■Metarhizium sp. (メタリジウム属 No.001)


■ 2018年07月15日 撮影

ガガンボさん主催の岡山冬虫夏草観察オフにて出会えた・・・いや出会ってしまいました。 通称「カンピレーモドキ」。 間違いなく地上生冬虫夏草採集難易度最高峰。恐ろしく鬼畜な地下部を持つことで有名です。 メタリジウム属らしい淡い緑色の子実体が特徴です。 西表島や奄美大島と言った南方の離島で多く見られる種ですが、岡山県意外にも愛知県でも見付かっています。

実はカンピレーの滝付近で発見されたカンピレームシタケだと思っていた冬虫夏草です。 と言うか「冬虫夏草生体図鑑」にもカンピレームシタケの名前で掲載されているのは本種のほうなんです。 ですが本来のカンピレームシタケは甲虫の幼虫から発生し、地下部も短いのです。 そのため本種は別種と考えられます。


■ 2018年07月15日 撮影

子実体は棍棒状で基部は細まり、全体的に灰緑色。先端部は未熟で白っぽくなっています。 この段階ですでに色以外の本属菌らしい特徴が見えていますが、それは後述。 これはアメジストの詐欺師氏が発見したものなので掘り採りをお任せした子実体です。

ちなみに氏はギロチンしました。これも後述しますね。

発見例自体が極めて少なく、食えるかどうかとか考える気にもなれない激レア冬虫夏草です。 一応食毒不明ではありますが、もし見付けようものなら是非サンプルを解析可能な機関へ送って下さい。

■ 2018年07月15日 撮影

コチラは自分が上記子実体の近くで便乗発見したもの。 一応掘り採りの権利は得ましたが、全く嬉しくありませんでした。


■ 2018年07月15日 撮影

その理由はコチラ。ギロチンしました。と言うかギロチンするしか有りませんでした

本種の掘り採り難易度が高い理由、それは地下部が長く細いためです。 そんなのツブノセミタケと同じじゃんとお思いの方、それは大間違いです。 本種の地下部は長さが最低でも50cm、細さは髪の毛ほどしか有りません。 その難易度は特級掘り師ですら2日がかり、それでもギロチンするほどなのです。 眼の前に大穴を掘り、少しずつ削って行くのがセオリーですが、それは切れても痕跡を追えるからです。 歴史上ギロチンせずに掘り抜いたのはY氏1人しか自分は知りません。

それを数時間の探索時間中で掘るのは不可能と判断、宿主が浅いことを祈り一気にスコップで掘りました。 結果は惨敗。その後20cm近く掘っても宿主は出てきませんでした。 しかし手前の斜面にハチが良く出入りしており、以前から言われているように宿主は土繭中のカリバチと考えられます。


■ 2018年07月17日 撮影

帰宅後にクリーニングしたものを黒バック撮影してみました。 宿主に到達できなかったのは残念ですが、あの時間でこれならば十分な成果だと思います。 ちなみに左の結実部の地上部の長さが2cmなので、画面上で縮小してみれば地下部の凶悪な細さが良く分かります。


■ 2018年07月17日 撮影

子実体は灰緑色で柄と結実部の境界はハッキリしません。


■ 2018年07月17日 撮影

結実部を拡大してみるとメタリジウムらしい斜埋生型の子嚢殻が確認できます。 子嚢殻の先端部は突出しており、斜め上方向に形成される独特なフォルムです。 本属菌はこの特徴のために立ち昇るような子実体に見えるんですよね。


■ 2018年07月17日 撮影

メルツァー試薬で染めた子嚢。長さは約310μmで図鑑のMAXサイズとほぼ一致。


■ 2018年07月17日 撮影

肥厚部の確認のために油浸対物レンズで観察してみました。 同属菌のハヤカワセミタケとは異なり、本種は肥厚部が比較的薄いのが特徴です。 同じく南方の離島で見付かるイリオモテミドリムシタケがこんな感じの先端してますね。


■ 2018年07月17日 撮影

子嚢胞子は糸状で約280μm。二次胞子に分裂するとのことでしたが隔壁が見当たりません。 そのため少し時間を置いてから再度観察してみました。


■ 2018年07月17日 撮影

何度か観察していると無事二次胞子への分裂が確認できました。 長いもので約50μm、短いもので約15μmとバラつきは有りますが図鑑とほぼ同じ結果となりました。 これで家庭環境で見られる宿主以外の情報は全て見れたかな? そうなるとやはり宿主への到達が次の目標となりそうです。挑める日は来るのでしょうか。
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