■Lachnocladium sp. (ラクノクラジウム属 No.001)


■ 2017年08月05日 撮影

比較的標高の高い亜高山帯の広葉樹林で見慣れないホウキタケ型のキノコを発見。 最初はフサタケ属かカレエダタケ属かな?と思い、特徴的だから多分同定できるだろうと踏んでいました。 しかし図鑑を見てもこれだ!と言う種に行き着けずに5年の歳月が経過。 その間もずっと発生を確認していましたが、2022年になってTwitterで指摘を頂き属名が判明しました。 しかし種小名まで辿り着くことができず、不明種としての掲載に踏み切りました。

国内では本属菌自体があまり見付かっていないようで属名に和名がありません。 そのため属名をそのままラテン語読みして「ラクノクラジウム」としています。 こんな外見ですがベニタケ目に属しています。 ちなみに属名の意味はラテン語で「軟毛状の枝の」と言う意味です。


■ 2017年08月05日 撮影

初見での感想は「イボタケとフサタケの中間みたいだな」でした。 実際にそんな感じの見た目で、ずっとこの2属を疑っていたので他の属を候補に入れていませんでした。 子実体は分岐を繰り返すホウキタケ型ですが、枝の1本1本が軟質で細いため、触るとフサフサします。 子実体全体は黄褐色ですが、先端へ行くほど急激に淡黄色になります。

恐らく属的に毒性は無い・・・とは思うんですが、不明種なので食毒不明としておきます。 海外の図鑑を見てもこれだ!と言う種には出会えず。 ただ非常に華奢で小型のキノコなので、サイズ的にも食用価値はほぼ無いと言って良いでしょう。

■ 2017年08月05日 撮影

発生状況はこんな感じ。広葉樹の腐植がかなり多い場所に集中して発生しています。 発生している範囲が限定されているので菌根菌じゃないかな?と思っています。 周囲にはブナ科とカバノキ科の樹種が多いので、これらと菌根を形成している可能性があるかも?

■ 2017年08月05日 撮影

本種が美しいと感じる理由は先端の明色です。 子実体全体は地味な黄褐色なのですが、分岐の先端だけが明るい色のため形状が認識しやすいのです。 この感じ、デジャヴュを感じるなと思ったらアレですね、ハリネズミのトゲと同じ原理ですね。

■ 2022年09月10日 撮影

実はほぼ毎年出会っていましたが、正体に辿り着けると思えずずっとスルーしていました。 しかし今回は青fungi氏とのオフ会で訪れ、せっかくだから調べてみようとサンプルを採取。 帰宅後に顕微鏡観察を行った結果、様々な貴重な情報が得られました。 にしても本当に発生場所が変わらないですね。微動だにしていませんでした。


■ 2022年09月10日 撮影

子実体断面を低倍率で顕微鏡観察してみましたが、もう初っ端から「?」でした。


■ 2022年09月10日 撮影

子実層はまぁ良いとして、気になるのは子実体本隊の菌糸です。 先端が尖った強靭な菌糸が複数分岐しているです。まさに骨格菌糸ですね。 この菌糸は見た目にも厚膜で、これが子実体の強靭さと柔軟さの理由だと分かりました。 また当初疑われたフサタケ属はここまで菌糸が分岐しない点でも別属であると考えられました。


■ 2022年09月10日 撮影

担子器をフロキシンで染色して観察してみましたが・・・見づらい! 一応色々見て回った結果、3胞子性っぽいですが・・・。


■ 2022年09月10日 撮影

見やすいのはココら辺かな?4胞子性もあるかもですが、基本的に3胞子性で良さそうです。 一応ピントをずらして奥行きまで確認しましたし。 また担子胞子に繋がる小柄が長いのも特徴的でしょうか?


■ 2022年09月10日 撮影

担子胞子や若干楕円形ですがほぼ球形に近い感じ。小柄に繋がっていた部分がツンと飛び出しています。 大きな油球が1個だけ入っているものとモヤモヤしているものがありますが、これは前者がやや未成熟な胞子なだけかも。 上記の観察の結果をTwitterに投稿した際に複数のキノコクラスタの方からご指摘を頂き、属名が判明した次第です。


■ 2022年09月10日 撮影

と言うことでようやく招待に近付いた本種。とは言えあくまで不明種止まり。 これ以上はそれこそ分子系統解析とかDNAを読む必要があるのでしょうね。 もし興味がある方が居られましたらご連絡下さい。標本をお送りできると思いますので。

■ 2023年09月24日 撮影

また来ました同じ場所。本種と言うか本属菌にはマジでここでしか出会えていません。 そう考えるとやっぱ珍しいんでしょうかね?乾燥気味で少し色が薄かったです。
■図鑑TOPへ戻る