■Mycena sp. (クヌギタケ属 No.001)


■ 2023年06月25日 撮影

gajin氏、M氏、すず姉氏にしんや氏と私の5人で実施された地元のレッドデータブック調査。 お目当てはクサギムシタケでしたが残念ながら環境変化により残念ながら地元では絶滅してしまった模様。 しかし興味深い菌類は多数見られ、本種もその内の1つでした。 梅雨頃にフサザクラの腐朽材から発生するクヌギタケ属不明種です。今回の調査で発生材が特定されました。 和名も学名も提唱されていないため、愛好家からは愛称で呼ばれています。

最初は立派なツチアケビが車中から見えて立ち寄ったのですが、そこに本種が居たと言う流れです。 キノコ屋の間では「光らないヤコウタケ」や「目玉の親父」の愛称で呼ばれています。 その理由については後述しますが、ワリと的を射た表現だったりシます。


■ 2023年06月25日 撮影

子実体は見慣れたクヌギタケ属菌だなぁって感じの山型の傘に細い柄の愛らしい形状。 傘は粘性ありの白色なんですが、傘中央が褐色を帯びます。 これが全体的に見ると目玉のように見えるので「目玉の親父」の愛称があります。 また傘の周囲には本属菌らしく長い条線が存在します。


■ 2023年06月25日 撮影

裏側です。ひだは白色で密。柄は微粉状でこれまた白色。 柄の上方に少しひだが垂生しているように見えますが、どちらかと言うと条線のようです。 また基部に吸盤が存在しており、これがヤコウタケなどに近い証拠です。

まだ不明種扱いなので食毒不明は当然のことながら、属的には毒は無い可能性が高いでしょうね。 ただ仮に美味であったとしても小型で肉質が脆いため、どのみち食用価値は皆無でしょう。


■ 2023年06月25日 撮影

国内では温帯地域で発光性を持つヤコウタケ近縁種も見付かっており、本種もヤコウタケに近縁ではあるのですが、 残念ながら本種には発光性はありません。「光らないほうのヤコウタケ近縁種」なんて言われたりしますね。 何かちょっと不名誉な愛称な気もしますが、個人的には外見が個性的で好きですね。 写真は全体像。吸盤が分かりやすい良い被写体でした。

■ 2023年06月25日 撮影

成長し切って傘が反り返った子実体です。 雰囲気は違いますが傘の色と吸盤で本種だと分かりますね。


■ 2023年06月25日 撮影

傘は老成して反り返っており、周辺の成長に合わせて波打っています。 傘表皮には粘性のある被膜がありますが、これも古くなって白く濁っています。 それでも見た目にぬめりが分かるくらいには光沢が残っていますね。


■ 2023年06月25日 撮影

裏返してみると柄の上方だけにひだに沿うように形成された条線があるのが良く分かります。 またこうしてみると小ひだが多いようで、分岐も見られることからひだの安定感があまり無い模様。 引き抜いた時は吸盤ごと綺麗にポロッと採れました。

■ 2023年06月25日 撮影

今まで本種を何度も見てきたすず姉氏は本種の発生材を特定できていなかったそうですが、 この子実体は生きた樹の枯死部に発生していたことで樹種の特定ができました。 その前提を頭に入れた上で周囲の発生ポイントを確認し、 本種がフサザクラの材を好むことが判明しました。


■ 2023年06月25日 撮影

黄色い小型の子嚢菌類に混じって多数の幼菌が見られました。 幼菌の頃は傘表面が厚い粘液に覆われてテロッテロです。 またこの頃から傘の中央部だけが褐色を帯びており、本当に目玉みたいです。

■ 2023年06月25日 撮影

周囲にはヤマビルが多く、ヒヤヒヤしながらの撮影ではありましたが、 被写体向きの子実体が多く、選びたい放題でした。


■ 2023年06月25日 撮影

この子実体、下から見上げるように撮ると吸盤がカワイイ良い被写体になってくれました。 なおこの後大きなヤマビルが長靴を登って来たので忌避剤シュッシュして遊んでいました。 最近は毛嫌いしていたヤマビルにも少しは耐性が付いてきたでしょうか?

■ 2023年06月25日 撮影

周囲には枯れたフサザクラの倒木が多数ゴロゴロしており、その多くに発生していました。 普段なら同定できそうもないので気にせずスルーしそうな小型のキノコなのですが、 この目玉が凄い分かりやすいので助かります。

■ 2023年06月25日 撮影

最初に見付かった群生です。立派なツチアケビを取ろうと下車した際に発見。 その後周囲を探すと周囲に多数の子実体が見出されました。 すず姉氏に「目玉の親父」と言われて納得したのを覚えています。 こうなると発光性があるほうのヤコウタケ近縁種も見てみたくなりますね。
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