■Mycena sp. (クヌギタケ属 No.001)


■ 2020年12月20日 撮影

多分「冬に地下生菌を探す」と言うライフスタイルを確立しなければ出会えなかったでしょう。 年末に地下生菌を探して深い落葉を掻いていたら突如現れた謎のキノコ。 同行のすず姉氏は若干怪しんでおられましたが、顕微鏡観察の結果やっぱりMycenaでした。 広葉樹の落葉から発生する小型で華奢なクヌギタケ属菌です。 樹種は若干自信が無いですがブナ科コナラ属の落葉から出ているのは間違い無さそうです。

さほど珍しい種ではないようで、ネット上でもたま〜に発見報告を見かけます。 しかし本種は厚く積もった落葉の下に発生するため、落ち葉を退けないと発見できないんですよね。 そのためかキノコクラスタ内でもたま〜にしか見付からないのでしょう。 海外の図鑑をチェックしたりもしましたが、似た種は見当たりませんでした。


■ 2020年12月20日 撮影

傘は極めて小型で大きいものでも直径5mm程度。色は黄色で中心付近まで伸びる長い条線が見られます。 また傘が非常に小型で分かりづらいですが、良く見ると傘周囲に若干フリンジが見られます。 ただこれは傘があまりにも薄すぎてこんな感じになってるだけかも知れませんけど。


■ 2020年12月20日 撮影

裏返してみました。ひだは淡黄色で離生し、数えられるほどしか枚数が無くです。 でも、それよりも注目すべきは透明感のある黄色い柄でしょうね。 表面は平滑で蓄光イエローのようなプラスチック樹脂感があります。 基部にはクヌギタケ属菌らしく繊維状の菌糸を蓄えています。


■ 2020年12月20日 撮影

大変だったのが顕微鏡観察です。何たって傘が小さいですからね。 小さな小さなひだを指まで切る覚悟でカミソリを滑らせました。 おかげで何とか見れましたかね。


■ 2020年12月20日 撮影

まずは胞子を形成する担子器ですが、何ヶ所か見ましたが2胞子性ばかりでした。 クヌギタケ属は4胞子性が主で2胞子性が混じると言う種が多いので、これは単にワタシが見落としただけかも知れませんが。


■ 2020年12月20日 撮影

担子胞子は楕円形で本属菌だなぁと言う感じ。 サイズは大きいもので9μmほどあり、子実体は小さくても胞子サイズは属内では平均的。


■ 2020年12月20日 撮影

同行者のすず姉氏は発見時に別属菌である可能性を示唆されておりました。 しかし顕微鏡観察でコレが見えた時には本種がクヌギタケ属菌なんだなと実感できました。


■ 2020年12月20日 撮影

クヌギタケ属菌には種によって程度は異なりますがシスチジア表面に細突起が密生すると言う共通の特徴があります。 フラスコ型で先端が膨らんだトゲトゲした細胞が子実層表面に見られたら本属菌と考えて良いです。 感じ的にはド●リアさんですね。

不明種ですので当然ながら食毒不明です。 自分の知る限りでは本属菌に致命的な猛毒菌は無いと言う認識ですが、そもそも小さすぎて食不適ですね。 また見ての通り繊細なキノコで多湿なリター層から出してしまうとみるみる乾いて萎びてしまいます。 自分は良く「鑑賞向きですね〜」と宣いますが、それも急いだほうが良いでしょう。


■ 2020年12月20日 撮影

最後は帰宅後に撮影した黒バックです。本当に乾燥に弱く、撮影中にどんどん傘が白く・・・。 顕微鏡観察で目を離した短時間で萎れて再起不能になってしまいました。 リター内の湿度が無いと生育すら困難なほど儚いキノコのようです。

■ 2021年12月18日 撮影

前年と同じフィールドで再発見しましたが、ネット上でも同時期に発生報告が上がっています。 冬の寒い時期に発生するのは間違い無さそうですね。 クヌギタケ属菌らしく基部に白色菌糸がモサモサ生えている様子も這ってるお陰で観察しやすいです。
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