしかありませんね。


■ 2018年12月08日 撮影

子実体は非常に小型で大きくても5mm程度の潰れた球形。表面は白色で毛羽立って見えます。 一見するとただのカビた腐朽材の塊にしか見えません。


■ 2018年12月08日 撮影

切断してみるとまず子実体の硬さに驚きました。 そして断面を見ても頭の中は「?」だらけ。断面に小腔室も大理石模様もありません。 ルーペで見てもサッパリ。この段階では全く名前が浮かびませんでした。


■ 2018年12月08日 撮影

帰宅後に黒バック撮影。切れ味の悪いカッターナイフで切ったので断面がボロボロ。 これでは良く分からないのでカミソリで再度切断して断面を観察することにしました。


■ 2018年12月08日 撮影

すると断面に小さな粒上のものが観察できました。 これは小腔室・・・?しかしそれにして一つ一つが小さすぎるような気がします。 しかも基部の色が淡い部分にも同様の構造が見られるのはちょっと違和感があります。


■ 2018年12月08日 撮影

その謎は顕微鏡観察で溶けました。コレ何と胞子だったんです。 本種の胞子はアホみたいに大きいため、ルーペや高倍率のマクロレンズで普通に写ってしまうのです。 ちなみにこの段階では胞子の大きさだけでグロムス属菌だと勘違いしていました。


■ 2018年12月08日 撮影

一度はグロムスとしてtwitterに投稿しましたが、この写真を見ていて違和感に気付きました。 グロムスにしては胞子が厚壁すぎる。そう思って他の写真を見直してハッとしました。


■ 2018年12月08日 撮影

胞子の周囲を菌糸が覆う特徴、そして黄色い細胞壁、これは明らかにアツギケカビ科の特徴! しかしすでに知られている種とは胞子を包む菌糸のマントルの外見や胞子のサイズが異なります。 K.Y氏にお聞きしたところ、氏が見付けている未記載種に似ているとのことで標本は提供となりました。


■ 2018年12月08日 撮影

コチラは油浸対物レンズ・・・ではなくその1つ前の倍率で撮影した接合胞子です。 本種は2本の菌糸が接合して胞子が形成される接合菌類と呼ばれる一群。 我々が親しみのあるキノコ的な菌類とはやや縁遠い菌類です。 胞子は類球形で85×75μmとにかく大型。油浸対物レンズだと収まり切りません。


■ 2018年12月08日 撮影

同じ胞子を深度合成したもの。厚壁でややシワが寄っています。 既知の「J. flammicorona」や「J. lactiflua」と比べると胞子サイズが小さいです。 外見的にも異なるように思われるので、恐らく別種と思われます。

本属菌自体は食毒不明ですが、ケカビ門に属するような種なので食不適でしょう。 まぁ正しくカビみたいなものですしね。 ただ結構なレア種みたいなので発見した場合は然るべき機関に送るべきかもです。

■ 2018年12月08日 撮影

すぐ近くで見付けた別個体。さらに小さく3mmほどしかありません。 コチラもかなり扁平で地面に貼り付くような形状をしています。


■ 2018年12月08日 撮影

拡大すると表皮が薄いためか胞子が浮き出して見えていました。 子嚢殻に見えるのでこの時はヒポクレアかと疑ったくらいです。 でも地面に生えているワケないですよね。
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