■Lactarius sp. (カラハツタケ属 No.002)


■ 2021年07月10日 撮影

地元で発見した見慣れない小さなキノコ。 シイやカシを主体とした照葉樹林の斜面に無数に発生していました。 最初はホウライタケとかヌメリガサとかそこら辺だと思ったんですが、近付いてビックリ。 いかにも乳液が出そうな外見なんですよね。 仮称も含めて色々調べてみましたが、特徴が合致する種に辿り着けませんでした。

小型のチチタケ系と言えばニセヒメチチタケが有名ですが、それよりも遥かに小型です。 文献的には仮称ですがトガリヒメチチタケが一番近い気がするんですが、 この種は亜高山帯針葉樹林のキノコで、低地の照葉樹林に出るとは考えにくいです。 同じく仮称のヒナチチタケも疑いましたが、諸々特徴が合うとは言えずお手上げです。情報求む!


■ 2021年07月10日 撮影

子実体の見た目は小さいながらも完璧にベニタケ系。子実体は全体的に肉色で湿時粘性があります。 最大の特徴はその大きさで、大きいものでも直径1cm未満傘の中央が突出するので、ニセヒメチチタケとかに近縁なんだと思います。 小型で乳液を出すベニタケ科菌は確かにありますが、明確にベニタケ型をしているのは新鮮です。


■ 2021年07月10日 撮影

見上げてみました。ひだが垂生気味ですね。 多分チチタケ属ではなくカラハツタケ属だと思ってるんですが・・・若干自信無いです。


■ 2021年07月10日 撮影

裏返してみました。小さいので引っこ抜くのも一苦労ですよ。 柄は傘と同色で小型過ぎるためか少し透明感があります。 ひだも淡い肉色で密ですが、傘が小さいため相対的に疎に見えてしまいます。 乳液は半透明で小型のワリに量は多いです。 この少し透けている感じはニオイワチチタケの乳液に似ていますね。


■ 2021年07月11日 撮影

これはしっかり調べる必要があると感じ、採取して帰宅後に顕微鏡観察しました。 珍しく綺麗な切片が作れたので撮影。まずはひだの子実層です。


■ 2021年07月11日 撮影

油浸対物レンズで子実層を観察すると担子器が確認できました。 写真で見えるのは3胞子性ですが、属的には2〜4が混在するのでしょう。


■ 2021年07月11日 撮影

※オンマウスで変化します

担子胞子を観察してみました。オンマウスで深度合成写真に切り替わります。 胞子は若干楕円形が入っていますが、基本は球形で表面は棘状小突起に覆われます。 いかにもベニタケ科菌の胞子だなぁって感じですね。 となるとやっぱりあの性質も確認しなくては・・・。


■ 2021年07月11日 撮影

と言うことでメルツァー試薬によるアミロイド反応を確認してみました。 見事に表面の突起のみが濃青色に染まりました。

食毒は不明ですが、そもそも小型すぎて食用価値無しでしょう。 猛毒ではないような気はするので、あえて赤字にはしませんでした。 属的にも一応有毒である可能性は捨てきれないので、色んな意味で食べようと思わないように! 味を確認するのを忘れたので、次回発見時には思い切って噛んでみたいと思います。

■ 2021年07月10日 撮影

幼菌はかなり色が濃くて煉瓦色。少しシワが寄っているように見えます。 この段階から傘の中央が突出する前兆が見られますね。 この頃はあの極小ベニタケのリュウコクヒナベニタケに匹敵する小ささです。

■ 2021年07月10日 撮影

最初に見付けた子実体は地面ではなく木によじ登って幹に生えていました。 表面のコケや土を伝って上を目指したようです。 子実体が小さい分、少しでも胞子を飛ばしやすい場所に発生するようで、 このような現象は他のベニタケ科菌でもたまーに見かけますね。


■ 2021年07月10日 撮影

傘中央部の突出がとても顕著な子実体ですね。 小型の乳液を出すベニタケ科菌の何種類かに共通して見られる特徴です。 このツンと飛び出している感じが実に愛らしい。


■ 2021年07月10日 撮影

傷付けて乳液を確認して気付きました。 半透明の乳液と言えばニオイワチチタケですが、あの乳液は半透明でも透明感が均一です。 ですが本種の乳液は白い乳液と透明な乳液が混ざる感じで透明感にムラがあるんですよね。 別の乳液写真でも同じように乳液滴内でモヤモヤしているのが分かります。 傷付ける部位によって乳液の透明度が異なるのかも知れません。
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