■Morchella sp. (アミガサタケ属 No.001)

■ 2014年04月05日 撮影

アミガサ大収穫の帰り、少し寄り道した山道で車の中からでも即気付きましたよ。 黒いしトガリアミガサタケだと思い込んでいましたが、ふと感じる違和感。 抜いた時の柄の色合いで気付きました。「トガリ」ではない・・・何だコイツ。 その後はアシボソアミガサタケとしてしばらく掲載を続けていました。 この時は産業廃棄物の不法投棄場所に出ると言うことの重要さを見落としていました。

ずっと正体不明でしたが、2020年に入って焼け跡に発生するアミガサタケの存在を知りました。 海外ではかなり有名で、山火事の後にキノコ狩人が押し寄せるなんてこともあるそうです。 この場所は焼け焦げた雑誌やプラ、ゴムなどが不法投棄されている場所です。 その周囲には発生しないので、本種が焼け跡を好むアミガサの一種である可能性が出て来ました。

そして2021年に採取した標本をDNA解析して頂いた結果、2022年に新種であることが確定しました。 新種と言っても今までアミガサタケの1系統とされていたものの中に紛れていた的な立ち位置です。 我が国と中国に分布が確認されており、中国では栽培に成功している種なのだそうです。 現在はあくまでも新種かつ不明種と言う状態なので、今後も標本提供できればと思います。


■ 2014年04月05日 撮影

トガリの新発生地だと浮かれてましたが、傘の雰囲気の違いに気付きました。 頭部が暗黄褐色なのは同じ、でも妙に透明感があるような気が・・・。 鮮度のせいかも知れませんがブラック・モレルのあの黒さが大人しい? そしてしばらく探しまわって幼菌を見た時に違和感は確信に変わりました。

実際に私が食べましたから安心して言えますが極めて美味な食菌ですよ。 不明種ではありますが(私が)相当食べたので、他のアミガサ系と同じようです。 生の状態だと胃腸系の中毒を起こすので加熱はしっかり、茹でこぼせば完璧。 様々な料理に合いますがやはり洋風の調理法に合いますね。シチュー最高! イエローと比べても風味が良く、子実体も大型化するので食用価値高し。

■ 2014年04月05日 撮影

決定的だったのがこの幼菌ですね。明らかに頭部と柄の色が変です。 いやトガリも幼菌の時は頭部は少し淡いですが、それより柄が変です。 トガリの柄は幼菌時でも赤みを帯びボサボサで、何よりかなり太いです。 しかしこの子実体の柄はあまりに白くてつるつるで細いんですよね。 ただ柄はつるつるとは言え表面に粉状の白い鱗片がビッシリ付いてます。 この後別の場所で採ったトガリと並べ、その違いに愕然としましたね。

■ 2014年04月05日 撮影

この周辺では一番大きい子実体。この周囲にかなりの量が出ていました。 巨大な頭部のワリに折れてしまいそうなほど細い柄。こりゃ確かに足細です。 ただアシボソアミガサタケ自体、定義があいまいに感じたので不明種扱い。

■ 2014年04月12日 撮影

なぜか木に登ってました。腐朽した広葉樹材を駆け上がって生えています。

■ 2014年04月12日 撮影

地面から生えている子実体は綺麗でしたが、重いのか倒れていました。 やはり頭部の大きさのワリに柄、特に頭部の付け根が細いみたいです。 こうして見ると柄の白さが際立ちます。なぜ今まで気付かなかったのか。

■ 2015年04月04日 撮影

昨年発見した謎のミガサタケの聖地。今年もその前兆が現れ始めました。 周囲には相当数の幼菌が確認できます。これはモリーユには困らないかな?


■ 2015年04月04日 撮影

昨年撮ろうと思って忘れていた傘と柄の境界。これ実は結構重要です。 本種は柄が細いとは言えトガリと同様に柄に対して隔生するのが特徴です。 ただ同じ隔生でも柄が上方で太くなるトガリとは随分と印象が異なりますね。

■ 2015年04月12日 撮影

ナゾのアミガサタケの群生地の端に妙に大きなブラックモレルを発見。


■ 2015年04月12日 撮影

引っこ抜いてみました。普通に見えますが、これ高さが25cmもあります。 傘は卵状円錐形で柄に対して隔生し、暗褐色な点もトガリと共通です。 当初はこれをオオトガリアミガサタケとして掲載していましたが・・・。

■ 2015年04月12日 撮影

見付けた時はあまりの驚きで山道で大絶叫しました。何だこのバケモノは! トガリが大きくなっただけ?とんでもない。そんな予想は吹き飛びましたよ。


■ 2015年04月12日 撮影

網目の比率でどれだけ大きいかは何となくお分かりになるかと思います。 成長を邪魔されて折れ曲がっていますが、伸ばせば30cmは軽く行くかな? これでオオトガリなんだと確信しましたが、その後その考えを改めることに。 だって謎のアミガサタケとの中間的な子実体がバンバン出ちゃいますから。

もしかしてこの辺の種は混同されてるだけで同一種なんじゃ・・・?

■ 2016年04月09日 撮影

今年も出ましたナゾアミパラダイス!ここの発生量は尋常じゃないですね。 ただ今年は春も冬虫夏草に重点を置いたためあまり探さなかったですね。 少量だけ採取して家で食べるだけで終わりました。また来年が楽しみです。

■ 2016年04月09日 撮影

この明らかな違和感。黒いとんがり帽子は走行中の車内からも分かります。

■ 2017年04月01日 撮影

昨年とほぼ同じ時期に発生です。やはりブラックとイエローの中間的発生時期。 先週も訪れた際は見付かりませんでしたが、どうも枯れ草に埋もれていた模様。 こうして見るとやはり縦方向の脈の発達が悪いですね。黒いイエローって感じ。

■ 2017年04月01日 撮影

やはりまだ幼菌ですね。表面が毛羽立っているので傘が白っぽく見えます。

■ 2017年04月01日 撮影

あまりにも可愛かったので撮影した小さな小さな幼菌。花びらがアクセント。 でもこれ実はウメの花びらです。ここにはサクラもイチョウも無いんですよね。

■ 2017年04月08日 撮影

一週間で状況は一変。幼菌しか見当たらなかったナゾアミ発生地は大賑わい。 周囲に明らかに大きくなりそうな幼菌があるわあるわ。これは期待できそう。 アミガサ系は当たり年とそうでない年がある気がしますが、今年は前者かな?

■ 2017年04月15日 撮影

実況中に発見した超大型の子実体。実況動画では手と比較していたヤツです。 ちなみに採取して食べました。やはり良い風味で洋風料理に良く合います。

■ 2017年04月15日 撮影

今年は本種の当たり年だったようで、例年よりも数も多くサイズも立派です。 実況でも私の手と比較したりしましたが、その大きさは尋常ではありません。 ただ残念ながらすぐ左が産廃だらけで採取は・・・流石にできませんでしたね。


■ 2017年04月15日 撮影

ハッキリ言ってバケモノ級の大きさ。網目の数からもサイズが予想できるかと。

■ 2017年04月22日 撮影

そろそろシーズンオフです。みずみずしかった子実体もこの通りカサカサに。 最終的には平均してこれくらいの大きさにまで成長しました。デカいです。 高さ20cmは余裕で超えてきます。ただここまで老成するともうボソボソ。

■ 2018年04月15日 撮影

実は少し前から観察していたんですが、全然出ていなくて絶望していました。 フィールドに手入れが入り周囲の笹やぶが伐採されて丸裸になっていました。 そのため踏み荒らしや湿度低下などの環境への影響が大きかったようです。 探しに探して辛うじて子実体を1つだけ発見。今年は流石に採れないですね・・・。


■ 2018年04月15日 撮影

1つしか無かったですが状態は良好。食べたかった!腹いせにどアップです。

■ 2018年04月21日 撮影

もう出ないと思っていたら・・・バケモノを見落としていた。凄まじいサイズ。

■ 2018年04月21日 撮影

1周間前には気付かなかった子実体が沢山あったらしく、そこそこ出ていました。 どれも発見段階では遅かったし、採るとヤバそうなので今年の採取はおあずけ。 にしてもキミ、樹上に出るのは何かアミガサ的に似合わないと思うんですけど。

■ 2019年04月07日 撮影

この年は明らかに不作でしたね。と言うかもう出ないかと思いました。 この幼菌を見た時は発見の嬉しさよりも「安堵」の方が大きかったです。

■ 2019年04月27日 撮影

7日の時点である程度の数の幼菌は見ていましたが、20日過ぎたら普通に出ていました。 以前来た時はまだ幼菌で気付かなかっただけなのかも知れません。 個人的には後ろに見えている紫色のチャワンタケが気になるんですけどね。 一般的なフジイロチャワンタケモドキにしては紫色が鮮やかすぎるような。 アミガサ自身も結構立派な子実体なんですけどね。

■ 2019年04月27日 撮影

このフィールドの醍醐味は何と言っても巨大株の群生です。 大型化する種なので群れると迫力が段違いですね。 美味しいんですけど産廃の真横に出るので食用採取は断念。 でも誰も採らないからこんなに立派な群生が見られるのでしょうね。

■ 2020年03月20日 撮影

2020年になって本属菌の中に焼け跡を好む種が存在することを知りました。 確かにこの周囲には焼け焦げた産廃が沢山不法投棄されています。 そこで今まで行って来なかったアミガサタケ属菌の顕微鏡観察に挑みました。


■ 2020年03月20日 撮影

茂っていた周囲のササ藪が切り開かれてしまったので、温度湿度の変化のためか発生は減りました。 しかしある程度の個体数は確認できたので一安心。ですがどれも若い子実体なので少し待つことに。

■ 2020年03月20日 撮影

1週間が経ち、もうそろそろ良いかなと言うことで採取に向かいました。 良い感じに熟してくれたので1株採取しました。 無印やトガリでも経験済ですが、本属菌は古くならないと胞子が見られないのです。 腐る寸前くらいを採取してもちょうど良かったりします。


■ 2020年03月28日 撮影

網目を拡大してみました。毛羽立って見えるのは子嚢かな? 同じブラックモレルのトガリアミガサタケのような黒い網目の縁取りは見られません。 またトガリのような縦の網目の発達もあまり見られないようです。


■ 2020年03月29日 撮影

古めの子実体を採取したつもりが、まさかの未熟! 食べるのをためらう程度には古いのを選んだつもりなんですが・・・なぜじゃ! 腹いせに側糸だけ顕微鏡観察しました。やはり隔壁を持ち、基部付近で分岐するようです。

■ 2020年04月04日 撮影

はい、まさかの4月突入です。こんなに時間かかるとは思いませんでした。 3月20日の段階で確認していた子実体は全て老成して朽ち果て、顕微鏡観察はできません。 そこで見落としていた子実体を探し、時期的に成熟していると予想し持ち帰りました。 後ろに産業廃棄物が写っていますね。これヤラセじゃなくてマジです。


■ 2020年04月04日 撮影

やったー!成熟してる!胞子写ってる!顕微鏡観察してガッツポーズしましたよ。 これでやっと調べられます。まずは断面全体をトガリアミガサタケのそれと比較してみました。 すると子実層は似ているものの、その直下の組織の厚みが全く異なることが判明。 色も全体的に赤みが強いように見えます。


■ 2020年04月04日 撮影

倍率を上げると確かに子嚢胞子が写っていました。隔壁があるのは側糸です。


■ 2020年04月04日 撮影

子嚢胞子を油浸対物レンズで観察してみました。ああ、もう全然違いますね。 楕円形で内包物が全体的に散らばっています。トガリにあった両端の付着物は見当たりません。 長さは16〜19μmで、トガリに比べると明らかに長細いです。 何よりも長楕円形と言うのはイエローモレルの子嚢胞子の形状に近いです。


■ 2020年04月04日 撮影

メルツァー試薬で染めてみると通常状態より子嚢の突出が確認しやすいです。


■ 2020年04月04日 撮影

この辺はまだ未熟なので子嚢胞子が見当たりませんが、子嚢が非アミロイドだと言うのは分かります。 これである程度の非肉眼的な特徴は確認することができました。 念のため残ったサンプルは追培養目的で保管していたのですが、それが功を奏しました。


■ 2020年04月07日 撮影

ここでtwitterにて耳寄りな情報を教えて頂きました。それはドライマウント。 そのまんま、水封せずに直接カバーガラスを被せて観察する方法です。 実はアミガサタケ属の胞子の表面には水封では観察できない立体構造が存在します。 これが判別に使えるとのことなので、そりゃやるしか無いでしょ!


■ 2020年04月07日 撮影

ドライマウントなんて知らなかったなぁ・・・こんな光景が見えるとは。 水封せずに油浸対物レンズで観察すると子嚢胞子表面に縦じわが走っていることが分かりました。

■ 2021年03月27日 撮影

実は2021年に採取したものを研究機関にお送りし、DNA解析を行って頂きました。 その結果が2022年に結果が判明し、日本と中国に分布し、中国で栽培されている種とほぼ100%一致したのです。 一致率を見るに同種と判断して良いと思われます。つまり本種は新種であることが確定しました。 やったー!来年春にはまた出ると思うので、その際は標本提供したいと思います。

■ 2021年03月27日 撮影

基本的にはトガリアミガサタケに似る本種ですが、たまにこんな感じで頭部が丸い子実体があります。 かなり印象が変わるので見るとビックリしますね。

■ 2021年03月27日 撮影

私が「産廃アミガサ」と呼んでいる理由がコレ、マジで産廃の周辺に集中しているのです。 まだここは紙類の上なので良いんですが、廃タイヤや焦げたプラスチックの周辺は流石に採る気になれません。 ちなみにモザイクがかかっている理由は地元の社名が載っているためです。 こんな所に不法投棄すんじゃねぇ!と思いつつ、この環境が適していると出なくなるから複雑な心境・・・。

■ 2021年03月27日 撮影

一時期アシボソアミガサタケとして掲載していただけあって柄が細いです。 正確には柄の上部が細いですね。大型個体になると逆に太くなるんですが。 あと柄が凄く白いので頭部とのコントラストも魅力的です。

■ 2021年03月27日 撮影

かなり大きな子実体も出ていました。網目の密度からも大きいことが推測できますね。 本種が新種だと判明してから、凄く愛着が湧いて来ました。食べるのも勿体無いレベル。 しっかりと学名が決定し、その名でこのサイトに載せられる日を静かに待ちます。

■ 2021年04月03日 撮影

年度初めでバタバタ、休日も潰れかねないタイミングでしたが、本種に出会う時間は意地でも作る! 先週の段階で発生は確認していたので、どれだけ育ったかを確認に行きました。うん、良い感じだ。

■ 2021年04月03日 撮影

今回は食べられそうな場所に出ている子実体が多かったので数本頂き。 美味しく頂かせて頂きましたよー。やっぱりアミガサは美味しいですね。 これだけボリュームがあると食べ甲斐があると言いますか。

■ 2021年04月03日 撮影

何でわざわざ「食べられそうな場所」と言ったかと言うと、普通にこんな場所に出てるからです。 廃タイヤから顔を覗かせていますが、普通に周囲も焦げたプラスチックまみれです。 何でわざわざこんな有害物質満載の場所に出る必要があるんだキミは!

■ 2021年04月03日 撮影

最初に見た時にブラックモレル系だと思ったのはやっぱりこの頭部の色ですね。 しかしよくよく観察してみると幼菌時はイエローモレル的な特徴を持っていたりと良く分かりません。 このどっち付かず感が私が魅力を感じている要因なのかも知れません。

■ 2021年04月03日 撮影

デュアルヘッドな子実体を発見。アミガサではこう言うの意外と無いですよね。 しかしこの頭部の形状を見ると、どちらかと言うとイエロー系に寄っているように思えます。 本種は基部に深いしわが寄るので、多脚の宇宙人みたいですね。
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